7月28日に第5回のMIRAIゼミがおこなわれました。

前期の授業がほぼ終わった頃の実施だったためか、参加できる人が限られてしまいましたが、その分少人数での密なディスカッションができました。

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(↑今回は少人数だったため、膝を突き合わせた密な議論ができました)

今回のゼミを担当してくれたのは、小林真也さん・桶谷さん・小田さんの3名です。

テーマは「自分の研究の発信・アウトリーチについて考える」でした。

テーマ設定の背景には、以下のような問題意識がそれぞれありました。

  • アカデミアで発表される成果物と、一般の人(もしくはフィールドのインフォーマント)との間には距離があると感じる。
  • フィールドワーク先で失読症の人と出会い、論文とは異なる発表形態を模索する必要があると感じた。とくに文字媒体以外で研究成果を発表する形態を模索したい。
  • サイエンスコミュニケーションの観点から、自分の研究している内容を様々な方法で広く伝えていくにはどうしたらいいのかということに関心がある。

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(↑桶谷さんから、フィールドで芽生えた問題意識について共有されました)

ゼミは以下のような流れでおこなわれました。

  1. 【イントロ】
     このテーマを選んだ理由、問題意識を共有する。
  2. 【個人ワーク】
     これまでやってきた、もしくはこれから取り組みたいと思っている研究の発信・アウトリーチ方法について、付箋で整理する。
     その際、以下の3点に注目する:
      What(どのような研究成果や得られた知見を)
      Who(どのようなオーディエンスに) 
      How(どのような発表形態・手法を使って)
  3. 【ペアワーク】
     2で書き出した内容をペアで説明しあう。
     この時、Why(なぜその内容・オーディエンス・手法なのか)についても触れる。
  4. 【グループワーク&全体共有】
     グループで先ほどまで説明した内容を総合し、新たなHowのアイディアを出し合う。この時
      ハードなHow(どんな形態で、例:論文を書く)
      ソフトなHow(どんな中身で、例:面白いタイトルをつける)
     の両方の観点からアイディアを出す。
     《!アイディア出しの際のルール!》
      ・(現実的かどうかは一旦置いておいて)突飛なアイディアを歓迎する。
      ・いいと思った他人のアイディアに便乗するのもあり。
  5. 【咀嚼する時間】
     アイディアを付け足してもらった自分の模造紙に戻って、質問や感想などを言い合う。

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(↑模造紙に貼った付箋を見ながら、自由に対話を重ねていきます)


ゼミを担当してくれた3人の振り返りコメントです。

(小林)もともと広い意味でのサイエンスコミュニケーションに関心が強く、いまもMIRAIでそれにまつわる企画を練っているため、単純に参加者がどのようなアイデアを出すのかに興味があった。果たして、参加者の関心は予想以上にハードなHowに向いていたようで、どのようなハードなHowがありうるかについての意見交換が盛り上がった。一方で、研究の見せ方(魅せ方)も重要であるため、そのハードなHowではどのようなソフトなHowのアプローチをすべきかということはもっと議論すべきだと思う。この点は今後の課題として、次回以降のMIRAIゼミでも引き続き考えていきたい。

(桶谷)自身の問題関心から企画していただくことになったが、最終的には自然と話が広がっていき、アイデアを出すいい時間になった。従来の形態にとらわれてなかなか新しいアイデアが出ないかもしれないと不安があったが、想定外のアイデアがたくさん生まれていた。WSとしての課題を挙げると、最後にそれぞれが得た新しいアイデアを全体で共有する時間を取らなかったため、具体的な成果が見えづらくなってしまった。今回のWSを次につなげていくために、実際に出たアイデアを実現していく企画ができたらいいと感じた。

(小田)博士課程で研究者の卵として、いつもいかにアカデミックに足り得る論文を書くことばかりに目が行っていたが、逆にアカデミア以外のオーディエンスに届けるにはというのを考えるいいきっかけになった。言語学系のアウトリーチの方法と、社会学系のアウトリーチの方法で、それぞれ似たような手法が考えられることにも気が付いた。いくつかいいアイディアも生まれたし、みんなで協力して一つのコミュニケーションのチャンネルや作品が生まれそうな兆しが見えたのがよかった。このままだと日常に忙殺されて、または勇気が出なくて実現しないという将来が容易に想像されるので、実践的なステップを踏んでプロジェクトに持っていけたらいいなと思った。