活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

第6回ワークショップ「依頼行為の対照研究-日本語母語話者と中国人日本語学習者-」

日時:2014年12月11日

発表者:孫楊氏(中国・揚州大学准教授、東京外国語大学外国人研究員)
会場:東京外国語大学 研究講義棟1階113室
    

相手に負担をかける依頼行為は、その表現や方法にバラエティがあり習得が難しいことから、語用論研究で頻繁に取り上げられるテーマである。孫氏は、かつてご自身が経験した依頼行為についての苦い経験から、依頼に関する研究を始めたという。

発表内容は、依頼場面における言語使用についての質問紙調査の分析結果、調査対象は、中国人大学生(中国在住者と日本留学生)、日本人母語話者、他の言語を母語とする日本語学習者、各100~150名の膨大なデータである。

調査項目は、負担の程度(ペンを借りる、自転車を借りる)、緊急性(急に気分が悪くなり病院に連れて行ってもらうよう依頼する)、話し手と聞き手の関係(教員に推薦状を依頼する)に注目したものである。分析結果には次のような特徴が見られた。

緊急性のある依頼では、日本語母語話者は「~て」形や「~てください」の使用が多かったが、中国人に学習者は「急に」などの副詞を使用して差し迫った状況を示す一方で「~ていただけませんか」のような丁寧な依頼表現の使用というアンバランスが見られた。また、談話構造では、依頼表現の前置きにおいて、日本語母語話者は、詫び表現(「すみませんが」、「申し訳ありませんが」など)が多いのに対し、学習者は注意喚起(「あのう」「~さん」など)の使用が多く見られた。さらに、母語話者は、学習者と比べて負担の程度に応じて依頼する理由の説明を行うことがわかった。

近年、依頼行為や依頼談話に関する調査研究は、ロールプレイやシナリオによるデータの収集が多く見られるが、質問紙調査は、日本語学習者の依頼行為に対する意識、依頼のストラテジーや依頼表現の形式の習得などを探れる点において有効である。当日の参加者は30名で市民聴講生を中心とするフロアと活発な意見交換が行われた。 (谷口龍子)

ワークショップ 写真 (PDFファイル)

ワークショップ ポスター (PDFファイル)

 English page