博士課程学生にとって、博士論文の執筆は長期的な計画と多段階の目標達成を伴う一大プロジェクトです。しかし、このプロジェクトを効果的にマネジメントするためのスキルを、体系的に学ぶ機会は限られています。特に近年、3年間での博士課程修了が求められる中、時間管理とスケジューリングのスキルはますます重要になってきています。

このような問題意識から、秋学期の初回ゼミでは、スケジューリングをテーマとしたオンライン・ワークショップを実施しました。スケジューリングは個人作業になりがちですが、今回は少人数での対話を取り入れながら進めました。他者との対話を通じて、スケジュール管理や目標設定に関する自身の思考や価値観を見つめ直す機会になると考えたからです。

プログラムは以下の3部に分けて進行しました:

  1. 8〜10月までの振り返り:夏休みと秋学期のひと月にやったこと・できたことを振り返る
  2. 半年後までの目標設定:博論に関わること、その他のこと(教育活動や社会貢献活動など)のそれぞれについて、最低1つずつ、合計で3つの目標を立てる
  3. 目標についての対話:3人1チームでブレイクアウトに分かれて、それぞれの目標について対話する

最後の対話のパートには45分程度を割き、1人あたりが話す時間を充分に確保しました。対話は、聞き役・話し役・メモ役の配役を交代しながら、あらかじめワークシートに用意した質問に沿っておこなってもらいました。用意した質問は、次の4つです。

  1. 【事実を確認する】半年後までに何を達成したいですか?
  2. 【感情を言語化する】その目標を達成したとき、あなたは何を思うでしょうか?
  3. 【目標を価値づける】その目標を達成することで、あなたは何を得られますか?
  4. 【すべきことを決定する】目標達成のために、必要なことはなんだと思いますか?

事実を確認することから始め、感情と思考に目を向けることを通じて、半年後という中期的な目標に対して、短期的な目標を決定することを目指しました。興味深かったのは、感情を言語化する問いかけが、目標設定の背景にある解釈や価値観を引き出すきっかけとなったことに気づいた学生がいたことです。彼女は、感情を言葉にしていく過程で、自分が決めた目標を達成することの意義や価値に自然と思考が移ったと話してくれました。

このワークショップを通じて、スケジューリングという個人的な作業も、チームでの対話を通じてより深い洞察が得られることが確認できました。特に、感情面からのアプローチが目標設定の本質的な理解につながったことは、今後の支援活動に活かせる発見でした。