活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

国際日本語教育部門主催 文法・語用と教育シリーズ「「みかん構文」「多重文法」岩崎勝一(UCLA)講」講演 会・研究会(2013年7月24・25日)

講演者:岩崎勝一氏(UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校 応用言語学教授)

「みかん」構文
日時:2013年7月24日(水)18:00-19:30
会場:東京外国語大学府中キャンパスアゴラグローバルプロメテウスホール

「多重文法」
日時:2013年7月25日(木)18:00-19:00
会場:東京外国語大学府中キャンパスアゴラグローバル3階プロジェクトルーム

国際日本語教育部門主催による文法・語用と教育シリーズの一環として、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校応用言語学科教授、岩崎勝一氏による講演会と研究会が行 われた。

講演会「みかん構文」(24日)では、日常会話でよく使われる定型構文"Ni1(だ)よNi2"(「みかんよ みかん」「おれだよ おれ」等)について構文文法、関連性理論、会話分析等により分析された。"Ni1(だ)よNi2"は述語文であり、Nにはどんな名詞も使われ、これらは繰り返される、「だ 」はNi2の後にはつけられない、二つのピークがあるかたまりとして下降調子で発話される、というイントネーション・パターンを持つなどの構造的特徴がみられる。また、この構文は、会話当事者間に大きな共有情報があることを前提とし、この前提は二人の間にintimacyが存在することも前提となる(implied premise)。さらに、その前提を考慮し、結論(implied conclusion)を引き出し、表明することを相手に要求し、相互理解を再確認させるという語用論的効力があることが明らかとなった。

研究会「多重文法」(25日)では、個人の中に複数の文法が存在する様子が談話分析を通して紹介された。「会話」はもっとも普遍的な言語の形であり、文法の基礎となっている。話し言葉(SG)と書き言葉(WG)は、独立して各個人の中で階層を成し、最終的に conceptural grammar として統合される。言語使用者は環境に応じどちらかの文法に頼りながら言語を産出していく。国会データの政治家や原爆被害者の談話データから、形式名詞「こと」や助詞「を」等の使用頻度を例に挙げ、SGとWGを同時にアクセスしながら話をしている様子が紹介された。

両発表ともに、膨大な会話データからこれまでに挙げられなかった特徴を見つけ出し、統語論、語用論に渡る言語理論を応用することにより、それらのメカニズムが解明されるという研究に年月を要した深い内容であり、理論研究と実証研究の同時進行の重要性をあらためて認識させられる研究発表であった。言語教育への示唆も多く、日本語教育における文型という概念についても再考の必要性を感じた。両日とも50名前後の参加者により専門的な質問が飛び交い充実した会であった。

(谷口龍子)

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