活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

「外国語と日本語との対照言語学的研究」第4回研究会

日時:2011年7月16日(土)15:15~18:00
場所:東京外国語大学 語学研究所 (研究講義棟4階419号室)

発表者・講演者と題目
上田広美氏(東京外国語大学)
研究発表「日本語との対照によるカンボジア語教育の試み」
片岡喜代子氏(九州大学)
研究発表「否定関連現象から見た日本語とスペイン語」
生越直樹氏(東京大学)
講演「韓国朝鮮語と日本語の対照研究-似ているようで違う-」

上田氏からは、本学外国語学部カンボジア語専攻における、主として1~2年次のカンボジア語教育の理念とそれに基づく長年の教育実践について、具体的な例を詳しく紹介しながら報告していただいた。カンボジア語は英語などと異なり実用的な面からの教育目標はたてにくい言語といえるが、それ故にかえって、カンボジア語の学習を通して、言語の分析力を高め、ひいては分析的なものの見方を身につけることが目指されており、かなり成功しているようにうかがえた。参加者からも、このような方針のもとで学生が学ぶことは、母語である日本語の仕組みにも目を開かせることになり興味深く感じたという意見があった。片岡氏は、日本語の否定表現について『日本語否定文の構造:かき混ぜ文と否定呼応表現』(2006年 くろしお出版)という研究書をまとめられ、また日本語とスペイン語の否定表現の対照研究も精力的に続けておられる。本発表では、一連のご研究の背景や理論的枠組みを紹介してくださるとともに、日本語とスペイン語の否定文の具体的な例をもとに、統語構造における普遍性、統語構造における個別特質と語彙特質という観点から種々の否定文の理論的な分析がなされた。たとえば日本語の例として、「私は食べ物何もなしで一日過ごした。」→「*?私は水しかなしで一日過ごした。」→「?私はろくな食べ物なしで一日過ごした。」という文が少しずつ不自然になっていることなど考えさせられた。終始活き活きとした大阪弁で楽しそうに説明してくださり、難しい統語理論にも少し近づけた感じがした。生越氏は、韓国朝鮮語と日本語の対照研究、韓国朝鮮語の教育に長く携わっておられる。両言語の類似性はしばしば指摘されることだが、両言語には似ているところがたしかに多いものの実は違っている点も少なくないとして、いくつかの現象がとりあげられた。議論は主として、両言語のいわゆる間接受動文の許容範囲のずれ、属格助詞(日本語の「の」とそれに相当する韓国朝鮮語)の守備範囲の微妙な違いについて展開された。参加者には韓国朝鮮語の母語話者も少なくなく興味深い質問が寄せられた。

今回の研究会にも、本学教員・大学院生・学部学生のほか学外の方々も含め40名ほどの参加者があり、活発な質疑応答や意見交換が行われた。

(早津恵美子)

研究会の 写真 (PDFファイル)

研究会の ポスター (PDFファイル)

 English page