活動報告

Activity Reports

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『紐帯』としての日本語~「日本」を離れた日本語

日時:2014年10月30日(木)

報告者:谷口龍子氏(東京外国語大学)
    友常勉氏 (東京外国語大学)
    
会場:研究講義棟103教室

科研「<紐帯>としての日本語」の研究成果を基に社会言語部門主催で公開研究会を開催した。

谷口龍子氏は「『国語』としての日本語、日本語排除から継承日本語へ」のタイトルで台湾における日本語事情についての歴史社会的背景と、現地で20家族に行った「日本語補習校」についての調査結果を柱とした成果を発表した。調査対象の多くは母親が日本人というカップルとその子どもたちである。彼・彼女らの継承語獲得の戦略としてだけでなく、「ハーフ」である子どもたちと台湾で生きていく日本人女性たちの拠り所としての機能も補習校は持たされている。

この報告は言語継承があたりまえで、それができないことを問題視する視点だけにとらわれず、補習校をやめた人々にもインタビューをしている。

友常勉氏によるカリフォルニアを中心としたフィールドワークの報告は「日本語」の象徴性をさらに鮮やかにする。多くの日系三世の使用言語は英語であり、上の世代とのコミュニケーションや「日本」との関係においてのみ日本語が現れてくる。

日系アメリカ人は太平洋戦争中の強制収容に焦点があてられ、日本人側の身勝手な解釈でノスタルジックに語られてしまうこともあるが、決して「異境で日本を守る集団」ではないことがわかる。友常氏の報告は宗教と伝統文化を日系三世はどのように自分たちのものにしてきたか、についてまず語られるのだが、彼らなりの解釈と需要が投影されたものに作り替えられている。

公民権運動との関わりや、「アジア系」であることを見いだすという経験に、いまの日系人の精神的な生産活動の基盤を見いだしているようにも見える。(前田達朗)

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