卒論演習

 

卒論とは何か

卒論演習の進め方

夏休み合宿

受講する上での注意

卒論を書いて(卒論執筆者の感想)

これまでの卒論紹介

 

 

卒論とは何か

「卒論」とは何かを説明する前にまず、そもそも「論文」とは何かということをはっきりさせておく必要がありますが、この点については「演習」(ゼミ)参加者を対象とした「書評論文の書き方」のページに説明してありますからそちらを参照してもらうことにしてここでは説明をはぶきます。

端的に言いましょう。一部の例外を除いて、学部4年生のレベルで、あるテーマについて論文を書くことは無理です。

たとえば、「メキシコにおける先住民教育」とか、「メキシコ革命論」とか、「ラテンアメリカから見た米国像」とか、何でもいいのですが、とにかく「○○における××について」といった形でテーマを立てて、それについて論文を書くことは学部4年生の水準ではほぼ不可能です。

それはなぜか、についてはこれもまた、「書評論文の書き方」のページで説明してありますから詳しくはそちらを見て下さい。一言で言えば、学部4年生のレベルでは選んだテーマに関する知識が圧倒的に不足しているからです。もちろん他の分野で、以前から何らかの形で関心や関わりをもってきたテーマである場合には、自分の視点から論じることも(つまり論文を書くことも)不可能ではないでしょうが、ラテンアメリカという、一般の学生諸君が大学に入って初めて接触し始めた地域を対象にする場合には、論文を書く上での知識の量が圧倒的に不足しています。

この場合の知識というのは、さまざまな事実についての知識だけでなく、これまでそのテーマに関して蓄積されてきた研究成果に関する知識も含めてのことです。ちょっと考えてみてごらんなさい。自分が取り上げようとするテーマについてこれまでどれほどの文献を読んだのか、と。おそらくは、日本語でせいぜい数冊、といったところではないでしょうか。

それにもかかわらず、そのテーマに関して強引に論じようとすると(論文を書こうとすると)どうなるでしょうか。ほとんど知らないことについて論じるわけですから、当然のことながら自分独自の視点などあるはずもなく、結局のところ数冊の文献を読んでその内容をなぞるだけで終わってしまいます。きつい言い方をすれば、誰かの議論の要約か、せいぜい複数の論者の議論の切り張りがほとんどでしょう(そうした作業すらしていない場合には、根拠のない主観的な議論を展開するだけ、というもう一つのパターンになってしまいます)。

実は、本学で執筆されている「卒業論文」の多くがこのレベルのものではないか、と小生は密かに思っています。

はっきり言っておきます。そうした「卒論」はほとんど「肉体労働」の産物でしかない。そしてまたその責任は、そうした「肉体労働」をさせている指導教官の指導の仕方にある。

なぜ、それほどの確信をもって断言できるのか。それは小生自身がそうした代物を書いた経験の持ち主だからです。同じ誤りを、自分の指導する学生諸君にはくり返させたくない。

というわけで、小生の卒論ゼミで書いてもらう卒論は「研究史」ないしは「研究動向」に関する論文(「サーベイ論文」とも言われています)です。すなわち、選んだテーマについてこれまで、誰が、どのような議論を展開してきたのか、そして今展開しているのか、ということをまとめた論文です。

もっとも、これまでの研究をすべてサーベイすることは多くの場合不可能でしょう。しかしたとえ到達できないにしても少なくとも目指すべき最終的な方向性としてこうした課題を各人の目標として設定する。実際には、3年生を対象とした演習が、選んだテーマに関して論じた本を最低一冊読んでその書評を書く、ということを目標にしているのに対して、この卒論演習では、読む本(あるいは論文)の数を複数に(できるだけ多くの数に)増やし、それらの文献の議論を比較検討する、ということになってしまいますが。

というわけで、この卒論演習に参加する学生は、3年次に小生の演習を履修しておくことが望ましいと言えます。もっとも、これはあくまでも原則で、例外も認めています。4年生になってからやっぱり卒論を書いてみようと思い立った学生もいるでしょうし、その意欲を無駄にしたくはありません。ただし、その場合には、彼(あるいは彼女)は3年次の演習の地点から出発することになります。すなわち、とりあえずまず一冊の本に関する書評を書き、その後時間があれば、検討の対象を複数に拡大していくという筋道になるわけです。

 

卒論演習の進め方

具体的に卒論演習の授業は、毎回、参加者の発表とそれをめぐる議論という形で進めます。

毎回、発表者を一人決めます。発表者は、現在自分が読んでいる文献の内容紹介とそれへのコメントを簡潔にまとめたレジュメを事前に用意し、それを基に発表を行います。その後、参加者の間で発表をめぐって質疑応答と討論を行い、最後に小生からのコメントで締めくくられるというのが基本的なサイクルです。

3年生の演習の場合には、発表箇所のテキストを事前に全員に配布して、参加者は全員それを読んでくることが条件でしたが、卒論演習ではそうした条件を課すことはしません。その分、自分の選んだテーマについての文献をどんどん読み進めてもらいます。

夏休み合宿

途中で一つの重要なチェックポイントを設けます。それは夏休み(恐らくは9月)に行う合宿です。

この合宿では、卒論の草稿を集団的に批判検討することが中心的な作業となります。合宿までに、各人が卒論の草稿をまず書いてみる。それを合宿の数日前に他の参加者全員に電子メールで配信し、合宿までに全員が他のメンバーの草稿にも目を通した上で、合宿に臨む、という段取りになります。

一見すると大変なようですが、後で振り返ってみるとむしろこうして一度文章化してみることでその後の作業がずっと楽になるはずです。

なお、この合宿は3年生の演習と合同で行います。1年間の経験の差というのは結構大きいもので、3年生から見ると4年生の発表はいろいろと参考になります。4年生は自分の経験に基づいて3年生にいろいろと助言してあげることができるでしょうし、1年間の間に自分がどれほど成長したのかも確認できるはずです。

合宿が終わり、2学期に入ると、また1学期同様のスタイルで授業を行っていくことになります。

受講する上での注意

当初、4月の段階では締切までにまだまだ時間的な余裕があるように思いますが、実は思ったほど時間はないものです。何しろ卒論の提出は1月半ばです。正味9ヶ月、しかも途中で就職活動による中断が入りますから、残った時間はもっと少なくなります。ですから、何よりもまず9月の合宿を目標にできるだけ早く書き出すことです。書く上でのコツについては、「書評論文の書き方」のページを参考にして下さい。