1.あなたが未来館で得た気づきや発見3つ

  • 学び・経験に対する敷居を失くすことの重要性
     未来館の見学及び科学コミュニケーターの方との意見交換を通じて、体験すること、挑戦すること、知ることの敷居を下げることを重要視していることが感じ取られた。とにかく触れてみる、失敗しても良いからやってみる。このような意識は、実は子どもよりも成熟した大人において忘れられがちなものである。幼い頃には当たり前に行っていた学びと失敗を、未来館は仕掛けを通じて伝えていると思った。
  • 伝え方・受け取られ方を常に問う姿勢
     感覚を伝えるエリアで、科学コミュニケーターの加藤さんが、設置されている仕掛けと感覚の関係性がはっきりしていないという改善点を挙げていたことが印象的だった。メッセージの受け手がどのように捉えるのか、人と人のコミュニケーションではよく気にすることである。このような意識を科学コミュニケーションにおいても常に意識し、コミュニケーターもまたトライ&エラーの繰り返しであることを実感した。

  • 日常の問いを大事にすること
     ノーベル賞受賞者や未来館の様々な仕掛けを通じて、日常の中で問いを持つことが重要であるというメッセージを受け取った。自ら問いを持つという考え方は、最近の高等学校の探求指導などにおけるアプローチにも共通する。ここで多くの人が難しく感じるのは、どのように問いを立てたらよいのか、という部分である。日常の素朴な疑問から出発して良い、というのは、私たち大学院生も元気づけられるメッセージだった。

2.あなたにとっての科学コミュニケーションの意味・価値(字数自由)

 近年、社会構造は急速に変化しており、既存の枠組みや伝統的なやり方では従来の通りに行うことができない事象が多くある。加えて、市民の声や意志が様々な場面において大きな役割を果たすようになっていると感じる。このような状況を背景にし、科学もまた、様々な声を聞きながら研究を遂行しないと成り立たなくなる時代にさしかかっているのではないだろうか。人口減少などの課題に直面している現在、限られたターゲット層を相手にするのではいずれ成り立たなくなってしまう。自身の研究領域の専門性を大事にしつつ、関心を持つ層を広げていくことが研究分野の貢献に繋がるのではないかと考えている。

國末薫(D3・フランス語学)

コーディネーターからのコメント

 未来館の展示の工夫に注目して、気づきや発見を共有してくださいました。科学コミュニケーションの入口から出口まで、各段階に工夫が凝らされていましたね。日常の素朴な疑問から出発する、失敗してもいいからやってみる、というのは、本来の学びの姿であるようにも思います。そう考えると、未来館が試みようとしているのは、幼い頃に誰もが持っていた好奇心を思い出させる仕掛けづくりなのかもしれません。

 研究に関心を持つ層を広げる手段として、科学コミュニケーションを捉えました。閉鎖的なアカデミアを革新するためには、積極的に市民を巻き込んでいくことが必要ですね。一部の専門家だけが科学的知識を占有していい時代ではもはやありません。先月のゼミで取り上げた「役に立たない研究の未来」では、研究資金獲得の観点から、研究を市民に開くことの必要性を説いていました。日本の研究を発展させていくためにも、市民の声を取り入れる態度と方策が求められています。コミュニケーションの観点から言えば、市民が何を知りたがっているか、に耳を傾けることがまずは大事になるでしょうか。