■このページについてこの「アフガン関連テクスト・情報」は,東京外国語大学で「カルチュラル・スタディーズ入門」の講義を担当している浜邦彦が,個人的にぜひとも読んでほしい・見てほしいと思うものを選んで紹介していくページです.
もとになっているのは,その「カルチュラル・スタディーズ入門」の講義で配った「9.11事件を考えるための参考文献」ですが,これはオンライン版として追加・修正をくり返すうちに,とくに「追記」の部分がだんだん膨らんできました.そこでとくに「アフガン関連」の部分を別のページにまとめて,少しずつ追加してゆけるようにしたものです.
一読されれば明らかだと思いますが,ぼくはアフガニスタンで行われている戦争に反対であり,テロ対策特別法案にも反対です.けれどもそれ以上に,こうしたあまりにも愚劣で悲惨な――とぼくには思える――戦争や法案を許している,さらに愚劣で悲惨な無知や無関心の土壌を,徹底して批判したいと思っています.それはいっそう愚劣で悲惨な小泉純一郎という人格や,そういう人格を支持するなおも愚劣で悲惨な日本の人々に向けられていると同時に,やはりこのぼく自身にも,まず向けられているものです.
ぼくは主にカリブ海の知識人を研究している大学院生で,たまたまイラン史研究者がパートナーであるということを別にすれば,アフガニスタンについてはまったく門外漢もいいところです.9月11日以降,英米軍の軍事攻撃に至る事態の進行がなければ,ぼくはカンダハール――そこには世界一多くの地雷が埋められていると聞きます――という地名も,マザーリ・シャリーフ――そこでは6,000人とも言われるハザーラ人その他の人々が虐殺されていました――という地名も,おそらくずっと知らないままで過ごしていたのだろうと思います.いや,ターリバーンを名乗る人々がどういう生い立ちで,どのような教育を受け,どういうふうにアフガニスタンの人々に迎えられ,どんなことをして内戦のアフガニスタンを制圧するに至ったのか,あるいはムジャーヒディーン諸派からなる「北部同盟」を統括したアハマド・シャー・マスード司令官がどんな人物で,どんな理想をもち,どんな国を実現しようとしてどんな努力をし,何ゆえに暗殺されなければならなかったのか,といったことすら,ろくに知りもしなければ,知ろうとも思わなかったかもしれません.
9月11日以降の事態のあまりにも急激な進行とともに,そういうぼく自身の無知や無関心がだんだん耐えがたいものに思われはじめた矢先に,ぼくはモフセン・マフマルバフ監督の『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない,恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』に出会いました.それはぼくの中に決定的な何かを刻印してくれたテクストでした.幸運なことに,パートナーの渡部良子が日本語版の共訳者に選ばれたこともあって,ぼくはこのテクストを精読することから,自分の中のアフガニスタンの「イメージ」を検討し直すことをはじめました.
さっそく外語大の講義でも使ってみたところ,主に1,2年生向けの講義なのですが,学生たちは驚くほど直接的な反応を示してくれました.この学生たちとはいま,小さな勉強会をはじめています.ぼくと同じように,学生たちもまた,一方的に増幅されてゆく戦争ムード,一方的な「イスラーム報道」やアフガニスタンのイメージの中でいたたまれず,自分の無知や無関心を少しでも克服したくてたまらなかったのでしょう.おそらくこのページを読んでいるあなたもまた.
このページは,そういう学生や市民一人ひとりのために,その内的な克服のための<対話>に,少しでも役立つことを願ってつくられています.もちろん,まるで門外漢の個人が片手間にやっていることですから,中途半端で,まちがいも見つかるかもしれません.それでもこういうかたちではあれ,ぼくはぼくなりに,自分がさまざまなテクストから受け取ったものを,ここで伝えていければと思ってます.
ぜひご感想やご教示をお寄せください.お待ちしています.
2001年10月24日
浜 邦彦
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