メールマガジン40号

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【多文化コミュニティ教育支援室メールマガジン】

        第40号2009年3月9日

        文責:田中
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学生ボランティアの皆さま:
すっかり梅の花も見ごろを終えて、今度は桜が待ち遠しい季節になりましたね。
今年の東京の桜前線は例年より早めの3月20日だそうですよ。
この春休み、みなさんはどのように過ごす予定ですか?

さて、多文化コミュニティ教育支援室メールマガジンの第40号を送信いたします。
このメールマガジンは、月に一度のペースで配信し、支援室の活動内容等を
お伝えするものです。

<注目トピック>

★多文化コミュニティ教育支援室2008年度座談会
 日程:国際理解教育編:2月16日(月)15時~18時
    学習支援編:2月26日(木)15時~18時
 場所:208教室
 内容:今年度、支援室の活動を通して国際理解教育や学習支援の活動に携わった学生たちが集まりました。
    スタッフも交えて各活動のビデオを見て振り返り、各自感じたことや反省、今後どうしたらよいかなどを
    話し合いました。
    *下のコーナーで各座談会の概要をお届けします*


★新宿区立大久保小学校 国際理解教育実践
 日程:1月30日(金)、2月6日(金)
 対象:5、6年生合同(約50名)
 内容:学生と児童がタイ・韓国・中国3つのグループに分かれ、それぞれの国の民話をもとに、語劇を
    作り上げました。本番まで各班ごとに練習を重ね、紙芝居や小道具に工夫を凝らして発表することが
    できました。参加したロシア語専攻の河原くんは「まだあまり日本語が得意でない、外国につながり
 をもつ児童に主役をお願いしたら、一週間の間でセリフを全部覚えてきてくれた。それを皆の前で発表した
    ことで彼の自信にもつながったのではないか」と語ってくれました。

★府中市立第五小学校
 日程:3月6日(金)
 対象:小学6年生
 内容:卒業を直前に控えた児童たちに「夢」をテーマにした授業を行いました。
    既に夢が具体的な子どもたちには、「なぜその夢をもつのか」「具体的にどうなりたいのか」など深い部分を
    引き出していく一方、夢でなくとも「自分にとって大切なものは何か」「自分の良いところはどんなところか」
    考えてもらうなど様々なアイデアを学生が出し合い、子どもたちの心に残るような授業になったのではないか
    と思います。

★府中市立第四小学校
 日程:3月11日(水)13日(金)(時間は午前~昼の予定)
 対象:小学2年生
 内容:国語の教科書に載っている『スーホの白い馬』(モンゴルの民話)を手がかりに、モンゴル
    の生活文化を学び、国際理解を進める授業を企画・準備中です。
    ※学校のホームページ http://www.fuchu04s.fuchu-tokyo.ed.jp/

※※※※ これからの活動予定と報告 ※※※※

■学習支援活動


!募集中!
▼府中市学習支援ボランティア
 学生たちが府中市の小中学校に出向き、外国につながる子どもたちに日本語を教えたり、
 学校の勉強をサポートしたりしています。新たに、それぞれ韓国語・ペルシャ語・中国語を
 母語とする中学生3人と、中国語を母語とする小学生が2人が加わりました。
 現在この中の1人の児童について、支援してくれる学生を募集しています。
 【詳細】
 場所:府中市内小学校
 学年:小学5年生
 性別:女の子
 母語:中国語
 活動時間:週1回~2回程度。具体的な曜日・時間は学校と相談の上決めます。
 活動開始:3月3日以降
 問い合わせ先:多文化コミュニティ教育支援室 和田・河北

*報告*
▼江戸川区立葛西中学校
 江戸川区立葛西中学校の日本語学級にて、2月中旬~下旬の8日間にわたり学年末試験に
 向けて、タガログ語・中国語・韓国語母語などの生徒の勉強のお手伝いを学生が行いました。

*進行中*
▼川崎市での学習支援
 川崎市内小中学校で、中国語を母語とする生徒3名に対し、学生4名がマンツーマンで
 学習支援を行っています。
 
▼足立区での学習支援
 足立区の2つの小学校で1月より、ビルマ語を母語とする児童1名に対しビルマ語学生1名が、
 ウルドゥー語を母語とする児童2名に対して、ウルドゥー語専攻の学生2名が学習支援を
 行っています。

▼府中国際交流サロン
 毎週金曜の放課後、府中国際交流サロンにて学習支援活動を学生たちが行っています。
 8名の児童生徒に対して、15名の学生がサポートをしています。
 2月27日の今年度最後の活動では、3月で卒業する大学生4人のお別れ会を行いました。

▼川崎市ふれあい館
 現在、4名の学生が地域のボランティアの方々と一緒に多くの児童生徒に対して学習支援を
 行っています。「DAGATクラブ」では、日本で生まれ育ちフィリピンを背景に持つ子どもたちが、
 フィリピンのことばや文化を学んでいます。

■国際理解教育活動

▼武蔵村山市立第八小学校
 日程:9月8日(月) 3月2日(月)
 内容:フレンドシップ校であるラオス・パチュドン校との交流とラオスについての文化理解を目的に
    行われました。

■その他の活動
 
▼うりぬり
 朝鮮語専攻の学生と、韓国の留学生が中心となって活動している団体で、主に小中学校での文化
 交流や日韓の学生間交流を行っています。

▼Amigos
 ポルトガル語専攻の学生が中心となって活動している団体で、地域の外国人児童生徒に対して、
 日本語による学習支援とブラジルに関する文化交流などを行っています。

新代表、ポルトガル語専攻の岩下くんからコメントを頂きました!

「こんにちは、アミーゴス代表の岩下です。この度3月からの新しい代表となりました。顔を知っている人も
知らない人もこれからよろしくお願いします!アミーゴスが何をやっているのかということですが、基本的には
支援室と同じような方針です。違う点を挙げるとしたら、アミーゴスのメンバー自身で考えて、自主的に活動して
いる点でしょうか。まぁもちろん支援室の方々には頼りきりですが(笑)。現在のアミーゴスの活動としてはまず、
鶴見総合高校というところに出かけて行き、日本語を母語としない高校生たちの勉強を助ける学習支援の活動、
そして教科書に載っている単語を様々な言葉、例えばポルトガル語・スペイン語・中国語などに訳し、そのリスト
を作るキーワード訳などです。他にも、ブラジル人の集住している静岡県浜松市に行き公立小学校に入り込んで
授業のサポートをするという、夏合宿なるものをしたりもしました。その成果は…もう本当にすごいもんです!
アミーゴスホームページにて詳細に報告してあるのでぜひご覧ください!→http://www.tufs.ac.jp/st/club/amigos06/
新代表となって、重い責任を感じると同時に、これから何を始めようか、いったい何が始まるのかという希望が
湧いてきます。まだまだ活動の幅は広がると思いますので今からでも参加してみたいかたは声をおかけください。
もちろんポルトガル語専攻である必要はありません!毎週月曜昼休みのミーティングは誰でも大歓迎です。
たくさんご意見ください!」

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■支援室インタビュー
2008年度最後のメルマガとなる今回は、支援室の「マダム」ことスタッフの河北さんにインタビューしました。

田中:まず始めに、普段河北さんが外大の授業と支援室でどんなことをしているのか教えてください。
河北さん:支援室では日本語学習専門員として、地域や学校内で学習支援をするボランティアの方々の質問や
      相談に応じています。Add-on Programの授業では、日本人学生と留学生を対象にした言語技能入門Ⅱ
      日本語を担当しています。授業内では講義だけでなく、ディスカッションやワークも取り入れてます。
      今年度後期の授業では班ごとに小学校低学年の子どもを持つ親向けの学校案内や、中高生向け
流行語集・擬態語・擬音語カードなど全部で6つの教材やパンフレットを様々な言語訳付きで作成
      できました。

田中:支援室や授業を通して河北さんが感じる外大生の魅力や、逆にもう一歩だなと思うところはどんなところですか?
河北さん:日本語学習支援教材を作るにしても、学生自身が漢字が書けなかったりするんですね。
      なのでまずは自分の言葉、日本語を見直してほしいです。逆によいところは、皆とてもまじめで
      まっすぐしている。そして、語科に関係なく仲が良いところがいいですね。

田中:河北さん自身はどんな学生時代を送りましたか?
河北さん:大学では英文科に在籍していて、インターナショナルスクールでのガールスカウトリーダーの活動に
     打ち込んでいました。昔から言葉が好きだったんですが、大学で今のあなたたちがしているような活動に
     興味を持っている友人が周りにいなかったんですね。だから、外大生がうらやましいくらいです。

田中:なぜ日本語教師という道に進まれたんでしょうか?
河北さん:一時アメリカで子育てしていた時期があるんですね。その時、小さい子どもを持つ母親向けの場というのが
      あったのがとても嬉しくて。自分の子育てが一段落した時、その経験を、日本にいる帰国子女の子や外国
      につながりを持つ小さな子ども、その親に対して活かせないかなと38歳の時に思いたち、プロ養成を受けて
      地域ボランティアになりました。ルーマニアへの派遣も経験しました。

田中:学生の頃から「日本語教師になるぞ!」と思い目指していたわけじゃないんですね。
河北さん:その頃は、外国にばかり目がいっていたんですね。家庭があってあまり動けないというのもありますが、
     日本の中にいる外国につながりをもつ子どもや家族に自分の経験を活かせるかなと。

田中:河北さん自身が仕事やプライベートに関わらず常に心がけていることやポリシーはありますか?
河北さん:昔は自分のことを聞かれるのが怖くて、人に対しても聞くのが怖かったんです。でも、ある日「なぜあなたは
     そんなに相手に対して関心がないの?」と言われてはっとして。それ以来、目の前にいる人を見つめて、話を
     聞くこと、言葉にならない言葉を聞こうとする姿勢を持つこと、を自分自身でも心がけていますし学生に向けても
     伝えていますね。

田中:学習支援の場はもちろんですが、私たちの普段の生活の中でも言えますね。
    最後に、4月で外大に来て3年目を迎えますが、何か成し遂げたいことはありますか。
河北さん:学生のみなさんに、私の方から「これをやって」「あれをやって」と要請することは簡単ですが、それだけだと
     長続きしないと思うんです。学生だからできること、学生の中から自発的に出てくるものを積極的に応援したい
     ですね。あと、個人的にはおしゃべりしすぎないことかしら??

-支援室に入るといつも明るく笑顔で迎えて下さるマダム。「ずばりその気品と魅力の秘訣は何ですか!?」と尋ねると
 「もし私が魅力的だとしたら、ここにいて、学生のみなさんから刺激をもらうからじゃないかしら」と答えてくださいました。
  ですが、私たち学生の方が河北さんからもらっている刺激の方が大きいのではないでしょうか?
  一つ一つ質問に丁寧に答えて下さりマダムの熱意が伝わってくる素敵なインタビューでした。
      
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■学生の視点から

▼支援室の活動体験者の声
 ここでは、毎月、活動を行った人たちの感想や意見を紹介します。

大久保小学校 国際理解教育実践に参加して
                         ウルドゥー語専攻 甲斐

たった2日間で語劇をやろうという話が出た時は正直無理だと思ったのですが、試験期間中にも関わらず沢山の人達が
手伝ってくれたお陰で、無事発表にこぎつけることができました。支援室のチームワークの良さが生かされた実践になった
と思います。子供達にもこちらの不手際で沢山の事を要求してしまったのですが、本当によく頑張ってくれました。準備から
実践まで関わったのは初めてでしたが、今後の実践に生かしていければと思います。

◇◇きっかけトピック◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

このコーナーでは、日常生活の中の身近な出来事やニュースから、多文化共生を考えるヒント・
きっかけとなりそうなトピックを紹介していきます。

2009年2月26日の朝日新聞の朝刊、天声人語にこんなことが書いてありました。
(以下引用)

ドイツ文学が専門のエッセイスト池内紀さんがかつて、「イタリア語は学びがいのある言葉だ」と書いていた。
理由が面白い。イタリアの人は、こちらが多少の単語を話せるだけで「自分たちに向けられたすてきな表敬」
と思ってくれるからだという▼その逆は、たぶん英語だろう。少しばかり話せてもほめられず、下手だと哀れに
思われる。いまや世界語さながらに、わが世の春を謳歌して強気だ。その陰で多くのマイナーな言語が消えつつ
あると、先日の小紙が報じていた。▼世界には6千前後の言語があるそうだ。国際教育科学文化機関(ユネスコ)が
大がかりな調査をしたら、うち約2500語が消滅の危機にさらされていた。199語にいたっては話し手が10人以下に減って
いた。まさに風前の灯である。▼219もの言語が、20世紀の半ば以降に消えている。去年は米アラスカ州でイヤック後が、
最後の話者が死んで途絶えた。その女性は生前「ひとりぼっちは怖い」と言っていた。イヤック語で話せる相手が誰も
いなかったからである▼ひとつの言語が生き延びていくには10万人以上の話し手が必要だという。ある一線を割れば
坂道を転がるのは、生き物の場合と同じらしい。生物多様性ばかりでなく言語の多様性も、この地球上で細りつつある
▼かつて、印刷術の発明は文字のない語を置き去りにし、ラジオ・テレビの隆盛がさらに、少数派の言語を追いやって
やってきた。そしていま、インターネットである。英語も大切だが、弱肉強食にまかせていては多彩な文化は守れない。
(引用終わり)

なんとなく朝食時に目にした天声人語に、外大の講義で聞くようなことが書いてありとても驚きました。
新聞の朝刊で日本全国にこのような記事が発信されている中で、言語を学ぶ一学生として、あなたは何をどう感じますか?

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★多文化コミュニティ教育支援室2008年度座談会概要
1、国際理解教育編
○実践では、相手と同じ目線に立って一緒に考える姿勢を大切にしたい。
○学生スタッフは、実践経験の有無に関わらず、思ったことは何でも皆に投げ掛けてみることでより中身の濃い企画ができる。
○学生スタッフ・生徒・先生みんなで一緒に楽しみ、正解のないことを考えるのが大切ではないか。
○来年度は外大生にも、もっと支援室の活動を知ってもらい参加者を増やせるようにする。

2、学習支援編
○大学に入学した際、言葉を使って誰かの役に立ちたいと思ったのが支援に関わるようになったきっかけ。
○定期的に生徒と接することで、日本語のスキル面だけでなく、精神面でも成長を感じることができた。
○最初は生徒と上手くコミュニケーションがとれなかったりお互いぎくしゃくしたこともあったが、
 絆を強めることができた。
○地域の中では外国人と接したことがある人がまだ多くなく、受け入れ体制が不十分であると感じる。
○外国人生徒に親身になってくれる先生がいる一方で、日本語学級が孤立してしまっているような学校もある。
○学習支援の活動を通して、視野が広がり新しい自分を発見でき、成長することができた。

*座談会の詳しい様子は、来年度春に支援室から発行される予定です。そちらもぜひチェックしてみてくださいね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆編集者より

「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」と言いますが、あっという間にもうすぐ新学年です。
この1年を振り返ってみると、手当たり次第に新しい事に挑戦し走り続けてきました。
「あれもこれもやりたい!」と欲張りなため、予定を詰め過ぎて体調を崩したこともしばしば…。

「成功を繰り返すよりは新しいことにチャレンジしたい。」

ミッキーマウスの生みの親、ウォルト・ディズニーはこう言いました。
チャレンジ精神や冒険心も持ちつつ、来年度は今目の前のあることを丁寧にやる、
目の前の相手とじっくり向き合う、そんな姿勢で行きたいなと思っています。
春は、新年の次に新しいことを始めるのに最適な季節ではないでしょうか。
みなさんの手帳にはどんな予定が書かれていますか?

ロシア語専攻 田中

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このメールマガジンに関する御意見、もしくは支援室の活動に関連して、学生にとって
有益な情報がございましたら、t-shien@tufs.ac.jp(支援室代表)までメールにてご連絡
いただければ幸いです。

多文化コミュニティ教育支援室は2012年の東京外国語大学の改組にあわせ、 より広いボランティア活動をサポートするためのボランティア活動スペースとなりました。
(本サイトはアーカイブとして公開を続けています)