BLM連続セミナー第9回「#MeTooとBLM」

第9回目のテーマは #MeTooとBLMです。

講演者/講演タイトル

  • 小田原琳(大学院総合国際学研究院准教授)
    https://www.tufs.ac.jp/research/researcher/people/odawara_rin.html
    「BLMと# Me Too」
    BLM運動の実践者たちが人種とジェンダー、セクシュアリティ、階級と交差した問題提起(インターセクショナリティ)に細心の注意を払っていることは、意外に知られていません。講演では、BLMの共同創始者であるアリシア・ガーザ氏とパトリース・カラーズ氏の著作を軸に、私たちが問われていることを考えます。
  • 大鳥由香子(世界言語社会教育センター講師)
    https://www.tufs.ac.jp/research/researcher/people/otori_yukako.html
    「アメリカ社会における黒人の身体 女性と子どもを中心に」 (仮)
    アメリカ社会の黒人女性は、人種とジェンダー双方の差別に直面してきた存在です。講演では、10代の時にレイプで妊娠した子どもを殺害したことで服役し、刑務所内での教育を経て、歴史学者、活動家としての道を歩んでいる黒人女性ミシェル・ジョーンズ氏を取り上げ、黒人女性が歴史的な差別にどのように向き合ってきたのかを紹介します。
  • 高内悠貴(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校歴史学部博士課程)
    「アメリカの大学生のアクティヴィズム」(仮)
    本学の卒業生でイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校歴史学部博士課程在学中の高内悠貴さん(専門:ジェンダー史、クィア研究など)にアメリカの大学におけるアクティヴィズムについてご紹介いただきます。BLMや# Me Tooのいずれにおいても、SNSでの活動は、地域に根ざした取り組みと有機的に結びついています。多くの学生が寮生活を選択し、文字通り大学で暮らすことになるアメリカでは、例えばキャンパス・レイプに対する議論などが、BLMや# Me Tooを「身近なもの」として捉えるきっかけになっています。

日時

2021年7月21日(水)9:30~11:30
※この回は米国とつなぐため、開催時間が通常と異なりますのでご注意ください。

プログラム

1.開会(0:00)
2.中山俊秀副学長 ご挨拶(2:23)
3.講演「#Me TooとBLM—インターセクショナリティと共生のコミュニティ」小田原琳准教授(9:18)
4.講演「アメリカ社会における黒人の身体—女性と子供を中心に」大鳥由香子先生(29:15)
5.報告「アメリカの大学生のアクティヴィズム」高内悠貴さん(53:57)
6.登壇者間のコメント(1:11:30)
7.質疑応答(1:37:08)
8.閉会(1:59:58)

備考

  • Zoomでのオンライン開催
  • 使用言語:日本語
  • 参加費:無料

主催

東京外国語大学多文化共生研究創生WG、現代アフリカ地域研究センター

小田原琳先生講演 参考文献

  • アリシア・ガーザ、人権学習コレクティブ監訳2021『世界を動かす変革の力―ブラック・ライヴズ・マター共同代表からのメッセージ』赤石書店
  • シドニー・ミンツ、藤本和子訳 2000『アフリカン・アメリカン文化の誕生―カリブ海域黒人の生きるための闘い』岩波書店
  • パトリース・カーン=カラーズ+アーシャ・バンデリ、ワゴナー理恵子訳2021『ブラック・ライヴズ・マター回想録―テロリストと呼ばれて』青土社
  • Kimberle Crenshaw, 'Demarginalizing the Intersection of Races and Sex: A Black Feminist Critique of Antidiscrimination Doctrine, Feminist Theory and Antiracist Politics' in *University of Chicago Legal Forum*, Vol.1989, Iss.1, Article 8.
  • Michelle Alexander, *The New Jim Crow: Mass Incarceration in the Age of Colorblindness*, New York & London: The New Press, 2012
  • Silvia Federici, *Re-enchanting the World: Feminism and the Politics of the Commons*, Oakland: PM Press, 2019

大鳥由香子先生講演 参考文献

  • アリシア・ガーザ、人権学習コレクティブ監訳2021『世界を動かす変革の力―ブラック・ライヴズ・マター共同代表からのメッセージ』赤石書店
  • アンジェラ・デイヴィス『監獄ビジネス グローバリズムと産獄複合体』岩波書店、2008年
  • ジャクリーン・ジョーンズ『愛と哀 アメリカ黒人女性労働史』風呂本惇子他訳、学藝書林、1997年。
  • パトリース・カーン=カラーズ+アーシャ・バンデリ、ワゴナー理恵子訳2021『ブラック・ライヴズ・マター回想録―テロリストと呼ばれて』青土社
  • ベル・フックス『アメリカ黒人女性とフェミニズム ベル・フックスの「私は女ではないの?」』大類久恵監訳、明石書店、2010年。
  • ロンダ・シービンガー『植物と帝国 抹殺された中絶薬とジェンダー』工作舎、2007年
  • Danielle L. McGuire, /At the Dark End of the Street: Black Women, Rape, and Resistance--A New History of the Civil Rights Movement from Rosa Parks to the Rise of Black Power /(Vintage, 2011)
  • Elliott J. Gorn, /Let the People See: The Story of Emmett Till/ (Oxford University Press, 2020)
  • Laura Briggs, /Taking Children: A History of American Terror/ (University of California Press, 2020)

参加者の声

  • 非常に貴重な講演をありがとうございました。小田原先生のお話からは、ハッシュタグの社会運動の可能性と限界を感じるとともに、単に社会の問題を訴えかけるだけでは解決に繋がらない、行動に移して、現状に変革をもたらすことこそがゴールであるべきだということを深く理解できました。大鳥先生のお話からは、人種差別問題における象徴としての母子関係の重要性について、指摘されて初めて実感することができました。そして、特にマイノリティ(黒人)女性に対する複合的な社会的抑圧の可視化の契機として#MeToo運動とBLM運動が同時期に盛り上がったのは偶然ではなかったことがよくわかりました。高内さんのお話からは、若者が昨今のアメリカの社会運動の中心を担う背景事情を学ぶことができました。そうした運動の経験を経て社会人になった人々によって構成されるアメリカと、高齢男性によって牛耳られた日本政治や、男性中心的な日本の経済・社会を対比させて考えると、日本の将来への不安がより高まるとともに、自分も細々とボランティア活動などに参加していますが、これからもがんばろうという気持ちになりました。ありがとうございました。
  • アメリカの刑務所が経済的な搾取構造につながっていることは知らず、BLMの問題の根深さ、背景がよくわかりました。 また、高内さんの、イリノイ大学からの報告もはじめて知ることばかりで驚きました。日本では大学自治を守るためキャンパスに警察を入れることが大問題になるのですが、アメリカではそんなに予算を使って大学自体が警察によって大学をコントロールしている実態があるとは。
  • 今まで、BLMは黒人と白人の対立構造の一部だと考えていたが、アメリカ社会では黒人女性に対してレイシズムとジェンダーの両方において差別、迫害が起こっており、それらを統合したインターセクショナリティについて考えることが重要であると感じた。
  • transformative justiceという概念を初めて耳にしました。運動にかかわるひとびとにとっての正義は、social justiceのみならず、さまざまなかたちでありえるのだという点がとても勉強になりました。運動の中心メンバーや構成員がどのような正義を掲げるかで、そのつどの運動の推進力や持続力も変わるのだろうと感じました。
  • #MeToo、#BlackLivesMatterの活動はハッシュタグからある日突然生み出されたわけではないということ、ハッシュタグでつながったその前から、それぞれが草の根の活動をしていて、その活動とは、違いを理解し、違いを超えて粘り強く議論することであり、その活動はSNSと対極にあるものであるということでした。様々な考えや背景を持った人と協働する機会を持ち、コミュニティ形成=組織化する(オーガナイジング)という点では、ペル・グラントという制度はこれまで高等教育を受ける機会を持てなかった方にも教育の機会が開かれたことで多様な人の視点の幅が広がる可能性を持たせると考えました。また、イリノイ大学の組合活動の説明も印象に残りました。

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