先日は青土社だけを責めてしまった
「Men's Idol考」でしたが、
http://vakxsergiev.blog68.fc2.com/blog-entry-5395.html
カタカナの「メンズアイドル」で検索したら、
ゴマンと出てきますね。
と言うことは、これは、社会学、カルチュラル・スタディーズ界隈とか、
青土社が編み出したものではなく、日本では、既に定着しているんですね。
これは、従来からの用語で言えば和製英語だし、
最近の応用言語学の用語で言えば「中間言語」でしょう。
ただ、和製英語というのは、完全に日本語という
システムの中の一部分であるのに対し、
「中間言語」と言うのは、外国人(ここでは日本語人)が
英語(などの外国語)を学ぶ際に、正しい形を
学び損ねて産出する誤用の束のことですので、
厳密には違う物です。
先日のブログでは、Men's Idolという表現が生まれた
幾つかのプロセスを推定しました。
再度、それを整理し直してみます。
どれも、英語を学ぶ日本人が産出したものであれば
「中間言語」でしょうし、
単に、日本語のシステムの中にある、外来語のそのまた
一部だとすれば、外来語(但しローカライズされたもの)
ということでしょう。
「仮説1」
日本語話者が、英語を学ぶ際に、「の」と「's」の違いに
気がつかないで誤用をしてしまったという説です。
前のブログのように、日本語の「の」には、同格(apposition)
用法というのがありますが、英語では、同様の同格を表わすのに
「's」は使わないということです。
(1) 看護師の女性
を
(2) *nurse's woman
というのは誤訳であるということです。
より自然な翻訳の1つは、
(3) a female nurse
でしょう。
Men's Idolに戻ると、「MenであるところのIdol」という
お積もりだったのかな?というのが「仮説1」の推測です。
それでも、複数形のidolsになっていないのは、
もし、これが本チャンの英語として使っているつもりの場合は、
尚、痛々しいです。
「仮説2」
メンズはもはや和製英語であって、「複数の男性」を
意味する言葉として定着しています。
もはや、ほとんどの用例では、「's」の属格的な意味は
出てこないです。
英語にはない、「ボリューミーな」とか、「エンカウント」なんかと
同じ類の物です。
となると、「's」を使わない、英語の同格表現っぽく
和製英語を繋げて、
(4) メンズ(であるところの)アイドル
ということなのではないかと。
どうしても英語に近づけたい私は、
(5) *メンズ・アイドルズ
じゃないか?とも思うのですが、どうやら、
メンズは、メンズとしてしか使われず、
複合語の一部をなす場合を除いては、「メン」すら
自立した名詞としては、和製英語では
使わない感があります。
他方、アイドルの方は、複数のマーカーを付けた
「アイドルズ」の方が使われていなくて、
アイドルが、単数・複数のどちらともとれる文脈でも
使われるのでしょう。
和製英語では、単複両方が揃っていることの方が
おそらくは少数派で、
子供は、キッズですね。キッドは稀です。
女性は、ウーマンと、ウイメンが揃っている例外です。
更には、ウイメンズまであります。
レディーと、レディース(レディーズではない)
は意味が分化しているかも。
レディーは、淑女の意味で、
レディースは、女性ものの衣服か、(過去の)女性の珍走団の
ことでしょう。
ということで、メンズアイドルとは、和製英語で、
メンズとアイドルを同格で繋いだものなのでしょう。
その際に、「ズ」は、日本語の「の」っぽいものかな?
と意識する人もいるだろうし、そうではなくて、
メンズ(複数の男)の一部だと考える人もいるでしょう。