M先生の授業で、
アラスカ南西部の中央ユピック・エスキモー人の
自称Yup'ikとは、本当の(-pik)人(yuk)だと
習いました。
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名詞で表わされるような概念に、
概念的加工を加えるのには、
いくつかの形態論的、統語論的手法を
使うことができます。
以下に見るのは、さまざまな、
統語論的手法、形態論的手法を用いて
「小さい」ことを表わすこと。
(その内、形態的手法を用いて
表わされるものを指小形 diminutive
と呼びます。)
まず、統語論的に、形容詞など、
名詞の前後におかれる修飾語を使う場合。
little boy(小さい男の子)
合成(compounding)は、統語論と形態論の
両方にまたがる手法です。
小市民
接尾辞で指小形を作る言語は多いです。
booklet (小冊子 book 本 + -let 小さい)
vodka (ウォッカ[ロシア語] voda 水 + -ka 小さい)
まやーぐゎー (小猫[沖縄口] まやー [猫]+ -ぐゎー [っこ])
スワヒリ語では、名詞クラスを標示する接頭辞を取り替えて
作ります。
mtoto(child m-クラス)
kitoto (infant ki-クラス)
フランス語のpetit(e)(小さい)から作られた、
フランス口語のtiは、接頭的な指小辞です。
アラビア語では、語幹内の母音を交替させることで
指小形を作ります。
kalb(un) 犬
kulayb(un) 小犬
その他、重複(reduplication)なんていう手法も使われます。
sasatra (疲れた[マダガスカル語])
sasatsasatra (ちょっと疲れた[同])
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翻って、「本当の」という「名詞的概念を加工する概念」は
それほど多様な手法では表現されないかもしれません。
日本語では、「本当の」という、名詞プラス格助詞で
名詞を連体修飾するというのが一番一般的でしょう。
本当の事
本ちゃんの演奏
あと、古くは、「ま-」という接頭辞がありました。
ま人間
まこと (ま- + 事 → 誠)
上述の中央ユピック・エスキモー語では、
接尾辞 -pikを使います。
Yup'ik (yuk 人 + -pik 本当の)
qayapik (qayaq カヤック + -pik 本当の)
最近日本語で流行なのは、「リアル」を
合成することです。
リアルママ (バーやスナックのママでなく本当のお母さん)
リアル女 (男を蔑んでオンナと呼ぶのではなく本当の女性)
これには、ちょっと違った意味も出て来ていて、
リアルミクシィ (ネット上のミクシィで交流するだけでなく
実世界でミクシィ友と会うこと、またその友)
そこから、そのように「会う」ことを「リアルする」と
言うようになっています。