MIRAIプログラムでは、アカデミアを離れた、現場での体験を学生たちに提供しています。
博士学生の知識や経験、スキルは、大学や研究会の外でも発揮できるし、発揮されるべきだと信じているからです。
私たちが重視する現場の1つが高等学校です。
昨年度に引き続き、今年度も都立三田高等学校の探究授業の支援に、MIRAI生が関わらせていただくことになりました。
今回は、今年度第2回目の支援の様子についてレポートします。
5月31日、MIRAI生5名といっしょに都立三田高校を訪れました。
MIRAI生は各クラスに分かれて、自分が取り組んでいる研究プロジェクトについて、とくに研究手法に焦点を当てながら紹介しました。
フィールドでの写真を見せたり、ふだん参照している史料を持ってきたり、楽器の演奏をしたり、高校生に少しでもよく伝わるようにと、それぞれ工夫をしてプレゼンテーションしてくれました。
以下に、参加したMIRAI生の感想コメントの一部を抜粋してご紹介します。
あまり関心がない分野に耳を傾け続けるのは聞く側にとっても負担だろうと思うので、そういった関心分野が別にある人たちにも興味を示してもらえるような発表構成にすればよかったかもしれない(専門的なところに踏み込み過ぎない、研究紹介:研究方法の比率を多少無理にでも1:3くらいにしてみるなど)。高校生(代表者数名)との対談方式で研究の紹介や方法の共有を行うという構成もうまく機能しそう...。
プレゼン中に、「○○って知ってますか?聞いたことある?」などと生徒さんに質問を投げかけつつ、反応を見ながら話を進めていくことで、生徒さんたちをなるべく置いてけぼりにせず研究紹介できたのはよかったと思った。自分が発表する場所の聴衆の違いに応じて自分の発表の仕方や専門性の強弱をしっかりつけていくことの重要性を実感した。
「授業や発表をすること=スライドをつくること」というマインドセットは大事なものを見失っている感があることに気づきました。聞き手の顔を見ながら、インタラクションを重視した場作りができるようになりたいので、今後も高校生相手の時はこの〔スライドを使用しない〕スタイルでいいかもと思いました。
ゲストとしての一回限りの登壇ではなく、今後も継続的に伴走支援を行っていくので、生徒に「ウケる」内容のアプローチよりも、生徒が自分の探求の中で面白さに出会うことができるきっかけやヒントとなるような要素をところどころに忍ばせるようなアプローチをあえて続けていきたい。(影響を与えすぎて似たような研究になってしまうのは避けたい)
ファシリテーションと言っておきながら、やはり一方的な発表になってしまったことは否めない。つい欲張って伝えすぎてしまい、消化不良にさせてしまったようにも感じる。発表の途中途中でこちらから質問を投げかけたり、その場で切り上げる即断ができたら良かった。
卒業生の最終レポートの評価という形で参加しました。今回添削対象となったレポートは、実験や調査の内容に未熟な部分があったものの、そこに至るまでの試行錯誤や、問いに対する真剣な姿勢は見えてきました。そのような「過程」にも価値を見出し、それをどう言語化して伝えるかが重要であるということが、私にとって大きな学びとなりました。
いずれのコメントでも、具体的なところまで踏み込んで、研究の伝え方を振り返ってくれています。
今回の経験は、MIRAI生にとって、高校生に何を伝えるべきか、そしてどう伝えればいいのかを考える良い機会となったようです。
自分たちの研究をより多くの人に届けられるよう、これからも試行錯誤を重ねていってくれたらと思います。