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Fact or opinion? fact or myth?

アメリカ合衆国に行き始めてから、数十年の間、現地のメディアや親が、子供に一貫して問う問いがあった。

(それは)
Fact or opinion?
(事実か意見か?)

(それは)
Fact or myth?
(事実か神話か)

そのように、小さい時から、「何が事実か」ということを考えさせる訓練をしているのだなあと、感心したものだった。

神話というのは、ギリシア神話とか、日本の創世神話とかいうものではなく、「人々によって広く信じられているが、事実ではない事柄」のような意味である。

この「事実か否か」という境界が、最近意図的にblurryにされていて、わからなくなってきている。

「ポスト真実の政治(Wikipedia)」
https://bit.ly/46kEFXy (漢字等が入るので短縮しています。)

というのが広まっている。

もはや、事実がどうかというのは蔑ろにされていて、「言ったもん勝ち」、「広めたもん勝ち」な感じになってきている。

これは、米国のみの問題ではなくなっていて、

そもそも日本では、事実か否か?というものを子供達に考えさせる訓練などしてきていないも同然だが、

「広く信じられていれば『真実』」という風潮は、米国に劣らず、かなり根強く根付いている感がある。

関東大震災時のデマによる朝鮮人の大虐殺は史実なのだが、それを否定したり、薄めて重んじない国会議員、地方自治体の首長がいる。

これは、米国で、「Black lives matter」の標語を伴った運動が広まったときに、それを打ち消すかのように「All lives matter」を言い出した人たちにも似ている。全ての人の命が大切なのは当然なのだけれども、権力によって差別的な待遇を受けていたのはアフリカ系アメリカ人なのだから、そこから目を逸らさせようとする動きは、やっぱり政治的に正くない。

ただ、実証可能な事実よりも、多くの人が信じる「真実」を支える土壌は米国にある。それは、宗教が強いことと、宗教が政治と分離していないことにも依ると思われる。

宗教的な信仰の対象というのは、多くの場合、科学的に実証可能なものではなく、古くからの神学者や修道者の言葉や、教派によっては最近の神学者の言葉が「納得できるもの」であるから信じられている面がある。

そこに、(神学者らによるものではないが、)実証不可能な「真実」や「ポスト真実」が入り込む余地がある。

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ドイツでは、ナチスの犯した様々な罪を学習することができるために、ナチスの遺構が残されていて、人々が訪れて学習することができるようになっている。

ドイツの「ARBEIT MACHT FREI(労働が自由にする)」というアウシュビッツの標語は(ポーランド領内ではあるが)今でも見ることができるが、

日本の福島での「原発は明るい未来のエネルギー」という標語は、現地の住民たちの意向によって、取り除かれてしまった。

ケガレを消し去るかのように。

同様に、オウム真理教のサティアン群などは、歴史的学習の場として残せば良かったのに、全て取り壊されてしまった。

上九一色村という地方自治体すら解体分割されてしまった。

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日本では、そもそも「事実か否か」ということを子供に問うということはあまりされていないと思われるし、既成の大宗教が大きい力を持っているわけでもない。

その曖昧な状況の中で、しかしながら、広めたもん勝ちな風潮は、声の大きな人たちによって加速されている。

それはテレビなどに出ている人だったり、
インフルエンサーと呼ばれる人だったり、

国というか、政権与党もそのような手法を使っていますよね。史実ではない「江戸しぐさ」を広めようとしたり、第二次世界大戦中の史実を教科書から抹消したりして。

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それから、大学等の研究機関に所属していない「研究家」がメディアに露出していたりします。その人たちの特徴は、自分の考えついたこと、発見したことと、先人による記述を丁寧に選り分けるという作業をしないことなどです。(発表メディアの制約にもよるでしょうが。)

(研究機関に所属していても酷いセオリーを垂れ流す人はいますけどね。)

また、番組などのコメンテーターも、タレントが使われたり、また大学所属の研究者であっても、自分の専門のことしか発言しない人よりは、縦横無尽に、様々な「意見」、それも番組制作側が言って欲しいことを言ってくれる人の方がもてはやされます。

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2023年9月20日 20:03に投稿されたエントリーのページです。

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