大江千里は、「十人十色」で、
「君を世界一の幸せにさせる」と歌っている。
http://www.youtube.com/watch?v=8nbYnpMFqP0
しかし、これは良く考えるとおかしい(と思っていた)。
「君が幸せになる」
これを自他対応を使った語彙的使役派生したものは、
「僕が君を幸せにする」
となる。
「幸せにさせる」
では、語彙的使役派生プラス形態論的使役派生で
二重使役になってしまい、
もう一人「使役者」がでてきてしまう(と思っていた)。
つまり、例えばその第2の使役者を「ゆうき」とすると、
「僕がゆうきに君を幸せにさせる」
と、第1の使役者「僕」と、第2の使役者「ゆうき」が
必要になる(と思っていた)。
閑話休題。
ピンクレディーは、
「きっと、きっと、好きにさせます」
と歌っている。
http://www.youtube.com/watch?v=X4fTi9EqbAM
これも分析してみると、
「あなたが私を好きになる」
の使役は、形態論的使役派生を使えば、
「?私があなたに私を好きにならせる」
だが、あまり使いそうもない。
形態論的使役派生の変わりに、
自他対応による語彙的使役派生をしようとすると、
「*私があなたに私を好きにする」
これは、動画の下の文に対応する使役にはならず、
(語彙的に決まっている)
別な意味の述語になり、それは3項述語ではないので、
非文になってしまう。
「あなたが私を好きにする」
という別な意味の2項述語になります。
そうなると、動画の下の「好きになる」の使役は、
(語彙的使役と形態論的使役の)二重使役の
「好きにさせる」
しか使えなくなってしまい、
「私があなたに私を好きにさせる」
で落ち着く。
単純な、語彙的、形態論的操作だけでは導きだせないが、
上記最後の文は、
「あなたが私を好きになる」
と
「あなたが私を好きにする」
両方に対応する使役であり、両義的である。
となると、大江の
「君を世界一の幸せにさせる」
も、強ち間違いではなかったのではあるまいか。
「-になる」の使役は奥が深いことを思い知りました。