活動報告

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国際日本研究センター 国際日本語教育部門主催 文法・語用と教育シリーズ 第5回研究会 (2016年8月25日)


 国際日本語教育部門「文法・語用と教育シリーズ第5回研究会」として、本学の交流協定を締結したベルリン自由大学における日本語教育について、城戸寿美子先生(ベルリン自由大学日本語講師・本学ポルトガル語科卒業)から報告を頂いた。
国際日本語教育部門では、2009年より、交流協定大学であるリーズ大学・北京大学・上海外国語大学との連携で、国際日本語学習者コーパス構築・誤用検索サイト開発プロジェクトと誤用研究を行い、本センターHPの刊行物及びオンライン・リソースにてその成果を公開発信しているが、2016年度より、ベルリン自由大学からも日本語学習者コーパスの提供を受け、日本語習得研究・誤用研究を連携して行うことを予定している。
また、研究発表「相互参照型日本語・英語・中国語学習者コーパス誤用研究からみえる日本語の "無界性(unboundedness)」(東京外国語大学 望月圭子)は、本センターHPオンライン・リソースにて公開している「日本語・英語・中国語学習者コーパス誤用検索サイト」https://ngc2068.tufs.ac.jp/corpus/を用い、相互参照型日本語・英語・中国語学習者誤用コーパスから実証される日本語の「無界性」についての研究発表である。
発表の概要は、日本語母語話者による東外大英語学習者の誤用のうち、「空間概念」を表す前置詞'in/on/at'間の誤用に焦点をあて、日本語には、「~内(ナイ)」(車内、機内、学内)、「~の中(なか)」(電車の中、飛行機の中、学校の中)、「~の奥」といった曖昧な空間表現が多いため、AT(点)、ON(平面)といった空間認知の習得が上級英語学習者(TOEIC800点程度)でもむずかしいこと、「NP1のNP2」構造の影響を受けて、「ofの過剰使用」が卓越し、移動事象の起点を表す"from"や未完結事象に用いられる"for"の習得が困難であることを論じた。また、日本語母語中国学習者コーパスにおける誤用についても、<一個yige>という、完結事象に必要な個体化機能をもつ限定詞(determiner)の非用が卓越しているのに対して、英語母語話者による中国語学習者コーパスにおいては、過剰使用がみられるという対比が観察され、日本語における「無界性」が、言語習得においても影響していることを実証的に論じた。
本発表の内容は、本センターHPの刊行物『日本語学習者の母語・地域性をふまえた日本語教育研究とウェブ辞典構築』(ISSN 2188-5087)に収録されている二論文「『東京外国語大学英語上級学習者コーパス』における前置詞の誤用類型:―日本語母語話者・中国語母語話者英作文の対照」(望月圭子・ローレンス・ニューベリー=ペイトン)、「英語・中国語からみた日本語の無界性:複合動詞と空間認知」(望月圭子・申亜敏)に詳しい。(望月圭子)

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ポスター (PDFファイル)

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