博士後期1年、MIRAI3期生の小田千敏です。
私は「日本英語」をWorld Englishesの一つの英語バラエティとし、その文法を研究対象としています。
11月26日、MIRAIトークとして高校生向けに自分の研究内容を紹介しました。
選んだタイトルは『「正しい」英語とは?ー言語のバラエティとバリエーションについて考えるー』です。
日本人の英語というと、高校生の皆さんも当事者なので、トピックとしてはとっつきやすいものであると思います。
しかし受験を控えて英語を勉強している身だからこそ、教科書や文法書に倣うことに一生懸命になっているという状況ではないかと想像しました----かつて自分がそうであったように。
私がデータ収集をする中で感じたことは、大学生や社会人になって受験英語から離れても、この「正しさ」の固定観念によって自分の英語に自信が持てていない人が多いということです。
そこで「そもそも言語の正しさとは何なのか」を高校生と一緒に考えてみたいと思い、前述のタイトルを選びました。
トークの流れ
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自己紹介、研究内容(World Englishesの中の日本英語)の紹介。
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「正しい」英語とは何なのか。日本英語と英語母語話者の話し言葉データを照らし合わせて考えてみる。
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言語に内在するバリエーションを以下の2つの観点から解説。
(1) ことばの使い方はみんな同じなのか(個人間の差)
(2) ことばの使い方はいつも同じなのか(場面に起因する差)。
さらに標準的でフォーマルで規範的な言葉の使い方を「正しい」とするなれば、正しさを求められるときと、そうでないときがあることも述べた。
準備段階で気を付けたこと
30分という比較的限られた時間であるからこそ、要点を簡潔にすることにもっとも苦労しましたし、何度もスライドの流れを検討しました。
また、実際のデータから「証拠」を提示することで、概念だけの議論よりも納得感を感じられるように工夫しました。
本番前にMIRAIの皆さんに高校生役になってもらってリハーサルを行い、時間内に収まるボリュームや進行に改善できたこともよかった点だと思います。
リハに参加してくださった皆様、事前に相談に乗ってくださった方々に感謝いたします。
高校生からのフィードバック
このような機会で発表するのが初めてでとても緊張しました。
しかし、フィードバックを見ると、参加者が自分の伝えたかったことをうまく汲み取ってくれたようで安心しました。
そのうちのいくつかを紹介します。
- 言語の正しさについて時と場合に応じてさまざまな正しさが存在することを知り、自信を持って勉強することが大切であると感じました。
- World Englishesという学問の名前は知らなかったが、私もとても興味がある分野だったのでとても面白かったです。日本英語という考え方で日本人の英語を見たことがなく、今後はもっと自分の英語を肯定的に受け止めて、英語の学習に励みたいと思いました。
- 「正しい言語とは?」という当たり前のようで難しい問いを今回自分の中で考えるきっかけになりました。言語はコミュニケーションをとるためのものだということを念頭に置いて、これからも英語を楽しみたいと思いました。
- 日本英語を英語の1種として捉える、という考え方は英語が話せるのにも関わらず自信がなく話さない、という人の多い日本では重要だと感じました。
MIRAIトークを経験し、研究者以外の人へも研究の内容を発信していく大切さを実感しました。
研究内容をかみ砕いて伝えることで自分の頭の整理にもなるのと、「わかりやすく」「楽しく」伝えるのを意識することで初心に戻って自分の研究を見返すきっかけにもなりました。