コーディネーターの青井です。
コーディネーターになる以前は、個人研究事務所を立ち上げ、フリーランス研究者として活動していました。
その時の重要な仕事の柱の一つが、学術コミュニケーションスキルのセミナー講師でした。
学術コミュニケーションとは、プレゼンテーションや論文など、研究を報せる活動一般を指します。
この記事では、主に学部生向けセミナーの中で伝えてきた「プレゼンテーションの成功を握る3つの鍵」をご紹介します。
プレゼンテーションの機会がある大学院生のみなさんにもきっと役に立つと思います。
メッセージは1つだけ
学会などでよく目にする失敗が「詰め込み過ぎ」によるものです。
プレゼン内容を考えているうちに、あれもこれも伝えたい、伝えなきゃ、となってしまうのかもしれません。
しかしまずは「このプレゼンテーションで自分が一番伝えたいのは何か」
「このプレゼンの要点を一言で言うとしたら何か」をしっかり定めましょう。
聞き手はあなたがプレゼンで話そうとしていることを全く知りません。
そんな相手に次から次へと新しい情報を提示しても、処理が追いつかず、混乱させてしまうだけです。
プレゼンでは「絶対に伝えたいこと(=メッセージ)」は1つに絞るのが鉄則です。
そしてプレゼンで話す全ての情報が、その1つの「絶対に伝えたいこと」と関係している必要があります。
本筋と関係のない情報は、聞き手のスムーズな理解を邪魔してしまうからです。
「大半の聴衆が理解できていなくても、コメントしてくれる人や質問してくれる人はいる」
「伝わる人にだけ伝われば、それでいい(伝わらない人は端から相手にしない)」という意見も中にはあるかもしれません。
しかしそれは、相手があなたの発表をわかってくれたわけではなく、相手がわかる範囲で理解してくれた(もっと言えば、相手の範囲内でできる解釈をしてくれた)に過ぎません。
たとえあなたの専門に近い人に伝えるときであっても、やはりメッセージは絞った方が、あなたの伝えたいことがより正確に伝わります。
ターゲットを明確に
相手に自分の発表を聞いてもらうためにできる簡単な方法が1つあります。
それは「相手が知りたがっていることについて話す」ことです。
興味関心を持っている話題であれば、話し方が多少不格好であっても、相手はきちんと耳を傾けてくれます。
逆に、聞く価値がないと思った話には、人は耳を傾けてはくれません。
プレゼンを準備する前に、あなたの話を聞く相手が何を知りたがっているのかを想像してみましょう。
あるいは、発表を申し込む前であれば、あなたの話に興味を持ってくれそうなのは誰なのか、を一度考えてみましょう。
聴衆に合わせて、話の力点や共有する背景知識は変わります。
それは、興味を抱くポイントや前提として持っている知識が聞き手によって異なるからです。
相手の知識量や興味関心に合わせて話の内容をアレンジできれば、あなたのプレゼンは聞いてもらいやすくなりますし、より伝わりやすくもなります。
ゴールを設定する
プレゼンテーションにはゴールが必要です。
ここで言うゴールは、メッセージ(=一番伝えたいこと)とは違います。
「プレゼンを聞いてくれた相手にどうなってほしいのか」、その問いの答えがゴールです。
プレゼンをし終わった後の聞き手の状態をイメージしておくと、何を話すべきなのかが自ずとわかってきます。
逆に、話さなくてもいいことや話すべきでないこともわかります。
プレゼンのゴールにはいくつかレベルがあります。
基本となるゴールは「内容を理解してもらう」ことでしょう。
内容を理解してもらえれば、相手からの質問やコメントももらいやすくなります。
さらに上のゴールとしては、「論点の重要性を共感してもらう」ことがあります。
研究計画を伝えるときなど、自分の研究をアピールしたいときには、このレベルまでを目指す必要があります。
そのさらに一段上のレベルのゴールには、「自分の研究のために何かアクションを起こしてもらう」というのがあります。
規模の大きい研究プロジェクトを組織するときなど、誰かに協力を仰ぐ必要があるときには、このレベルのゴールまで意識したいですね。