活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

国際日本研究センター 対照日本語部門主催『外国語と日本語との対照言語学的研究』第11回研究会(2013年12月21日)

講演者:野田尚史氏(国立国語研究所、日本語学)
発表者:川上茂信氏(東京外国語大学、スペイン語学)、吉枝聡子氏(東京外国語大学、ペルシャ語学)
日時:2013年12月21日(土) 13:50-17:30
会場:東京外国語大学研究講義棟4階419室 (語学研究所 会議室)

川上氏はスペイン語動詞の法体系・時制体系にみられる、動詞形式と意味とのズレあるいは絡み合いについて発表された。未来形が純粋に時間的に未来のことを述べるだけでなく、未来あるいは現在の不確実性や推量の意味を帯びたり、過去未来形が過去の事態の推量や非現実の意味を帯びる表現になったりという現象が、多くの具体的な例によって示され、研究者(Alarcos1975、Veiga2008等)による捉えかたの違いも紹介された。

吉枝氏の発表では、ゴジャール・ワヒー語(イラン語派、パキスタン-ゴジャール地域)の能格構文の基本構造が示された後、実際の使用における格表示体系の(不経済なまでの)多様性が説明された。そして、ペルシア語からの影響下で主格構文へ移行したと考えられるタジク・ワヒー語のように、ゴジャール・ワヒー語も分裂能格性を一部に残しながらも主格構文へ移行する可能性もあるとされた。

野田氏は日本語学・日本語教育学研究を牽引しておられるが、もともとスペイン語専攻でいらして、日本語とスペイン語の対照研究(主題・ヴォイス、語順等)も進めておられる。今回は、両言語にみられる「とりたて表現」すなわち、「も、だけ、さえ」とそれぞれにほぼ相当する「también、sólo、aun」による表現を中心に両言語のとりたて表現についてまず紹介された。そして、日本語ではとりたて表現が使われる状況でもスペイン語ではとりたて表現が使われない例が示され、そのことから日本語とスペイン語を「高コンテクスト言語」と「低コンテクスト言語」という対立で捉えることの必要性が述べられた。

今回の研究会にも、本学教員・大学院生のほか学外の方々も含め30名ほどの参加者があり、活発な質疑応答や意見交換が行われた。次回の予定は、3月8日(土)である。

(早津恵美子)

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