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やはり水俣は先駆的である

どこで見つけたのか忘れてしまったが、「水俣病公式確認60年記念」の特別映画会があってゲストが原一男さんといとうせいこうさんだと知り、これはなんとしても見たかったので、前売り券を買い、先の週末に出かけてきた(4月16日)。開場時間間もなく到着したが、大きなホールにびっしりと人びとが集まり始めている。わりと地味なテーマだと思ったが...と驚いているうちに会場は満席となり、通路を立ち見(というか座り見)の人々がうめ尽くした。まずは水俣フォーラムの実川さんが進行役となって概要を説明し、それから戦前の財閥日窒の力を誇示した映像「鴨緑江大推力発電工事」(1940年)を鑑賞、次いで原一男さんが現在制作中の「MINAMATA NOW」についてかるく解説した後これも鑑賞。つづいて休憩もとらずに、実川・原・いとうせいこう三氏によるトークがおよそ50分。なんとも豪華な企画であった。
「鴨緑江...」のフィルムは、チッソが戦前から日本の国策の一角を大きく占めていたこと(そして戦中、戦後もそれが継続したこと)をしめすばかりでなく、そもそも戦前の日本が満州で何をしていたかの一局面を端的に示しており、たいへん興味深かった。関東軍の梅津軍司令官や日窒の野口社長、某現首相の祖父・岸某などがしれっと顔を見せているというオマケ(?)つき。
次に、原監督が水俣を撮ったらどんな風になるんだろうというのは、当方を含めおそらく多くの観客の主たる関心のひとつであったが、期待にたがわず(いとうさんもそう言っていたっけ)さすが原監督、通常はきっと触れにくいであろう部分にずばっと切り込んでいた。水俣湾の中を撮るために、資格までとって自ら撮影したという水中映像も貴重であり、息をのむ(そりゃあまーリーフェンシュタールが撮った水中映像なんかと比べると不器用ということにはなるのだが、ええ、意味が違いますから。)ともあれ完成(3年後とか?)が楽しみである。
その後のトークも秀逸。当方としては、2011.3.11以降に水俣に関心を持ち始めたといういとうさんが水銀と放射能の問題をからませながら、「ただちに影響はない」という言説がこれからの問題のあり方(「微量問題」)を典型的に示しており、つまりは「微量・複合・長期」の問題であると整理したのは、とても参考になった。誠実かつユーモアをたたえた三氏の語り方も心地よく、あっという間の三時間であった。すばらしい企画を立ててくれた水俣フォーラムさんに感謝!いとうさんがいみじくもつぶやいていたとおり、やはり水俣は先駆的である。

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2016年4月18日 22:25に投稿されたエントリーのページです。

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