先日、国立国語研究所で開催された、異言語Lab.さんによる「方言版異言語脱出ゲーム体験会&制作ワークショップ」に参加してきました。本稿では、イベントの内容について報告します。

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イベントの内容

このイベントでは、まず異言語Lab.さんが国立国語研究所と共同開発された謎解きゲームを体験しました。謎解きゲームの詳細は下記の通りです。(昨年、国立民族学博物館で開催されたときの紹介ページ: https://www.igengoescapegame.com/tumugarerumono-oosaka

このゲームは、琉球諸島(奄美大島,石垣島,与那国島)をテーマに各地の方言や文化を織り交ぜた謎を解く」脱出ゲームで、制作当時、国立国語研究所に所属していた方言研究者の方がサイエンスコミュニケーションの一環として異言語Labさんとの共同制作に取り組んだものだそうです。

今回のイベントはMIRAIのためにクローズドで開催してくださっており、参加者はMIRAIゼミの学生6名にコーディネーターの青井さんと計7名のMIRAIのメンバーでした。ゲーム中は2名ずつに3グループに分かれ、ペアで協力しながら謎解きに取り組みました。謎解きゲームの経験者はほとんどいない状態でしたが、皆さん試行錯誤しながら楽しんで挑戦できたようです。

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90分間の脱出ゲームの公演後は、脱出ゲームの仕組みや制作秘話、創り方について2時間ほど講演・ワークショップが行われました。

MIRAIでは昨年度から人文科学のサイエンスコミュニケーションのあり方について議論しており、そのひとつとして外語祭で同様のイベントを企画できないかと考えています。ワークショップでは、謎解きイベントを企画するうえでの注意点や、言語を扱った謎解きゲームとして考えるべきことなどをレクチャーしていただきました。

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中でも重要なこととして挙げられていたのが、次の点でした。

  • 正しい言葉で伝える
  • コミュニティや当事者の文化を尊重する

現実に存在する言語をモチーフとして扱う以上、その言語や言語の話者を粗雑に扱うことがあってはならない、ということです。これは言語研究・地域研究を柱とする外大の一員としても、常に意識しておかねばならないことだと感じました。

また、レクチャーのあとはディスカッションベースでワークショップは進行していきました。議題は、「外語祭で、サイエンスコミュニケーションの一環として謎解きゲームを開催するなら、どのような企画にするべきか」です。

ここからは異言語Lab.さんが提示してくださった論点を元に、学生が中心となって議論を進めました。主な論点は次の通りです。

  • ターゲット(誰に対するサイエンスコミュニケーションか)
  • メッセージ(コミュニケーションによって何を伝えたいのか)
  • ゲームの形式(どのような形式の謎解きゲームによって伝えるのか)

最後の論点は技術的な部分もありますが、上2つの「誰に、何を伝えたいのか」という論点は非常に重要だと思います。今回の企画に限らず、人文科学のサイエンスコミュニケーションについて考えていくうえで今後も忘れてはいけない大きなテーマではないでしょうか。

議論では様々な話が出ましたが、それらをまとめると次のようになると思います。

  • ターゲット:外大を志望する受験生、在学生、他大学の学生、外大の卒業生
  • メッセージ:外国語(言語)を学習する意義とは何か
  • ゲームの形式:(現実的に考えて)周遊型

今回体験した脱出ゲームは特定の言語を扱ったものでしたが、外大で同様のものをやるなら特定の言語に囚われない横断的なものにするか、よりメタ的なものにするべきだと思います。そこで、"この時代に言語学習をする意味"についてをメッセージとして伝えていくことが、広く外大で行われている学問や研究の意義について迫れるのではないかと考えています。

まとめ

本イベントでは、謎解きゲームを通じて言語学習のプリミティブな面白さを再認識させられました。また、ワークショップではその面白さと意義をどのように参加者に伝えていくか、議論をすることができました。最後に述べた「言語学習の意義」についてはMIRAIゼミに持ち帰り、他のメンバーとも議論をしてみたいと思います。

異言語Lab.さんのワークショップは外語祭までに全5回が予定されており、次回は6月頃の予定です。次回までに上で挙げられていた論点を深掘りしつつ、伝えたいメッセージを明確に言語化できるよう練っておきたいと思います。

(MIRAI2期生 小林真也)

おまけ

ここからは、イベント参加者の一人である小林の個人的な感想を述べたいと思います。

上述したように、本イベントに参加した学生はほとんどが謎解きゲーム未経験だったのですが、実のところ唯一自分だけが謎解き経験者でした。僕は謎解きが結構好きで頻繁に遊んでいるので、「経験者」より「ヘビーユーザー」と言ったほうがいいかもしれません。

そんな謎解きに慣れた自分からすればいつも通りにプレイしていた感じだったのですが、このゲームは要所要所に実際の方言や沖縄の伝統的な文化がそのまま使われていたので、普段より舞台設定がリアルに感じられて没入感が強く感じられました。

特に謎解きあるあるのクライマックスの大パズルでは、これまでの伏線をきちんと回収しつつ、文化的にもきちんと由来がある行いをシミュレートするような構造になっており、タイトルである「紡がれるもの」の意味がわかった瞬間には鳥肌モノでした!方言に興味がある人はもちろんですが、謎解きファンにもおすすめできる内容です。興味がなかった人であっても、このゲームを通して興味を持てるようになるはずです。

ちなみに、自分のチームは参加グループの中で唯一謎解きゲームをクリアすることができました!経験者の実力を見せられてよかったです笑

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