活動報告

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言語研究と教育シリーズ第二回研究会『中国語・日本語対照研究と日本語教育:量の表現』(2011年12月2日)

2011年12月2日に「中国語・日本語対照研究と日本語教育:量の表現」(於アゴラ・グローバル プロメテウスホール)が開催された。発表者は、張麟声氏(大阪府立大学:タイトル「中国語と日本語の数量表現の双方向習得研究」)と彭広陸氏(北京大学:タイトル「中国語と日本語の主観量表現の対照研究」)である。

張麟声氏は、記述研究の方法として対照研究が安直に考えられている点を指摘した上で、第二言語習得研究と言語研究それぞれにおける対照研究の重要性を主張された。第二言語習得研究では「規則発見型」の研究方法が主流であるが、張氏は、「仮設検証型」モデル(対照研究・誤用観察・仮説検証の三位一体の習得研究)による言語転移の扱いについて提案された。つまり、最初に対照研究によって言語転移の可能性を見出し、次に学習者の産出言語を観察し、習得状況に関する仮説を立て、最後に様々な調査を通して検証を行うというものである。その例として、日本語と中国語の数量表現を挙げ、構文的位置の相違により、日本語で副詞的に使われる基数詞表現が、中国語では形容詞的に使われることから、言語転移が見られる点を指摘された。また、言語研究のための対照研究を、(1)記述を進めるための「先例参照型」(2)現象の記述を進めるための「難局打開型」(3)類型的特徴を捉える「類型設定型」(4)普遍性を追求するための「本質追求型」の四つに分類された。

彭広陸氏は、日本語と中国語の主観的(評価的)な表現について、140枚に上る資料により、夥しい例を挙げられ、日中両語の対照研究の緻密な分析例を示された。中国語の主観量の多数量を示すものは「充足型」("足有る" "不下" 等)「到達型」("达到" "多达" 等)「超過型」("超" "过" 等)「接近型」("近" "接近" 等)「変化型」("已经")「取立型」("整整" "足足" 等)「意外型」("竟然" "居然" 等)などに分けられる。また、少数量を示すものには、「不充足型」("不足" 等)「未到達型」("不到" 等)「未超過達型」("不过" 等)「限定型」("仅" 等)「描写型」("寥寥" 等)に分類される。一方、日本語では、「も」+肯定形により多数量、「も」+否定形により少数量が示される。その他、多数量としては、「到達型」(「登る」「及び」等)「超過型」(「突破する」)「範囲型」(「(に)わたる」)少数量では、「不充足型」((に)満たない)「取立型」(「しか~ない」等)「限定型」(「わずか」等)に分類される。また、中国語を母語とする日本語学習者にとって連体修飾(例:「約30パーセントもの夫婦」)の形の習得が難しい点も指摘された。

当日は、20名ほどの参加者が集まり、中国語を母語とする日本語学習者の言語転移等に関する質疑応答が交わされた。

(谷口龍子)

研究会の 写真 (PDFファイル)

研究会の ポスター (PDFファイル)

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