MIRAI3期生のホンです。6月18日に都立三田高校で実施した探究授業支援の様子についてレポートします。
今回は東京都立大からも参加があり、一緒に先行研究探しの伴走支援にあたりました。
各クラスには、1〜2人ずつ大学院生が配置され、比較的じっくりと個別のリサーチクエスチョンに向き合えたように思います。

アイデアの種が芽吹くまで

高校生たちは、7月には都立中央図書館での調査を控えているとのことでした。
それに向けた事前準備及び、実際にCiNiiやGoogle Scholarでの検索に挑戦していました。
論文検索の際の注意事項を伝えるにあたって、これまでの研究の経験を活かしてほしいとの要望を高校側からあらかじめ頂いていました。
これらのサイトで初めて先行研究を探す高校1年生たちに対して声がけをしてみると、すんなりとはいかない場面も多かったです。
特にキーワードの選定に難航している場合に、どれほど誘導してよいのかには悩みました。
アイデアの種と主体的な関心を彼らが結び付けられるよう促すには、まだまだ工夫の余地がありそうです。

事前のブリーフィングでは、AIの活用についてどのようなスタンスを取るかについても言及がありました。
現時点で高校側では積極的に許可や規制を設けたり、使い方を指導したりすることは、行なっていないそうです。
支援にあたった院生からは、問いを練り上げていく際の壁打ち相手としてAIの導入を検討するなど、AIリテラシーを養う方向を推し進めるのも寧ろ良いのでは、といった意見も出ていました。

研究というものに初めて触れる高校生たちからは、研究方法の型を体系立てて学ぶことと、実際に手を動かしてみることとのあいだに、ギャップを感じている様子が見受けられました。
探求学習のテキストには、研究手法についての解説がかなり豊富に詰まっているのですが、初見ではピンと来ないこともあるようでした。
また、実際に問いを立ててみると、彼らの想定よりすっきりとは整理できないこともあり、そういった状況にもどかしさを感じている様子も見受けられました。
参加した院生からは、テキストと実践を行ったり来たりできるような余地を残したり、ワークシートなどを活用した模擬研究に見様見真似で取り組むのもまずはいいのではないか、というアイデアが出されました。

おわりに:「わかりやすい1つの解」に抗う

今回、伴走を通して、研究を設計する上では、「その研究を通して、何を明らかにしたいか」を初期段階で見通す大切さを見直すことができました。
ただし、決してすっきりした1つの解を求めないという姿勢も、高校生の皆さんには頭に留めておいてほしいと感じています。
たとえ「なぜそうなるのか」といった純粋な疑問から出発しても、何かわかりやすい答えをはっきりと示さなくてはならないと、高校生たちはどうしても思ってしまいがちなようです。
自分の問いにどんぴしゃな先行研究がせっかく見つかっても、もう答えが出ているからわざわざ自分がもう一度探す意味がないと、そこで意欲を失うケースも見られました。
そういう学生に対しては、たとえ同じ実験を繰り返して、似たような解が出たとしても、それまでの先行研究を裏付けることになるのだよ、ということを伝えてみました。
少しアップデートをするだけでも、後続の成果になる場合もありますし、もし同じ解が得られなかったとしたら、反例として、また異なる切り口を見い出せることだってあります。

さらに、「○○に対して何が影響を及ぼしているのか」という問いを立てている場合も多く見られたのですが、何か絶対的な1つの解を求めるよりも、「ひょっとするとこの要素が影響を与える条件の1つになるかもしれない」という仮説を持って、試しに検証してみるというスタンスも取り入れてみてほしいところです。
そもそも、世界を単純明快に捉えようとしすぎなくても良いのではないか、という話を高校生たちとする中で、お互いに研究をほぐせていけたように思います。