若林正丈編 『現代台湾政治を読み解く』 研文出版,2014年4月,4320円

東京外国語大学 小笠原 欣幸

共著出版のお知らせ

 若林正丈先生編集『現代台湾政治を読み解く』が研文出版から出版されました。その中に拙稿「台湾の選挙を地方から読み解く―雲林県の事例」が収録されています。これは,2012年6月22日,早稲田大学台湾研究所にて行なった講演の記録です。
 台湾の地方政治を理解したいと思い,本省人主体の典型的な農業県でかつ国民党の地盤ということで雲林県を研究のフィールドに選んだのが1999年でした。以来,定点観測を続けて15年。雲林県が国民党の地盤から民進党の地盤へと大変化を遂げるプロセスを見てきましたが,台湾地方政治研究できちんとした研究成果を出すということは非常に難しいということを痛感されられています。これは,私の雲林県地方政治研究の中間報告です。

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 若林正丈所長あいさつ

 皆さん、蒸し暑いところ、お集まり頂きましてありがとうございます。今日は東京外国語大学の小笠原先生をお迎えして、お話をお伺いしたいと思います。
 小笠原先生はご存じの方も多いと思うのですが,台湾選挙研究の第一人者で、選挙の数字を非常に綿密に整理して、かつその意味を厳しく考えていく、また地方政治の動向の現地観察と政治的行為者の動向も密接に観察し続けて、台湾政治全体の理解というものを心がけながら研究しておられる、というところから、おそらく他の追随を許さない特色をお持ちのところだろうという風に思います。今日はその部分について、どういう調査活動をされていて、どこが面白いかというところをお話し頂けるということです。では早速、小笠原先生にご報告お願いしたいと思います。(2012年6月22日,早稲田大学台湾研究所講演会にて)

 台湾の選挙を地方から読み解く―雲林県の事例 目次

一 はじめに
  (1) なぜ地方なのか、なぜ雲林県なのか
  (2) 苗栗県・台東県・雲林県の国民党得票率の推移

二 国民党中央と地方派閥の関係
  (1) 地方派閥の実態
  (2) 蔣経國は地方派閥を弱体化させようとした
  (3) 李登輝は地方派閥が拡大する道を開いた
  (4) 馬英九は地方派閥を改革したい

三 雲林県地方政治の重要人物
  (1) 歴代の地方派閥
  (2) 張榮味
  (3) 蘇治芬

四 総統選挙と県長選挙―雲林県における民進党の得票率の推移
  (1) 県長ポストを握ったから総統選挙の得票率が上がったのか
  (2) 雲林県の郷鎮市における蔡英文の得票率
  (3) 水林郷の事例―村レベルの投票行動
  (4) 村長らはなぜ民進党支持なのか
  (5) 台西郷の事例―台西村と五榔村の比較

五 国民党・地方派閥・民進党の競争
  (1) 総統選挙と立法委員選挙の相互作用
  (2) 県議員選挙での得票率の推移

六 地方から見える今後の台湾政治
  (1) 中南部の地方派閥はどうなっているのか
  (2) 2014年統一地方選挙
  (3) 2016年総統選挙

   質疑応答








中国語翻訳はダウンロード可能です(PDF)



張榮味県長と面会(2001年9月撮影)

蘇治芬県長と面会(2014年1月撮影)

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