馬英九 習近平 中台トップ会談 開催発表直後のコメント |
東京外国語大学 小笠原 欣幸 |
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台湾の総統選挙の投票まであと2か月ちょっとというタイミングで習近平が動きました。11月7日にシンガポールで初めての中台トップ会談が開催されます。 習近平側にいくつか狙いがあります。 ①直接的には,台湾の選挙戦に影響を与え,低迷・混乱が続く国民党の手助けをすること ですが,国民党が今から逆転するのは非常に難しいことは中国側もわかっているはずなので, ②選挙後の蔡英文の動きを牽制するというのが実質的な狙いだと思います。 加えて, ③習近平指導部としても台湾の選挙で何もせず民進党政権登場を座視したのかと共産党内で批判されては困るので,やるべきことはやったという行動が必要であったと言えます。 ④米中関係が悪化しているので台湾を取り込んでおこうというのも中国共産党の発想としてわかりやすい要因です。 トップ会談によって馬英九時代は中台関係がよかったという記憶を刷り込み,蔡英文政権登場後中台関係が冷却し,緊張状態となることで,中台関係をうまくやれるのは国民党しかないと台湾の人々に思わせ,2020年で国民党政権の復活を後押しする。 蔡英文としてはこうならないために,来年1月の当選から5月の就任までの間に中国側と何らかの折り合いをつけたいと当然思います。中国側としては,蔡英文に少しでも北京向けの低姿勢を引き出すことができれば,台湾の政権交代の衝撃を押さえこみ引き続き主導権を握れると考えているのではないでしょうか。 馬英九としては,昨年のAPEC北京会談で中台トップ会談を画策し失敗しレームダック状態になっていたのが,ここでその念願をついに実現し8年間の中台関係改善の実績の花道とする効果があります。これをもって国民党の選挙情勢を持ち上げたいとの思惑ですが,選挙への影響はどの程度になるのか,単純にはいかないと思います。 国民党は公認候補者を差し替えるという異例の荒業に出ましたが,新たな候補となった朱立倫の支持率はご祝儀相場もたいしてなく,依然として低迷しています。主席の朱立倫にとって処理が難しい問題がいくつも発生しているので,中台トップ会談に話題が移るのは一時的にプラスになりますが,選挙前にその効果も薄れまた国民党のもとの諸問題に関心が向かうでしょう。 台湾の民意の動向からしても,もっと早くにトップ会談が実現していれば話は違ったかもしれませんが,昨年のヒマワリ運動後,そして統一地方選後,馬政権の対中政策に不信感が広がったので,1回のトップ会談で台湾の民意が大きく動くというのは考えにくいです。これは中国側もある程度認識していると思います。そうすると,習近平側の狙いはやはり選挙後を見据えた蔡英文への牽制,そして民進党政権締め付けの準備と見るのが適切ではないかと考えます。 今日の午後から台湾出張で不在です。9日に帰国します。(2015年11月4日朝) |
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