2021年11月20日(土)、Zoomを利用してオンラインで行われた体験授業の一企画として、MIRAIの学生が自身の研究について高校生に発表する「MIRAIトーク」が行われた。本人の希望でもあった高校生向けの授業を終えた吉武さんにインタビューをした。

ー 準備する時に気をつけたこと・大変だったことを教えてください。
 「わかりやすくかつ面白い発表にすることが基本ですが、"みんな" に対して発表するのではなく、"相手"、つまり言語学に興味のある高校生に対して発表をするということを意識しました。わかりやすくするためには、高校生たちは、英語という一つの外国語や語学用語は知っていても、言語学は知らないので、そんな彼らの視点に立って、どの辺りが難しく感じるか、スライドの説明の順番を入れ換えたほうがいいかなどに、気をつけました。面白くするためには、込み入った話をすると飽きさせてしまうため、自分がこの研究テーマを見つけた時に、何を面白く感じたのかを思い出しながら、発表の所々にその要素を付け加えていきました。例えば、留学先で撮った写真を入れたり、ブログ記事を紹介したりしました。」

ー 事前にスライドのチェックがあり、MIRAIの仲間を前に予行演習を行い、助言をしてもらいました。どうでしたか?
 「事前に練習する機会があり、とても良かった。スライドの配色を変更したり、フランス語の例を読み上げるなど、発表を分かりやすく、かつ興味をひくものにするための有益な助言が得られて、大変ありがたかった。」

ー 当日はどんな準備をして発表に臨みましたか?不安なことはありましたか?
 「多少の不安はありましたが、塾講師の経験があったこととリハーサルを行なったことによって、授業の進め方にはある程度の予想がついていました。実際にどのくらいの人数が集まるのか不安でしたが、大勢参加してくれたのでホッとしました。」

ー やってみて良かったこと・困ったことなどについて教えてください。
 「良かったことは、大学院への進学を考えている高校生から質問がきたことで、大学院生の一人である自分が発表したことにやりがいを感じた点です。困ったことは、自分が予想していなかった質問がきたのですが、残り時間があまりなかったため、中身の無い表面的な応答になってしまったのが残念でした。」

ー このような発表を行うことを、他の大学院生に勧めますか?
 「はい、勧めます。勉強が知識の習得であるのに対して、研究は知識の生産ですよね。学会で未知の真実を社会に広めることは、多くの研究者が経験することですが、学会も高校生への授業も知識を教授するという点では同じことだと思います。ただ異なるのは、高校生に対する授業では、特定の学術分野に詳しくない人が大勢いるため、専門用語をいきなり使ってはいけないことだと思います。そこでは、MIRAIゼミで考えた、異分野の人に自分の専門をどう伝えるかということが参考になりました。勉強することと教えることは違うと言われるように、経験が無い限り初めて自分で授業をすることは難しいと思います。大切なのは、授業のやり方には万人向けの方法はなく、場数を踏んで自分なりのやり方を見つけることが大切だと感じました。時には学会発表のやり方に好影響を与えることもあるでしょうし、あるいはその逆もあり得るでしょう。ですから、大学院生にとってとても有益なことだと思います。」

後日、高大連携支援室から、受講した高校生たちからのコメントをまとめたものが送られてきたが、予想を越えて好評だったことがうかがえた。

「「言語学っておもしろそうだなあ。」と思いました。」
「言語を学術的に見るということがどういうことなのか具体的にイメージ出来た。」
「あまり難しい言葉は使わず、身近な例で分かりやすく説明してくれたのがとても素晴らしいと考えました。なぜフランス語を選んだか等の質問にもスムーズに回答されていたので東京外国語大学の大学院生像というのも想像しやすかったです。」

寄せられたこれらのコメントから、吉武さんが目指していたものが達成できたことが分かる。また高校生たちに学問の魅力だけではなく、大学院での研究生活についても伝えられたことは、MIRAIのメンバーとして望ましいコミュニケーションが取れた結果だと感じた。吉武さんの今後の活躍にも大いに期待する次第である。