ワークショップ開催報告

「<境界>観念―その多義性と多様性」

2019年2月10日(日) 13:00~20:30
東京外国語大学 海外事情研究所 会議室(427)

報告:
藤井欣子
「農民たちの境界意識―世紀転換期の領邦シュタイアーマルクを例に」

小田原琳
「境界を実体化する暴力を巡って」

衣笠太朗
「第一次世界大戦後のオーバーシュレジエン/グルヌィシロンスクにおける分離主義運動研究のための基礎作業:national indefference、シュレージエン人、複合国家の観点から」

古川高子
「登山家による国境の思想」
 
鈴木珠美
「国境地域における住民の政策実践とその論理―南ティロールの国籍選択を例として」

秦泉寺由紀
「境界の透過性の検証に向けて―南ティロールの事例」

コメント:
山崎信一
鈴木健太

主催:科学研究費補助金(基盤(B))近現代アルペン-アドリア・ボーダーランドにおける国境編成と住民論理のポリティクス
共催:海外事情研究所


ワークショップの概要
本ワークショップでは、7本の報告を、各報告のテーマの時系列順に行い、本科研におけるキー概念であるborderland, national indifferenceが各報告でどのように扱われているか、分析されているかを概観し、その内容や解釈、変遷を比較検討した。19世紀末、第一次世界大戦時、戦間期、第二次世界大戦時、戦後、現在と順に報告は進んだ。(各報告のタイトルは別に示す)こうすることで、ナショナリズムの興隆や国民国家形成過程において、様々な差異が境界として立ち現われ、多様な領域において―私的領域、階層、ジェンダーにおいて―、言語集団や大衆化した社会における政治的差異として現れたり、地域やそこにくらす住民を分かつ生活の差異が社会的な単位となりうる可能性を示した。さらに、国家による国境地域の住民に対する国民の統制策は強力になっていったことが示された。現在においては、ヨーロッパやアフリカといった区分すら意味をなさず、移民に代表されるように圧倒的な透過性を示すに至ったことが浮かび上がった。

コメント
境界地域borderlandの定義:何を持って境界とするか。ある程度の定義必要。
National indifferenceに転機があるとすれば、第一次世界大戦か。戦争によってどのようにnational indifferenceが変容したかを検証する必要あり。
単線的でも不可逆的でもない国民化の過程があったことが示された。
バルカンを例に、国民化の指標への問い。
国民の境界とは別の境界が見えてくる可能性および境界のもつ多義性の指摘。
National indifference 論のインパクトを整理する必要性の指摘。

なお、鈴木鉄忠氏(オブザーバー参加)も文章を寄せた。そこでは、有効な研究手法として、1「他者化」と「秩序づけ」、2「スペクタクルとしての境界」という2つの論点を挙げている。前者は、B/ordering, ordering理論をもとにし、実地の住民による歴史的体験を綿密に分析することが、境界化の権力に対する住民の戦略的実践のあぶりだしに寄与可能とする。後者については、精査は要するが、本課題の射程を広げる分析概念という面で有効とする。鈴木氏の指摘は、課題に適合する研究手法を示唆し、今後の展望を示すものであった。

お知らせ ワークショップ開催のお知らせ

「<境界>観念―その多義性と多様性」

2019年2月10日(日) 13:00~
東京外国語大学 海外事情研究所 会議室(427)

報告:
衣笠太朗
「第一次世界大戦後のオーバーシュレジエン/グルヌィシロンスクにおける分離主義運動研究のための基礎作業:national indefference、シュレージエン人、複合国家の観点」

小田原琳
「境界を実体化する暴力を巡って」

秦泉寺由紀
「境界の透過性の検証に向けて―南ティロールの事例」

鈴木珠美
「国境地域における住民の政策実践とその論理―南ティロールの国籍選択を例として」

藤井欣子
「農民たちの境界意識―世紀転換期の領邦シュタイアーマルクを例に」

古川高子
「登山家による国境の思想」

コメント:
鈴木健太
中澤達哉
山崎信一

主催:科学研究費補助金(基盤(B))近現代アルペン-アドリア・ボーダーランドにおける国境編成と住民論理のポリティクス
共催:海外事情研究所


2018年度第3回研究会

2018年12月12日(水) 14時30分~16時30分 於 東京外国語大学海外事情研究所

2018年度第3回研究会の主な議題は、2019年2月に開催予定のワークショップについてであった。同ワークショップでは、境界(border, borderland概念および、”national indifference”の分析概念を取りあげ、その有効性と研究がもちうる展望を検討することとした。

2018年度第2回研究会

2018年9月30日(日) 16時~18時 於 新宿

2018年度第2回研究会では、これまでの研究の振り返りと今後の方向性について話し合った。また、各自の研究の進捗状況や、境界地域を対象にした複数の分野の研究に関し情報交換を行った。これを踏まえ、年度末に予定しているワークショップの方向性を定めた。

2018年度第1回研究会

2018年5月19日(土) 15時30分~17時30分 於 新宿

2018年度第1回研究会では、研究動向についての情報交換と現段階での課題の洗い出しを行った。さらに、それまでの研究の進展を確認し、今年度遂行予定の計画について話し合った。
とくに、当初より本科研のキー概念であったnational indifferenceおよび境界概念に関し、各自研究を振り返り、ボーダーランド/ボーダーについてどのような暫定的結論、見込み、将来的な展望がありそうかを検討するため、年度末にワークショップを開催することを決定した。
今年度の研究遂行にあたり、有効と思われる研究動向(社会学におけるlinguistic landscapeなど)について情報を共有し、課題図書を挙げた。

国際ワークショップ開催報告

境界地域における歴史と記憶―アルペン・アドリア地域を中心に―

共催:東京外国語大学海外事情研究所

趣旨説明:戦争と国境再編、国家に対する<無関心>、移動なきトランスナショナリティ、記憶のポリティクス。様々な課題を明らかにするために境界地域の経験から何を学ぶか?

2018年2月17日(土)
東京外国語大学海外事情研究所(研究講義棟427)

第1部 映画上映と解説11:00-13:00
映画:『ピラン/ピラーノ』(ゴーラン・ヴォイノヴィッチ監督、スロヴェニア、2010年)[日本語字幕]
解説:山崎信一(東京大学)
映画解説概略:監督のプロフィールに関する解説、映画の登場人物の民族的背景、ハプスブルク帝国期から現代までのピランと沿海地域の現代史に関する解説、犠牲と受難の象徴としての「鍾乳穴」に関して解説が加えられた
クラブヤン教授より映画に対するコメント(抜粋):映画の使用言語について指摘。
クラブヤン教授へフロアより質問。北部アドリア地域の歴史と伝統に関する質問が寄せられた。
例:クロアチアの海賊のような中世の伝統は、この地域で受け継がれているのか?

第2部 報告とパネルディスカッション 14:00-17:00
報告:ボルート・クラビヤン 「東西間の記憶のボーダーランド:20世紀のアドリア海北部地域」
パネル・ディスカッション:ボルート・クラビヤン、鈴木鉄忠、逆井聡人、鈴木珠美 司会:小田原琳

クラビヤン氏報告概略
ボルート・クラビヤン氏の報告は、アドリア海北部ボーダーランドにおける「国家に対する無関心(state indifference)」に焦点を当てている。これは、「国民に対する無関心(national indifference)」の概念を拡大したものである。講義においては、ハプスブルク帝国期から現在までの北部アドリア海地域における記憶の場を分析した。トランスナショナルな「記憶景観」のさまざまな事例に焦点をあてることにより、現地に住む住民の間では、国家に対する帰属意識に対し、曖昧さや自発的反応が見られたことが明らかとなった。

パネルディスカッションと討論の概略
三人の研究者がクラビヤン氏の講義に対してコメントを加えた。
日本とイタリアのボーダーランドを研究フィールドとする社会学者の鈴木鉄忠氏は、クラビヤン氏の講義の理論的基礎に関してコメントを加えた。フェルナン・ブローデルの「長期的持続」論を引用し、質問を行った。
オーストリアとイタリアのボーダーランドの現代史を研究する鈴木珠美氏は、国家に対する無関心と国民に対する無関心の相違に関してコメントを加えた。別のイタリアのボーダーランドである、戦間期の南ティロールの例を挙げながら、イタリア・ファシスト体制によって行われた同化政策の強さに関して質問した。
アジアにおける比較文学を研究する逆井聡人氏は、比較の対象として、チェジュ島(韓国)、台湾、沖縄の事例を取り上げた。これらの地域におけるポスト冷戦期の状況を北部アドリア地域の事例と比較する中で、ローカルな記憶を再構成しようとする人々の運動が、国家権力に対して脆弱性を持つのかを質問した。
その後30分の討議を経てワークショップを終えた。

お知らせ 国際ワークショップ 境界地域ボーダーランドにおける歴史と記憶―アルペン・アドリア地域を中心に

2018年2月17日(土) 東京外国語大学海外事情研究所(研究講義棟427)

第I部 映画上映と解説 11:00-13:00
映画上映:『ピラン/ピラーノ』
解説:山崎信一

第II部 報告とパネルディスカッション 14:00-17:00
報告:ボルート・クラビヤン 「東西間の記憶のボーダーランド:20世紀のアドリア海北部地域」
パネル・ディスカッション:ボルート・クラビヤン、鈴木鉄忠、逆井聡人、鈴木珠美 司会:小田原琳

主催:科研基盤(B)「近現代アルペン―アドリア・ボーダーランドにおける国境編成と住民論理のポリティクス」
共催:東京外国語大学海外事情研究所

詳細はこちらをご覧ください

2017年度第4回研究会

2017年11月3日 於 東京外国語大学 府中キャンパス

出席者:小田原、秦泉寺、鈴木、藤井

研究会課題:Tara Zahra "Imagined Noncommunities"(Slavic Review, 2010)を読む
本科研課題の基礎および出発点となったnational indifference理論につき、最新の研究成果(理論ならびに実証例)との比較検討を交えて議論した。とくに、分析概念としてのindifferenceはnationalな面にとどまらず、political indifference等へも拡張可能だとするZahraの展望につき、検証の手段や個別研究テーマに基づく実例について検討を加えた。

2017年度第3回研究会

於 東京外国語大学 府中キャンパス

出席者:小田原、鈴木、藤井、古川

年度内に実施予定の国際ワークショップについて打ち合わせ

2017年度第2回研究会

8月9日 於 東京外国語大学 府中キャンパス

報告者:鈴木珠美

出席者:小田原、秦泉寺、鈴木、藤井、古川

鈴木の報告は、第二次世界大戦前後の南ティロールにおける国籍選択と移住に関するものであった。ナショナリティと合致しない国籍選択行動と移住形態が見られることについて、その原因を不動産所有者など移住しにくい職種に着目して析出を試みた。これに対し、ファシズム、ナチズム体制下の人口配置との関連、また、報告内で分析例とした小都市の地域性と国籍選択・移住の関連について議論が行われた。

2017年度第1回研究会

2017年5月3日 於 下北沢

出席者:小田原、秦泉寺、鈴木、藤井、古川

内容
年度計画打ち合わせ
年度内に開催予定のワークショップ(企画、調整)
研究会の予定調整

2016年度第3回研究会

「20世紀初頭のスロヴァキア語印刷メディアによる「国民化」の展開 ―国民的フレームとエトノス」

2月18日(土) 於 東京外国語大学 府中キャンパス

報告者:井出匠

出席者:小田原、秦泉寺、古川

井出匠氏による報告は、1980~90年代にかけての近代主義的国民形成論とそれに対する批判を踏まえた「国民的フレーム」および「エトノス」という視座から、20世紀初頭のスロヴァキア国民主義運動の展開を、種々のスロヴァキア国民主義系新聞、とくに『スロヴァキア週報』に照準して検証するものであった。

これをうけて、以下の点について議論および検討した。
・「国民化」、(国民的)「フレーム化」と「国民への無関心」(national indifference)の位相
・20世紀初頭のスロヴァキアにおける印刷メディアおよびオーディエンスの性格
・「国民」カテゴリーの生成過程における「旦那衆」、「チヴァフ」等カテゴリーの性格、役割
・ハプスブルク君主国内における他地域とスロヴァキアの比較
・カトリック人民党、「ルター派」等「宗教的フレーム」の性格、「国民的フレーム」との位相

2016年度第2回研究会

「国境地域のナショナリズム―イタリア東部国境の民族問題に関する社会学的考察」

12月17日(土) 於 東京外国語大学 府中キャンパス

報告者:鈴木鉄忠(中央大学)

出席者:小田原、藤井、鈴木

鈴木鉄忠氏による報告は、20世紀の二度の大戦後、政治的境界線の引き直しによって生じた民族問題について、社会学者ブルーベイカーの「三者関係モデル」を トリエステ、イストリアの事例に応用して検討するものであった。

これをうけて、以下の点について議論および検討した。
・ 国家としてのイタリアの脆弱性。
・イタリアの帝国主義的野心と19世紀的な帝国主義との相違。
・イタリア・ファシズムの民族同化政策の特質。
・ブルーベイカーの三者関係モデルとイタリア東部国境の事例との比較検討。
・国境地域での共生の形成と実践。

2016年度第1回研究会

「国境地域における歴史認識をめぐる戦略」

2016年10月22日(土)於 中野

提題者:秦泉寺
出席者:古川、小田原、鈴木、藤井

・帰属の不安定性と住民構成のエスニックな多様性から対立の可能性をはらむボーダーランドにおいて、対立から和解へと移行しつつあるプロセスを考える
・和解への否定的作用をもつ支配的なナショナル・アイデンティティを「読み換える」という戦略
という趣旨の報告に対して、
・南ティロールにおける対立(とくに60年代)の歴史的・経済的背景
・地域的「主体」の歴史的推移
・トリエステと南ティロールの歴史社会的比較の可能性
・オーストリアの戦後自己認識、スロヴェニアとの「和解」との共通性
などが議論された。

その他、今年度の成果報告の執筆、研究の進行状況等についての確認が行われた。

国際ワークショップ開催報告

 

国際ワークショップ "Boundary Demarcation and Local Politics in the 19-20 Centuries in Alpen-Adriatic Borderland" (March 11. 2016, European University Institute) を開催しました。
(3月27日 ワークショップ内容の詳細を追加しました。)

International Workshop
Boundary Demarcation and Local Politics in the 19-20 Centuries
in Alpine-Adriatic Borderlands


Program
Opening Remarks
Rin Odawara (Tokyo University of Foreign Studies (TUFS, Japan),
Visiting Fellow of European University Institute)

Presentation Part I: Division and Integration through the War
Rin Odawara (TUFS)
Violence against Women and Racist Discourse in WWI in Italy
Tamami Suzuki (TUFS)
"The Options Agreement" (1939) in South Tyrol and the Reaction of Local Inhabitants
Yuki Shinsenji (Wayo Women's University)
The Memory of Resistance in Alpine-Borderland: 70th Anniversary of Liberation in Bolzano

Presentation Part II: Liberalism, Nationalism and liberal-Nationalism
Yoshiko Fujii (TUFS)
Liberalism for German Farmers in Lower Styria at the End of the 19th Century:
In the Case of the Bauernverein Umgebung Marburg

Takako Furukawa (TUFS)
Continuity between Liberalism and Nationalism in Interwar Austria:
From the Viewpoint of Alpine-Tourism


Comments
Pieter Judson (European University Institute)
Lucy Riall (European University Institute)
Pavel Kolář (European University Institute)

Discussion

Closing Remarks
Pieter Judson (EUI, Head of Department)


Organized by : Research Project
“Boundary Demarcation and Local Politics in Modern and Contemporary Alpine-Adriatic Borderlands”
Department of History and Civilization, European University Institute, Florence, Italy

*写真はこちらこちらです。(2016年3月30日追記)

国際ワークショップ開催のお知らせ

Boundary Demarcation and Local Politics in the 19-20 Centuries in Alpen-Adriatic Borderland
(March 11. 2016, European University Institute)

詳細はこちらのURL、またはこちらのポスターをご覧ください。

2015年度第4回研究会

2016年1月23日(土)於 九段下

出席者:古川、秦泉寺、藤井、鈴木

・ボーダー/ボーダーランドに関する研究動向の紹介、検討。(秦泉寺)

・科研課題にかかる各自の研究報告。
古川:戦間期オーストリアのアルピニズムにみる、リベラリズムとナショナリズムの連続性
秦泉寺:・第二次大戦後北伊のボーダーランド比較(Trentino –Alto AdigeとVenezia Friuli Giulia)
    ・アルペン=ボーダーランドにおけるレジスタンスの記憶
藤井:19世紀末下オーストリアにおけるドイツ系農民のリベラリズム―マールブルク辺境農民境界を例に
鈴木:ティロール南部における国籍・移住選択―住民による移住選択の経過を中心に―

第4回研究会では、ボーダー/ボーダーランドに関する研究動向を検討し、 そうした動向と本課題の関連性について議論した。 さらに、ボーダーランドの個別事例から、 リベラリズムとナショナリズム運動の ボーダーランドにおける展開、行政制度、 およびナショナルな記憶の形成のされ方について議論した。

2015年度第3回研究会

「踊共二編『アルプス文化史―越境・交流・生成(昭和堂、2015年)』をめぐって」

2015年11月7日(土)於 新宿

提題者:古川
出席者:秦泉寺、鈴木、藤井

・さまざまな境界線が走るアルプス地域を、辺境・周縁としてではなく、各種の交流の最前線としてのボーダーランドとして位置づける意味
・スイス、オーストリアといった現状の国民国家的な枠組みを前提とすることの困難
・交流・移動の実態を明らかにすることの重要性
・複数言語地域、ボーダーランドで、ネーションを立ち上げるあり方
などを議論した。

2015年度第2回研究会

「パメラ・バリンガー『国家に抗する多文化主義 イストリアからの教訓』をめぐって」

2015年8月5日(土)於 東京外国語大学海外事情研究所

提題者:小田原
出席者:鈴木、藤井、古川、秦泉寺

(1) アドリア海最北部に位置し、国境が繰り返し変更されてきたイストリア半島の歴史的経験から、多文化・多民族共存に向けた可能性を探るバリンガー論文をめぐって
・旧ユーゴスラヴィアの事例にみられる多文化・多民族共存の困難
・ユーゴのイタリア系マイノリティから生まれ、1988年の「グループ88」に端を発する政党「イストリア民主会議(IDS-DDI)」の性格や特徴
・ヴェネツィア共和国、オーストリア=ハンガリー帝国下での多文化主義の系譜
・ユーゴスラヴィアとイタリアのトリエステをめぐる領土問題
・「イストリア性」
・ユーロリージョン、クロアチアのEU加盟をめぐる諸問題との関わり
などの内容を確認した。

(2) 以上に基づいて、
・都市部と後進的後背地といった、ネイションによる区分けとは異なった区別
・当該地域における排斥、分断のラインの引かれ方の多様性
・「多文化」を掲げながらも、その多元性がイタリアとクロアチアに限定されがちな「イストリア性」の困難
・イタリアの「未回収地回復運動(イレデンティズモ)」からみたトリエステの位置づけ
・オーストリア=ハンガリー帝国とヴェネツィア共和国の多文化主義の相違
・イストリア半島の事例と南ティロール地域の事例との比較
などを議論した。

2015年度第1回研究会

「ピーター・ジャドソン『複数言語は多文化社会を意味するか?』をめぐって」

2015年6月6日(土)於 新宿

提題者:秦泉寺
出席者:鈴木、藤井、古川、小田原

(1) 19世紀末から20世紀初頭にかけて、チェコ、ドイツ、スロベニア、イタリアのナショナリストが複数言語地域で展開した社会的・文化的境界を創造するための活動をめぐるジャドソン論文について、
・各言語ナショナリズムの活動と戦略の差異
・働きかけの対象
・ナショナリズムの浸透における階層間の差異
・主要な活動分野である教育、学校システムにおける戦略 社会上昇の資源としての教育+無料の食事、衣料品等
・複数言語+文化的には比較的均質な地域社会に暮らす農民が、ナショナリストによって、ある時は「無力」ある時は「無関心」と理解されてゆく
・第一次大戦以降、農村の人々は自分たちの要望を、国家から求められる言語で表現することを学ぶ(ナショナリズムの戦略的利用)
などの内容を確認した。

(2) 以上に基づいて、
・いわゆる「公定ナショナリズム」の、下からの利用を促進したエコノミーはなにか。戦争の役割。
・下からのナショナリズム利用の選択の結果について。ジャドソンは第一次大戦までの時代しか扱わない。
・多文化帝国ハプスブルクにおいて、大衆政治を目指す新興勢力としてのナショナリスト政党が、帝国のゆるやかな一体性に対抗する戦略を採用
・ナショナリズム、ナショナリスト=ブルジョアの下辺からの社会上昇手段
・経済的利益を選ばない=ナショナリズムを利用しない人々はいたか。
などを議論した。