今日午後は、
国立国語研究所の日本語新発見という
フォーラムを聴きに神保町へ。
主に報告されていたのは、
日本語等には見られ、英語等には見られない
人魚構文。
Tsunoda, Tasaku (ed.) (forthcoming) _Mermaid Constructions. Amsterdam/New York: John Benjamins.
で扱われるであろう内容だと思われます。
例としては: (ハンドアウトより)
太郎は明日大阪に行く予定です。
首相は米の輸入を認める見込みだ。
日本人は正月を祝う習慣だ。
太郎は、予定ではなく、人間である。つまり
「太郎≠予定」であるが、コピュラ文で同定されて
いるかのようである。と聞くといわゆるウナギ文と
どう違うのか?と一瞬思うがどうやら違うらしい。
人魚構文の構造は、「節+名詞(+コピュラ)」である。
太郎は明日大阪に行く。(ハンドアウトより)
とすれば動詞述語文となる。
花子は学生だ。(ハンドアウトより)
とすれば名詞述語文となる。
人魚構文は、前半が動詞述語文のようであり、
後半が名詞述語文のようである。
いわば、動詞述語分と名詞述語文とを継ぎ接ぎした
ような形になっているので、それを
角田太作教授が人魚構文と名付けたとのこと。
これが、タガログ語(語順は逆になるが)、韓国語、
アイヌ語、シダーマ語(アフロアジア語族クシ語派、エチオピア)
にも見られるとの報告でした。
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壇上で解題されていたことと、僕なりに消化したものを
纏めると、
・人魚構文は、従来の統語論上は、「節+名詞(+コピュラ)」
という形を取る。
・しかし、節の動詞+名詞(+コピュラ)が、
名詞(+コピュラ)が半ば文法化して、
用言複合体ないし述語複合体になっている。
・その名詞が担う意味は、
「意志、予定、計画」
証拠性
アスペクト
とき
文体的効果(文体を堅くするなど)
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さらに僕なりに消化すると、
人魚構文を持ちうる言語は、
関係節(≒連体節)の動詞が主要部名詞と
接している場合だけなんじゃないかと。
だから、SOV言語にばっかりあるように
見えたんではないかと。
タガログ語はVSO言語の例ですが確かに
動詞が真ん中に来る、SVO言語やOVS言語の場合には
発達しなさそうな気がします。
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日本手話では、そもそも名詞と動詞の区別すら
はっきりできるかどうかわからないので、
「人魚」的なねじれがあるようには感じられません。
しかし、日本語ラベルで、半文法化した名詞が
節を承ける文例には事欠かないので、
(それも日本語と違うものも多い)
人魚構文言語と言えるのではないかと思います。
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アサバスカ語は、典型的なSOV言語なのですが、
こと、関係節に関しては、REL+Nではなく
N+RELなので、人魚構文はできそうにありません。
辛うじて、名詞化エンクリティック*=i?, *=?n, *=ne?
だけが、動詞に後続しますが、
それだけで、人魚構文を論じることが
できるかどうかわかりません。
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マダガスカル手話は、そもそも6語順類型が全て現われ、
まだ基本語順すらも同定できていないので
同じ俎上で論じることはできません。