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東京外国語大学 |
![]() そのような背景で馬英九総統は8月5日と9月7日の2回に渡り「東シナ海平和イニシアチブ」(東海和平倡議)を提唱した。馬総統は「主権は分割できないが,天然資源は共有できる」「争いを棚上げし平和的方法で解決しよう」と呼びかけている。「対立行動をエスカレートさせない,すべての関係国が自制を」という馬総統の提案を日本政府は真剣に受け止めるべきである。 ![]() 日本は目先の事態沈静化を進めるとともに長期的視点で東シナ海の安定を維持するメカニズムを考えなければならない。そのためには台湾との対話が重要である。9月16-20日,松田康博氏を代表とする研究グループで台湾を訪問し,台湾政府高官および国家安全会議スタッフと面会した。民間レベルでは中台連携の話が出ているが,馬政権は領土問題で中国と連携する意思がないことが改めて確認できた。 しかし,台湾側では日本に無視されているという不満は強い。例えば日本政府は国有化後外務省の杉山アジア大洋州局長を中国に派遣したが,台湾には誰かを派遣するということをしなかった。同じく領有権を主張しているのに常に中国を向いた日本政府の姿勢に台湾は大きな不満を抱いている。馬総統の提案はそのような日本に対し台湾を重視するようアピールする狙いもある。日本外交が無策で台湾を失望させるなら,台湾で中国との連携を主張する声が高まるであろう。 ![]() 馬総統は1月の選挙で再選されたが国内政策でつまずき支持率が低迷している。尖閣問題の対応をめぐっては「弱腰」との批判にさらされている。支持率を上げるため対日強硬パフォーマンスに走ってもおかしくない局面で「平和イニシアチブ」を提案したことは評価に値する。台湾の本音は,尖閣の支配ではなく周辺海域の漁業で実利を確保することにある。日本政府は「領土問題は存在しない」の一点張りではなく柔軟性を示す必要がある。出先機関の交流協会は台湾政府,漁業関係者との連絡を密にし,抗議活動家との対話も進めるべきだ。日台漁業交渉を進展させ台湾の利益に配慮を示せば台湾の抗議活動は「儀式化」する可能性がある。 ![]() ![]() ![]() |
馬英九総統は8月5日午前、台北賓館で外交部と国史館が共同主催する「中華民国と日本国との間の平和条約発効60周年記念展示会及びシンポジウム」に出席し、挨拶した。馬総統は、最近釣魚台列島を巡る争議が日増しに高まり、その緊張した情勢を憂慮している。このような緊張情勢を緩和するため、「東シナ海平和イニシアチブ」を提起した。それは関係国が自制し、争議を棚上げにし、平和的手段で争議を処理し、並びにコンセンサスを求め、東シナ海行動規範を作り、資源を共同開発するためのメカニズムを構築し、東シナ海の平和を確保するよう呼びかけるものである。 我々は関係国に次のように呼びかける。 一、対立行動をエスカレートしないよう自制する。 二、争議を棚上げにし、対話を絶やさない。 三、国際法を遵守し、平和的手段で争議を処理する。 四、コンセンサスを求め、「東シナ海行動基準」を定める。 五、東シナ海の資源を共同開発するためのメカニズムを構築する。 我々は「東シナ海平和イニシアチブ」を通じて、関係国に現在の北東アジアの領土問題が深刻な事態を引き起こしかねないことを直視し、平和的に争議を処理し、東シナ海の平和を維持するよう呼びかける。国家の領土と主権は分割できないが、天然資源を分かち合うことが可能である。世界には主権の争議ある海域と島嶼は少なくない。しかし、ヨーロッパ北海油田の開発は一つの成功例である。我が国が「東シナ海平和イニシアチブ」を提起するのは、関係国が争議を棚上げにして、多国間協力メカニズムを作り、東シナ海資源の共同開発をはかるためである。また連携の範囲を生態保護、海上救助、犯罪の取り締まりなどに拡大し、関係国の努力によって、東シナ海を「平和と連携の海」にしたいと切望している。 馬英九総統は9月7日午後、彭佳嶼を視察し、重要談話を発表すると共に、「東シナ海平和イニシアチブ」推進綱領を発表した。以下はその全文である。 東シナ海情勢への懸念が次第に高まっていることに対し、「領有権は中華民国にあり、争議を棚上げ、平和・互恵、共同開発」の原則に基づき、馬英九総統は2012年8月5日に「東シナ海平和イニシアチブ」を提起し、関係各国に呼びかけを行った。「東シナ海平和イニシアチブ」の効果と影響を深化させるため、この推進綱領を提起するものである。 一、推進のステップ 「東シナ海平和イニシアチブ」の推進は、2段階に分ける。説明は以下の通り:二、主要テーマ (一)漁業:二国間と多国間の漁業会談および、その他の漁業協力交流を開き、漁業協力と管理メカニズムを構築する。三、推進目標 中華民国政府は国際社会における「ピースメーカー」として、「東シナ海平和イニシアチブ」および推進綱領を提起し、関係各国が「対抗を話し合いへと変える」「臨時的な措置により紛争を棚上げする」方法を採り、地域の平和と安定を維持していくよう希望している。長期的には、現在ある「台湾と日本」「両岸(台湾と中国大陸)」「日本と中国大陸」3組の二国間対話をより一層進め、多国間協議へと邁進し、東シナ海の平和と協力を実行する。 台北で『台湾通信』を発行している早田健文氏の掘り下げたインタビュー記事がある。 「東シナ海における漁業に関する台湾での報道について」 [交流協会]2012/9/13
「交流協会を通じた台湾の皆様への玄葉外務大臣のメッセージ」 [交流協会]2012/10/5
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続編:
尖閣問題と日台関係(2012年10月)
馬政権は尖閣諸島問題で中国と連携しない(2013年2月) OGASAWARA HOMEPAGE |
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