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2016年5月 アーカイブ

2016年5月 9日

時代は意外とライフ・ヒストリーに照準している

某@+誌の最新号を編集Wさんが送ってくださった。わーい、ありがとうございますー。あけてみたらライフ・ヒストリーの特集で、さっそく読ませていただいたらたいへんおもしろい。責任編集協力の岸さんの「タバコとココア」などなど、ジンと心にくるものがいくつもある。これは、ウチのゼミ生諸氏にも大いに関心あるところだろうと思い、近々彼らとこれを読む機会をもとうかなどと考えた。
で、本日GW明けていつもの506Bでそんなハナシをふってみたら、おお!物知り院生Nくんが、「その雑誌、もう出てるんですか?買おうと思ってた」と!そうだったんですねー。いやいや、時代はライフ・ヒストリーですか。社会学というディシプリンは、当方にとっては近いような遠いような存在だが、ゼミ生諸氏にも社会学に関心の深い人びとが何人もいる。その一分枝としてのライフ・ヒストリーは、数量的な手法とともに(いずれも社会調査ってヤツで、質的とか量的とかの修飾語をふる)重要だが、というよりは、ひとと接したりひとが発する言葉を感じ取ったりするときのカンどころである。聞き手の心に残った言葉が書き起こされ、読み手の心にもう一度響く。その温かさは、「正義」から適正なキョリをとるために大切な感覚であるに違いない。

2016年5月15日

44年目のプレ・イベント

昨日は目取真俊さんの講演会@法政大学を聴きに行ってきた。その前の用事を途中で失礼してなんとか開場5分後に到着したが、広めの教室にびっしりと人が入って(270人ぐらい来場したそうだ)、最後列の隅っこの席をやっと確保した。すでにご本人が講演席に座っていらしたので前に移動してちょこっとご挨拶していたら、座席前列あたりから呼びかけられた。振り向けば、あっっ!、わがデモ友のみなさんではないか!!!久しぶり~と再会を喜び合い、その素晴らしい座席の一角を空けてもらって講演を聴くことができた。ありがとうございます~~。
お話しはとてもよく整理されており、この2年ほどの辺野古の状況を映した貴重な動画や(ご本人が身体を張って撮影し続けているものだ)、このたびの不当逮捕の一件など最新の話しも聴くことができて、とてもとてもよかった。企画してくださった方々に感謝である。質疑の時間も十分とってあってよかったが、メディア関係者の質問の時間を分けてふんだんにとってあったのは、主催者の意図か講演者の要望か、うーん、どうだったのだろうか、ともあれ目取真さんはひとつひとつ丁寧に答えていらした。彼の知性の鋭さや誠実さがいっそう光った。明けて本日5月15日は沖縄の施政権移行から44年目の記念日であったが、この日にあえて東京にいることを(昨晩は宿泊せざるをえなかっただろうから)選んだのは、目取真さんには相当大きな決断であったと思われる。そうしてよかった、と思っていただけるような時間であっただろうか。
講演会が終わって、デモ友たちと久しぶりに夕飯。「夏休みにカヌー隊に参加しようか」などと大いに盛り上がった。目取真さん曰く、19歳から70歳代まで老若男女なんぴとでも可能。ただし身体も心も強くなければムリなので、第一の準備は腕立て伏せとのこと。ははは、これが一番キビシイか...

2016年5月18日

ドキュメンタリーな日々

昨日の放課後は某N放送局の研究所の上級研究員のMさんにお越しいただき、ゼミ生を中心とする若者向けに特別授業のようなセミナー講演をしていただいた。漫才の手法を軸とするドキュメンタリー論で、若者のみならず当方にとってもたいへん興味深く、また勉強になった。セミナー後は某多磨酒場(いつもの寄り道から10mほど移動した場所にある)にて謝金代わりの一献、いや質疑応答の時間をもうけた。若者たちがMさんを取り囲み、あれやこれやと話しかけたり、お話しをうかがったりしていたのを、とてもとても嬉しく拝見した時間だった。うるさくするだろうからお隣のグループに申し訳ないなあ、と到着時に心配して目を向けると、あららっ!隣はなんとわれらがグロスタ仲間M先生のゼミコンパ(死語)集団ではないか!こーいう偶然ってあるんですねー。いやいや。安心して賑やかにさせていただきましたー。(というか一部、そちらを含めた席替えなども散見された)。
実はその前の日、一昨日は若き研究仲間のIさんがお勤め先の某O女子大ジェンダー研究センターで行われた映画の上映会に誘ってくださったので、ほくほくと出かけてきた。上映作品はなんと!公開直前(5月27日から)のマイケル・ムーア監督の『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(http://sekai-shinryaku.jp/)であった。わーい。大きな教室に、申し訳ないぐらいの人口密度(いや非密度というべきか)で鑑賞させていただいた。恐縮である。
さて、このドキュメンタリ-が「マイケル・ムーアの集大成」かどうかはわからないが、心に残るエピソードはたくさんあった。たとえば、子どもの給食に大人たちが知恵を出し合い、おいしいものをきれいなマナーで食べることを身につけてほしいとするフランスの小学校、ひとりひとりの個性や学びたいことを引き出して伸ばしていくのが教育だと教師たちが口をそろえるフィンランドの教育水準の急上昇というデータ、また無差別殺人の犠牲になった息子を悼みつつも犯人を「殺せ」とは言えないとするノルウェーの父親の話しなど、心に希望の灯がともる。妙なひねりのストーリーや、これを「女性の社会進出」の観点から推したい(だからこそジェンダー研究所で上映があったのだが)という配給会社の思惑はともかくとして(;)、この映画は推したい。上記のMさんの仮説からすれば、一見ツッコミ型のようで意外とベタなボケ型ドキュメンタリーということになろうか。ともあれ、ああ、なんともドキュメンタリーな日々。シアワセである(が、これ以上はつづかない)。

2016年5月26日

一つの提案しかない

昨今パナマ文書が世界を震撼させているが、日本における反応はいま一つである。少し前の新聞記事で、ピケティらの経済学者が「サミットとかで対策やるべきだ」と申し入れたと知ったが、最後に「日本の経済学者の名はない」とあって、がっかり;ところが先日、遅ればせながらようやく連絡がきたのである!グローバル連帯税フォーラムさんオックスファム・ジャパンの協働で「呼びかけ」があるので、できれば賛同をとのこと。ええ、もちろん、喜んで!と連絡を返した。そして先日プレス・リリースが送られてきた⇒フ?レスリリースG7伊勢志摩サミットへ向けて_EMBARGOED.pdf しかし昨日(25日)の新聞ではA新聞が拾っていたのみのようだ。くうー;
で、日本の47人の経済学者が名を連ねたとのことだが、ホワーイ47人?(四十七士?いやいや切腹はしませんぞ)。まーそれはともかく、代表格でわが恩師N先生がひとこと寄せていらして感激だった。そしてまた、もうお一人のI氏のメッセージがステキである。
「10人の経済学者が集まると11の異なった経済政策が提案されるというが、...タックスヘイヴンの存在に関しては、一つの提案しかありません。それがこの公開書簡の内容です。」
うはー、かっけー!! はい、全文はこちらです⇒G7伊勢志摩サミットへ向けて日本政府への呼び掛けEMBARGOED.pdf
ともあれ、「そんなペーパーカンパニーの存在は知らない」とか「勝手に名前が使われていた」とかで済ませている方々には、もし本当なら犯罪であって怒ったり対処したりしなければだろう!とツッコまなければならない。「違法でない」というのも危うい言い逃れである。なお、確定拠出型年金の制度改革が先日決定されたが、このタイミングで自己責任の金融市場依存型経済をさらに進めるという政策のあり方は、驚くほどに世界の流れに逆行している。

静かなる抵抗のカタチ

突然狂ったように連投して恐縮だが、5月29日(日)まで@都現代美術館で開催されている「キセイノセイキ」がお勧めである。目利きの友人K氏にずっと前から進められていたのだが、こんな間際になってようやく観ることができた。なにしろ、水曜6限のリレー講義(「世界から沖縄を考える」という題目で共通テーマは「叛乱者たち」)の「アクティヴ・ラーニング」、つまり受講者が積極的に学ぶ方法を具体的に指示し1回分の授業を代替するものとして同展覧会の鑑賞を提示したこともあって、必要差し迫ったわけである。
圧巻のひとつは、1990年代に企画されながら未だに凍結中の「平和祈念館」のプロジェクトを、いわばその事実や規制の現実を示す展示として試みたパーツであるが、その他の部分もなかなか興味深い。当方にはとりわけ、A. ジミェフスキの<繰り返し>の映像(1971年の「監獄実験」と呼ばれる心理学実験の再現の様子を撮ったもの)や、橋本聡さんの「抽象直接行動198の方法(仮)」がおもしろかった。後者はもちろんG. シャープの「非暴力行動198の方法」を意識しているが、ちょうど今修士課程の授業でこの原典を輪読していることもあり、「ああもっと早く来ていれば、院ゼミ受講者にも勧めることができたのに!」という後悔も含めて考えるところが多かった。
また、なかばこの展覧会のカタログでありつつ、それ以上の意味をもつ書物も読みごたえがある。

われわれを取り巻く状況はよろしくなく、さらに悪化しつつあるともいえるが、静かなる抵抗のカタチはこんなにも示されている。そしてそれを観に来ている少なからぬ人びと(多くの若者を含めて。隣の「ピクサー展」の入場者数と比べてはいけないが)がいる。希望はここにも、確実にある。

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