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トランジット・ヤード transit yards

いよいよ9月も終わりに近づいた。9月も「夏休み」という実感はまったくなく、〆切に追われたり大学関係の仕事がいろいろあったりして、ほとんど忙しいだけだったが、それでも研究仲間のSさんからのアイディアで、M大のSゼミと当方のゼミの有志の合同ゼミを開催することができた(9月14日、21日の二回開催。一度目はM大、二度目は外大にて)のは、楽しい機会だった。1回目は拙著に関する簡単なレクチャーの後、グループディスカッションをはさんで拙著に関するディスカッションを行ったのだが、真ん中のグループディスカッション「昨日なに食べた?」(ええ、聞いたことのあるタイトルですね)で大いに盛り上がった。大学生の食生活は、かねてより気になっていたことで、外大のGS(グローバルスタディーズ)の授業でも聞いたりしたが、やはりゼミ的な形式でゆっくり話ができると、より興味深い。S先生が見事に前日のお夕飯と原料の原産地のお話しをされたのも印象的であった(当方はうかつにも前日食べたものを瞬時には思い出せなかった)。2回目の合同ゼミではD.グレーバーの『ブルシットジョブ』を集中的に読み切った。もちろん細かい議論はできなかったが、労働は大学生諸氏にとっても身近で考えたいテーマであり、いつもと違うメンバーと話しができたのはよい体験だったに違いない。
もう一つ、昨日9月26日にはゼミの卒業生と現役院生が企画した、監督さんをお招きしての映画上映&ディスカッションが行われた。佐藤隆之監督『ラプソディオブcolors』である。公的な宣伝文はともかくとして、大田区にあった「たまり場」colors に集まってくる人びとの生き様を、そこでのライブの音楽をはさみながら描いていくドキュメンタリーである。観た後の監督さんとの質疑応答・議論をじっくりやりたいとのことで、かなり人数を絞り込んだ企画であった。その方針が功を奏し、いろいろな論点をじっくり話せてとてもよかった。
 ところでこのcolors は実は「たまり場」ではなく、トランジット・ヤードと名づけられていた。監督さんにうかがったところ、外国の方が名づけたそうだが、いいネーミングである。トランジットはいうまでもなく、飛行機の乗り換えのために空港に置かれた空間だが、そこは形式的にはどこの国でもない。以前からおもしろい場所だなと思っていた。もちろんcolors は日本にあったのだが、人が集っては去りという場所は、もしその集いが人と人のよい関係を醸し出せるなら、そのときだけのどこでもない場所、いわばトランジットの空間になると言えるのかもしれない。
大学、そしてゼミという場所も、4年なり2年なり(あるいはもっと長く?)集まる人びとにとってのトランジット・ヤードであればと願う。コロナ禍でいささかもどかしい「ソーシャル・ディスタンス」に悩まされ続けているが、出口が見えることを祈りつつ持続的に抗っていきたい。

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2021年9月27日 23:15に投稿されたエントリーのページです。

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