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微量問題 ー微量・複合・長期ー ふたたび

拙ブログで2016年4月に、「微量問題」すなわち「微量・複合・長期」で「ただちに健康に影響はない」といわれる問題について取り上げた。その時のテーマは水俣であり、視野に入れていたのは放射能であった。現代ではもう一つ、PFOA、PFOSの問題がある。これについては、すでに今年のはじめ頃、諸永裕司さんの『消された水汚染:永遠の科学物質』が評判となり、当方もおくればせに東京、とりわけ多摩地方の水汚染の実態におののかざるを得なかったのだが、それよりもっとずっと早くにアメリカでこの汚染の問題に取り組んだ弁護士ロブ・ビロットがおり、かれを主人公とした映画『ダーク・ウォーターズ:巨大企業が恐れた男』(トッド・ヘインズ監督、2019)があった。この映画を先日、ようやく下高井戸シネマで観ることができた。
副題にもあるとおり、この物質を微量かつ長期にわたって垂れ流してきたのは、巨大企業デュポンである。そこに巨額の富や権力者、有力者、幾多の雇用、それにぶら下がる数々の人々や利益があった。こうした巨大な構造に立ち向かうとき、人はどこまでも失い続ける。観ていて辛くなるような話だが、映画の訴えかけは真摯に伝わってくる。いまなおテフロンやフッ素加工物が普通に使われているのは何とも居心地が悪く不気味だが、ことほどさように、微量問題は、現代世界の問題の核心である。

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2022年5月18日 22:12に投稿されたエントリーのページです。

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