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ことば3題

1.

象は鼻が長い―日本文法入門 (三上章著作集)
Amazon.co.jpによる
詳細はこちら: https://www.amazon.co.jp/dp/4874241174/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_udHwEbTR6YB5P

という本があります。

「二重主語文がある言語」があるという風に言われたりします。
そして、それが無い言語もあると。

日本語の様にそれが「ある」言語では、「象」と、「鼻」を動詞の
二項のように表現できるが、

「無い」英語などでは、

Elephants' trunks are long

みたいに、工夫して一項にしないといけない、と。

ところで、最近上記の「象は鼻が長い文」ではなくて、
「象は長い文」っていうのがあるように観察しています。

この、「象は長い文」は、
「象は鼻が長い文」を持っていない言語でも
観察されます。

ちょっと脇道に逸れますが。

「big in Japan」
http://bit.ly/38fIQWs

というのは、世界の他の地域では売れていないけれど、
日本でだけ売れているミュージシャンを指す
表現だそうです。

これ自体は、「象は長い文」ではないです。

他方、これをモジったTシャツなどが出回っています。

https://www.google.com/search?q=huge+in+japan&client=safari&rls=en&sxsrf=ALeKk03Pe3wUTNTIuToqu9E7rTELShqf6w:1582960977506&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwjlqoeWnfbnAhXYQN4KHS_0Cp8Q_AUoAXoECA0QAw&biw=1138&bih=735

「I'm huge in Japan」

これは、「象は長い文」と解釈すると
理解ができます。

「鼻が」の部分が表現されずに
ほのめかされているだけです。

でも、わかる人が多いでしょう。

漢字で「巨◯」なんて書いてあったら、
「まんまやん」ってなわけで。

標準英語ではなく、
ハワイ・ピジン英語という名前の
クレオール語での例があります。

https://books.google.co.jp/books?id=QAcJSXpYoucC&pg=PP171&lpg=PP171&dq=small+petoot+pidgin+max&source=bl&ots=uWuHygAJmr&sig=ACfU3U2V3Ciik9n_P8m-amp6rcLBrVY-tQ&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjEw4ijoPbnAhVZyosBHTCIB-UQ6AEwAXoECAkQAQ#v=onepage&q=small%20petoot%20pidgin%20max&f=false

3コマ漫画のなかで、

「Oh dat Warren! He so small petoot」

という例があります。

「あぁ、あのウォーレン!あいつは小さいよ」

という、「象は長い文」になっています。

2.

次は、今週のラジオからです。

直ぐに書かなかったので、月曜日までしか
radikoには残っていないので、
申し訳ないです。

TOMAS presents High School a Go Go!! | TBSラジオ | 2020/02/24/月 21:00-21:30 http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200224210000 #radiko

https://www.tbsradio.jp/459080

母語情報、言語背景も分かりませんが、
この番組の中で、少なくとも2人の人が
あるフレーズを面白い感じで発音しています。

「エンターテインメント集団」

なんですが、

/エンター/ /テインメントシュ]ーダン/

「高低」で書けば、
/エンター/ /テインメントシューダン/
/低高高高/ /低高高高高高高 低低低/

規範的には、

/エンターテインメントシュ]ーダン/
/低高高高高高高高高高高 低低低/

となるところですが、

2人の人が、/テイン/のところで、/低高高/と
発音しています。

この/低高/というパターンは、「句」の始まりを
示すと、通常説明されているものです。

ということで、その前に「句切れ」があるように
感じられるようになっています。

(この「句」というのは、統語論上の句ではなく、
 音韻論で、イントネーション等について論じるときに
 使われる用語で、いろいろな人が様々に呼んでいて、
 誰もが分かる、定番の術語はありません。)

--

「特殊犯罪」

という複合語があったときに、
これは通常の複合語的なアクセントパターンを採って、

/トクシュ ハ]ンザイ/
/低黙高  高 低低低/

となります。

これに、「集団」を後続させると、

/トクシュ ハンザイ シュ]ーダン/
/低黙高  高高高高 高  低低低/

と1句にしてしまうか、

/トクシュ/ /ハンザイ シュ]ーダン/
/低黙高 / /低高高高 高  低低低/

と、/ハンザイ/(/低高高高/)の前に句切れを
入れて、2句にするかは、揺れがあるでしょう。

しかしながら、「特殊」と「犯罪」の間に
句切れが入ってしまうのは、両者が元々
複合語であるにしても、それぞれを分けても
語として独立して存在できるものであるので、
それほど「変なこと」ではありません。

他方、

/エンターテインメントシュ]ーダン/
/低高高高高高高高高高高 低低低/

と1句で発音するか、

/エンター/ /テインメントシューダン/
/低高高高/ /低高高高高高高 低低低/

と2句に句切って発音するかは、
「特殊犯罪集団」が2様に発音されるのと
同様の現象だとは思うのですが、

こちらの例での問題は、
英語からの外来語「エンターテインメント」
が日本語の中では、「エンター」と「テインメント」との
間で、「意味を持つ単位」の切れ目としては
切り様が無いということです。

この現象は、音韻論的「句」の「句切れ」が
必ずしも、直に意味に関与はしないということの
証左になってしまう可能性があります。

3.

以前、ラジオを聞いていたときに、
どうやら出演者が

「アザーズ」

と言おうとしていたものが、
どうしても

「アズアズ」

に聞こえてしまうということがありました。

音素的に書けば、

/aza:zu/

/azuazu/

で違った分析をされるべきものですが、
よくよく「内省」すると、

音声器官の動きは、ほとんど同じで、
ただ、動くタイミングが違う可能性が
あるものだと考えられます。

/aza:zu/

には、母音音素/u/が含まれていませんが、
母音音素/u/、すなわち異音としては[ɯ]の
構えは、それが円唇母音でないことも手伝って、
/z/から/a/に移行する途中、瞬間通過している
と考えることもできます。

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2020年2月29日 17:32に投稿されたエントリーのページです。

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