活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

科学研究費シンポジウム 日本の「知」を考えるシンポジウム2013「グローバル化時代における「日本」の知を 考える:社会学・人類学・日本研究からの視座」(2013年12月27日)

主催:科学研究費補助金
基盤研究(C)「日本に関する知のフローを追う」課題番号23531110(研究代表:岡田昭人)
共催:東京外国語大学国際日本研究センター比較日本文化部門、国際連携推進部門


講演者:
苅谷剛彦氏(University of Oxford)
山下晋司氏(帝京平成大学・前東京大学)
Eyal Ben-Ari氏(キネレット大学)
高山敬太氏(ニューイングランド大学)
ましこ・ひでのり氏(中京大学)
井本由紀氏(慶應義塾大学)
岡田昭人氏、堀口佐知子氏、谷口龍子氏、市瀬博基氏(東京外国語大学)

日時:2013年12月27日(金) 10:00-17:00 会場:東京外国語大学アゴラグローバル プロメテウスホール

12月27日、プロメテウスホールにて日本の「知」を考えるシンポジウム2013「グローバル化時代における「日本」の知を考える:社会学・人類学・日本研究からの視座」が科研費基盤研究(C)(研究代表:岡田昭人)、国際日本研究センター共催で開催された。

3部構成のこのシンポジウムでは、第1部「グローバル化時代における『日本』の社会科学的知の構築とその流通」と題して、グレゴリー・プール氏(同志社大学)を司会に、岡田昭人・堀口佐知子(本学)の両氏、井本由紀(慶應義塾大学)、谷口龍子(本学ICJS)、Eyal Ben-Ari(Kinneret College on the Sea of Galilee)の 各氏から報告がなされ、ディスカッサントの高山敬太氏(University of New England)からの発題があった。第2部は苅谷剛彦氏(University of Oxford)からの講演「教育知、研究知のローカリゼーションと日本の大学」。そして第3部は市瀬博基氏(本学)の司会で、山下晋司(帝京平成大学)、苅谷剛彦、ましこひでのり(中京大学)、高山敬太の各氏によるラウンドテーブル「グローバル化時代の「日本」の知」。年末のあわただしい時期の開催であったが、豪華なメンバーから、すぐれた報告・講演・問題提起を聞くことができた。

グローバル化の波のなかで、学問領域全体において世界で「日本研究の減少傾向」が進行している。電子リソースが中国研究より少ないなどの物質的条件のみならず、ネイティヴ・インフォーマントとしての自己に安住している日本国内の日本研究・研究者の英語圏への発信の消極性が、とくに人文社会科学系においてしばしば指摘される。苅谷氏の言葉を借りれば、日本語という言語の特殊性のもと、卓越した翻訳能力や翻訳市場に規定されて、自己完結的な「日本」が出来上がってきた歴史は簡単には変わらない。ただし、輸入学問と日本語に集中するアウトプットなど、アカデミズムにおける「鎖国状態」は、今日の日本のアカデミアにおけるモビリティの停滞を生んでいる。それは日本政府のグローバル化の掛け声の一方で、簡単に解消されない現実である。こうした現実に対して、性急なグローバル化は問題の解決にはならないこと、さらに若手研究者の中短期の在外研究でもいいから、海外の大学で研究教育に触れる機会を増やすことが、実は日本の知と大学のグローバル化の近道であると、冷静に説く苅谷氏の発言には説得力があった。同時に、性急なグローバル化=英語化に目を奪われる現状を厳しく批判し、日本国内に存在する人文・社会科学系が課題にすべき諸問題のリアリティを説いたましこひでのり氏の発言も、価値あるものだった。総じて、大学を覆うグローバリゼーションの過熱ぶりを冷却するには十分なシンポジウムであったと思う。

参加者は40名弱だったが、これだけの質の高いシンポジウムを主催した関係者の労をねぎらいたい。

(友常勉)

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