2002年度 大阪市立大学文学部 集中講義 (8月5日-8日)


T 〈導入〉 −−メディア論とは

参考:「インターネット講義」第1回

(0) 包括的な「メディア論」

佐藤卓己「現代メディア史」岩波、1998年
香内三郎他「現代メディア論」新曜社、1987年

(1) 「メディア」(によって産出されたもの)と「社会」との関係を研究する領域

――「メディア学」(Cf. 『メディア学を学ぶ人のために』世界思想社)
*この場合の「メディア」とは、テレビ、新聞、映画etc.といったいわゆる「メディア」として理解されているもの
・学問領域としての分節化/既成の学問領域との関係:「社会学」(文化社会学)、「カルチュラル・スタディーズ」、「コミュニケーション論」、「メディア学」(社会科学系)
・基本的なアプローチ:エスロノジー的アプローチ+理論(現象の体系化)、実証的
・内容:個々の「メディア」現象の分析、個々の「メディア」の成立史、個々の「メディア」によって産出された「テクスト」の分析、メディアの社会に対する「作用」の分析、
・ 具体的な研究領域の例:
・新聞研究――「ジャーナリズム」学
・テレビ研究――
- 〈テレビ〉という現象そのものに関して:ジョン・フィスク/ジョン・ハートレー『テレビを〈読む〉』未来社、1991年;マーティン・エスリン『テレビ時代』国文社、1986年(現象の体系化)
- テレビ番組分析(とりわけ「ソープオペラ」)(受容分析+テクスト分析)
-「作用」に関する研究
・広告研究――
ジュディス・ウィリアムスン『広告の記号論』柘植書房、1985年(理論+テクスト分析)
・電話研究――
・「コミュニケーション論」――マクウェール「マス・コミュニケーションの理論」新曜社、1985年;林進編『コミュニケーション論』有斐閣、1988年

(2) 思想史的研究――「メディア」と人間の知覚・認識・思考のあり方との関係を研究する領域(狭義の「メディア論」)

*この場合の「メディア」とは、字義通り「媒体」となるすべてのものを指す。
・学問領域としての分節化/既成の学問領域との関係: 「文学」、「哲学」(人文科学系)
・基本的なアプローチ、性格:理論(思考モデル)+テクスト分析、観念的
・内容:思考モデルとしてのメディアの展開、各メディア段階の特質の分析、個々のメディアの持つ特質(「書物」、「写真」、「映画」、「ハイパーテクスト」etc.)
具体的な研究領域の例:
マーシャル・マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』みすず、1986年
マーシャル・マクルーハン『メディア論 人間の拡張の諸相』みすず、1987年
ウォルター・J.オング『声の文化と文字の文化』藤原書店、1991年

ヴィレム・フルッサー『テクノコードの誕生 コミュニケーション学序説』村上淳一訳、東京大学出版会、1997年

ノルベルト・ボルツ『グーテンベルク銀河系の終焉』識名章喜・足立典子訳、法政大学出版局、1999年
ノルベルト・ボルツ『カオスとシミュレーション』山本尤訳、法政大学出版局、2000年
ノルベルト・ボルツ『仮象小史』山本尤訳、法政大学出版局、1999年
フリードリヒ・キットラー『グラモフォン フィルム タイプライター』石光泰夫・石光輝子訳、筑摩書房、1999年
フリードリヒ・キットラー『ドラキュラの遺言 ソフトウェアなど存在しない』原克他訳、産業図書、1998年
〈コンピュータ/ハイパーテクスト〉
テッド・ネルソン『リテラリーマシン』竹内郁雄他訳、アスキー出版、1994年
ジョージ・P.ランドウ『ハイパーテクスト 活字とコンピュータが出会うとき』若島正他訳、ジャストシステム、1996年
ジェイ・デイヴィット・ボルター『ライティングスペース』黒崎政男他訳、産業図書、1994年
ジェイ・デイヴィット・ボルター『チューリング・マン』土屋俊他訳、みすず、1995年
ニコラス・ネグロポンテ『ビーイング・デジタル』福岡洋一訳、アスキー出版、1995年
『現代思想』1996 vol.24-4 (特集=インターネット――メディア・コミュニティ)
〈映像論〉
ヴィレム・フルッサー『写真の哲学のために』深川雅文訳、勁草書房、1999年
ベラ・バラージュ『視覚的人間』岩波文庫
ヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術作品』晶文社、岩波文庫、ちくま学芸文庫
〈都市論〉
田中純『表象分析T』INAX出版

(3) 「ニュー・メディア」(特にコンピュータ)による新たな芸術の可能性

(たとえば『InterCommunication』NTT出版など)


*この集中講義では(2)思想史的研究をとりあげる。主要な論点となるのは、

  1. 「メディア論」をめぐる言説の枠組みの概観――メディアの展開とそれに伴う人間の知覚・認識・思考のあり方の変化(パラダイム転換)、それぞれのメディア段階・文化段階の特質
  2. とりわけ「文字/書物」のパラダイムから、「画像」のパラダイムへの転換
     ・ベンヤミンの思考モデル
     ・ハイパーテクスト理論
  3. (身体論とインターフェース)
  4. ゴダールの『映画史』
  5. ハイパーテクスト的思考のための「演習」