研究
私の主な研究分野は統語論・意味論です。これまでに次のような問題を扱ってきました。
- 態(ヴォイス)(動詞の項が文の中でどのように表現されるかを決定する仕組み。例:「能動態」と「受動態」):
Nomoto and Shoho (2007),
Nomoto (2010),
Nomoto and Kartini (2012)
- 相(アスペクト)(出来事や状態の内部構造。例:「進行相」,「完結相」,「完結的(telic)」):
Soh and Nomoto (2009),
Lee, Ling and Nomoto (2009),
Soh and Nomoto (2011),
Nomoto and Lee (予定)
- 非能格動詞(唯一項が他動詞の目的語と同じ振る舞いをするような自動詞):
Nomoto (2006),
Nomoto (2009),
Nomoto and Soh (2011)
- 類別詞(いわゆる「数える言葉」。名詞,数詞のどちらか,または両方とともに用いられる。例:「個」(日本語),buah(マレー語),ge(北京語)):
Simpson et al. (2011),
Nomoto (2012)
- 数 (「単数」,「複数」といった概念。それらの概念の表現のされ方。):
Nomoto (2012),
Nomoto (予定)
言語としては,たいていマレー語をデータとして研究を行っています。マレー語は,オーストロネシア語族に属し,東南アジア島嶼部で広く話されています。これは,マレーシア,インドネシア,シンガポール,ブルネイといった地域を含みます。私が特に興味を持って取り組んでいるマレー語の変種は,マレーシアで話されているマレー語です。(ちなみに,インドネシアで話されている標準的なマレー語変種は,「インドネシア語」として知られていて,マレーシアのマレー語と密接な関係にあります。)他に私が研究したことのある言語としては,口語シンガポール英語(「シングリッシュ」とも呼ばれます),苗(ミャオ,モン)語(ミャオ・ヤオ語族;中国南部,ラオス北部,タイ北部,ベトナム北部で話されている),日本語があります。
私の研究上のアプローチは,「理論を踏まえた記述的研究」または「データ主導型の理論的研究」とでも言えるかと思います。要するに,理論も記述もどちらも行うということです。私の研究上の目標は,個別言語—私の場合,通常,マレー語ですが—の言語事実を記述すると同時に,言語一般の理論に何らかの知見を提供するということです。言語一般の理論というのは,人間の言語を構成する要素,また構成し得ない要素は何なのか,そして,心が作り上げる,言語という仕組みをどのようにモデル化すべきかに関する理論のことです。
純粋な研究に加え,私はKartini Abd. Wahab氏(マレーシア国民大学)と共同で,マレー・インドネシア語学の基盤形成作業も行っています。現在,以下の2つのプロジェクトが進行中です。
- Bibliografi Kajian Bahasa Melayu/Indonesia(マレー・インドネシア語研究文献目録)
これは,マレー・インドネシア語とそれに関係する言語についての書籍,論文,学会発表の目録です。
- マレー・インドネシア語オンライン言語学用語集
紙媒体での言語学用語集が最後に出版されて以来,専門用語の数はかなり増えています。そのため,今では,マレー・インドネシア語についてマレー・インドネシア語で書こうと思えば,英語の専門用語のマレー・インドネシア語訳を作らずには済みません。そこで,私たちは研究者間,そして一人一人の研究者自身の中で,いろいろな訳語が氾濫することを避けるために,オンラインの新しい用語集があればよいだろう,と考えました。これまでに,約3,700の言語学用語とそのマレー・インドネシア語訳を集めました。この用語集は,いずれオンライン上で公開する予定です。
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最終更新日:2010年10月15日.