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TUFS地域研究センター設立〜吉崎知典センター長インタビュー〜

研究室を訪ねてみよう!

2023年10月、TUFS地域研究センター(TASC)がオープンしました。センター長の吉崎知典特任教授が、TASCが果たすべき役割とそのためのアイデアを語ります。


本学では、現代アフリカ地域研究センター、南アジア研究センター、国際日本研究センター、Peace and Conflict Studies(PCS)をはじめとして、さまざまな地域の研究を専門的に行っています。TUFS地域研究センター(TASC)は、それらの知見を連携して、社会に向けて世界諸地域に関わる情報発信をしていくという役割を担っています。正式オープンは10月ですが、私自身は一刻も早く前に進みたいという気持ちで、夏休み前に開かれた高校生向けのオープンキャンパスなどでTASCの活動をすでに始めています。

そもそも本学の強みは、外国語をベースとした諸外国・諸地域の研究であり、国際社会の研究です。TASCでは、そうした個々の研究をブリッジ(架橋)することを目指しています。研究者は一般的に自分の研究に没頭しがちで、他の研究者などと広く交流する機会は滅多にありません。TASCが彼らをブリッジする存在となり、皆で交流できる場所にしていきたいと考えています。

10月に行われた現代アフリカ地域研究センターの交換留学生歓迎会(TASCラウンジにて)

ただし、日本人は「交流してください」と言われても簡単にはできません。そこで、TASCに積極的に取り入れたいと考えているのが「政策シミュレーション」です。「政策シミュレーション」とは、あるシナリオに基づいて役割を与えられた参加者たちがどう行動すべきかを議論を通じて考えていくゲームです。テーマは、ウクライナ危機でも「2030年の架空の紛争」でも構いません。いわゆる議論は形式的になりがちですが、それぞれの立場で課題解決に取り組むシミュレーションなら、誰もが「自分ごと」になるため向き合い方が変わります。7月のオープンキャンパスでは、「ウクライナ危機シミュレーション」を模擬授業として行いましたが非常に好評でした。

2023年度春学期で行ったウクライナ危機シミュレーション授業の様子

実は、私は本学着任前の約7年間、防衛省の防衛研究所で海外の国や機関と共に「政策シミュレーション」に専門的に携わってきました。防衛研究所のシミュレーションは実際の政策の検証などが目的で、大学で行うものとは異なる部分もありますが、一緒にゲームをすると立場を超えて交流が深まるというのはどこでも同じです。

TASCに求められているのは、冒頭でお話したように各地域研究の情報発信です。しかし、一方的に自分たちの研究成果を発信するだけでは、社会になかなか伝わらないと考えています。「発信する」という発想ではなく、皆で一緒に考えて「共有する」ほうが社会に与えるインパクトは大きいはずです。そして、一緒に考えてもらうには「政策シミュレーション」が非常に効果的なのです。しかも、専門家同士が真剣にやり取りをすれば新しい見方や気づきが必ず生まれるはずで、本学にとってもっとも重要である研究の質の向上にもつながります。

大学院Peace and Conflict Studiesコースの授業の様子

また、マスメディアにもこの「政策シミュレーション」に参加してもらうことを考えています。彼らがプレイヤーとしてゲームに参加すれば、必ず記事に書いてくれるはずですから。メディアや研究者が地域研究をテーマに書いた書籍について自ら語ってもらうライブラリー・トークも企画しています。他者が、本学の地域研究やTASCについて自発的に発信してくれる仕組みを作っていきたいですね。

研究講義棟4階には、TASCの拠点となる「TASCラウンジ」を作りました。ここには、2000年~2010年頃の平和構築の専門書を約3,000冊揃えています。アフリカやユーゴスラビアの内戦に関わるものなど、本当に価値の高い専門的な書籍ばかりが数多くあるので、本学の大学院生や教員にはぜひ積極的に利用してほしいですね。

TASCラウンジで研究ディベート

たくさんの人に訪れてほしいので、TASCラウンジはオープンな場所であることを心がけました。4階に来ていただければわかりますが、廊下からはラウンジ内がよく見えるように大きなガラスを使っています。さらに、室内の窓から5階までのアプローチを整備して、5階の広場にも出られるようにしました。屋上からは緑豊かなキャンパスと広い空の絶景を一望できて、研究に疲れたときにはリフレッシュすることができますよ。

「政策シミュレーション」やTASCラウンジなどを通じて専門家同士が自然に交流して、情報を共有していく。それをサポートしていくのがTASCの役割だと考えています。

TASCラウンジ前

(『東京外国語大学統合レポート2023』より)

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