バンキングと初球
【バンキング】
【初球】【バンキング】 スリークッションのゲームはバンキングから始める。バンキングとは先攻・後攻を決める方法で、図のように長クッションの2ポイント目に白球と黄球を置き、それぞれのプレイヤーが反対側の短クッションめがけて球を撞き、もどってきた球が手前の短クッションに近いほうが勝ちとなる。ふつう、バンキングで勝ったほうが先攻をとる。
バンキングは手前の短クッションに近いほうが勝ちとなる。したがって、球が手前の短クッションの直前で止まろうが、手前の短クッションに当たって止まろうが、とにかく短クッションに近いほうが勝ちである。究極のバンキングは、もちろん、球がクッションにピッタリくっついているものである。
ビリヤードの公式戦は必ずバンキングで先攻・後攻を決めるが、ポケットでは試合でないとき(つまり、ビリヤード場でふつうに遊ぶとき)はジャンケンなどで決めることが多い。しかしながら、スリークッションは試合でないときでもバンキングで先攻・後攻を決める。そして、バンキングをするときには「お願いします」と一言あいさつをするのが暗黙の了解となっている。
【初球】 初球は左図のように球を配置して行なう。短クッションを二等分する中央線上の、向こう側の長クッション2ポイント目に赤球を、手前の長クッション2ポイント目に黄球を置き、黄の横17.8cmの位置に白球を置く。白球は黄球の左でも右でもかまわない。先攻は白球を、後攻は黄球を手球としてゲームを行なう。初球は赤球から当てることになっており、すぐ横の黄球から当ててはいけないことになっている。サーブの安定性・確実性からして、ほとんどの人は図のような裏回しで初球を取る。図のように白球が黄球の左にあり赤球の右に当てるときは白球の左上を撞き、逆に白球が黄球の右にあり赤球の左に当てるときは白球の右上を撞く。いずれの場合も赤球の半分より若干厚めの厚みで当て、半押し気味にして第3クッションを3ポイント目あたりに出すとほぼ黄球に当たる。これでスリークッションのゲームが始まるわけである。
持ち点とイニング プレーヤーはその力量にしたがって「持ち点」と呼ばれるハンディキャップが与えられている。初級者ほど持ち点が低く、上級者ほど持ち点が高い。そして持ち点の点数を早く撞き上がったほうが勝ちとなる。この持ち点があるために、スリークッションは初級者と上級者が対等な条件で対戦できるのである。持ち点は下の「成績とレベル」で述べられているゼネラル・アベレージを基準として決められる。
手球が第2的球に当たるまでに3回以上クッションに入れば1点を得るスリークッションであるが、得点したら引き続きそのプレーヤーが撞くことができ、得点できなければ撞き手が交代する。この、撞き始めてから撞き手が交代するまでの間を1イニング、あるいは1キューと呼ぶ。したがって1イニングで何点も得点することもあれば、1イニングで1点も得点できないことある。
多くのビリヤード場では、ふつうのゲームにおいて25イニングまで戦って、双方が上がれなければドロー(引き分け)となるルールを採用している。これは、スリークッションが相撞きをすることが多く、客の回転をよくするために取られたルールである。ただし、公式戦では試合点数があらかじめ決まっていて、その点数を撞き上がるまで何イニングかかろうが最後までプレーする。
先攻が先に上がった場合、後攻は「裏撞き」をすることになっている。裏撞きは先攻と後攻とでイニング数をそろえてプレーするためのもので、3つの球を初球位置に戻して撞き直す。ただし、白球と黄球の位置は入れ替える(後攻である黄球が手球となるため)。
プロの試合や公式戦の決勝戦などでは審判が別につくが、通常のゲームでは「相互審判」といって、対戦者が審判となる。得点すると審判は「ひとつ!」、「ふたつ!」と点数をコールする。そして、相手が外して撞き手が交代するときに、「1点!」のようにそのイニングの総得点をコールすることになっている。得点がなければ「なし!」または「ナッスィン!(nothing)」とコールする。また、上がりまであと3点という意味の「スリーモア」、あと2点の「ツーモア」、あと1点の「ワンモア」というコールも欠かせない。いずれにせよ、このコールは大きな声でハッキリ言ったほうがよい。初心者は遠慮してか、自信なさげにボソボソした声でコールしたり、あるいはコール自体しなかったりすることがあるが、コワい常連さんにつかまるとお目玉を食らうこともあるので要注意(笑)。しかしながら、このコール、電車の車掌のアナウンスのように、人によっては独特の声色や抑揚で言うので、観察してみると楽しい。
ファール ビリヤードのファール規定はだいたいどの種目でも同じであるが、スリークッションの公式戦のファールは以下のとおりである。ファールをしたら撞き手は交代する。
- 球触り … ゲーム中にタップ(キュー先)以外のもので球を触る行為。手はもちろん、服や髪が触れてもいけない。
- 球違い … 間違えて相手の手球を撞く行為。
- 二度撞き … いわゆる「リク」。特に的球が手球に近いときに起こしやすい。
- 全ての球が静止しないうちに撞くこと … 同じ場所でスピンしている場合も含まれる。
- 球がテーブルの外に飛び出ること
- 両足を床から離して撞くこと
- タッチしている的球から撞くこと
- タッチしているクッションに向かって撞くこと
- 第三者の助言
- クッションに目印を置く行為
- セーフティ … 得点の意志なく相手の得点を妨げる目的で撞くことで、失格となる。
試合でない場合には、初級者に対して助言をしたり、クッションに目印を置いたりすることは、よく見られる光景である。また、ポケットとは違ってセーフティが認められていないのが特徴的だが、実際にこの規定で失格になったという話は聞かない。狙い方次第では結果的に相手にとって得点しにくい球の配置になることがあり(そのようなこともスリークッションの技術の1つでもある)、撞いた球がセーフティがどうかの判定は難しいのである。
立て直し
【立て直しの位置】その他のルールとして覚えておきたいのは、「立て直し」である。球がテーブルの外に飛び出たり、手球が他の球とタッチした(くっついた)ときは、所定のルールにしたがって球を所定の位置に置き直す。これを「立て直し」という。
左図のA点は初球で黄球が置かれる位置、B点は台の真ん中、C点は初球で赤球が置かれる位置である。球がテーブルの外に飛び出したときは、その飛び出た球を、手球が他の球とタッチしたときは、タッチしている2つの球をこのA・B・C点に移す。
A点 … (立て直し後の)撞き手の手球を置く
B点 … (立て直し後の)相手の手球を置く
C点 … 赤球を置く
もし置こうとしているそれぞれの点にすでに別の球がある場合には、その球も上の条件にしたがって移動させる。例えばA点に手球を置こうとしているのに、そこにすでに赤球があったら、その赤球をC点に移し、A点に手球を置く(さらに、例えばこのときC点に相手の手球があったら、それをB点に移す)。
なお、手球がタッチした場合は、そのままの状態で撞くか、それとも立て直すか、撞き手が選択できる。
成績とレベル スリークッションの成績は以下のような諸数値で示される。
ゼネラル・アベレージ(G・A) … 総得点÷総イニング
ベスト・ゲーム(B・G) … 最も短いイニングで上がったゲームのイニング数
ハイ・ラン(H・R) … 1イニングの最高得点
段級位や持ち点は、ゼネラル・アベレージ(略して単に「アベレージ」あるいは「アベ」という)によって決められる。日本ビリヤード協会による段級位表、標準アベレージ表は以下のとおりである。
段級位
持ち点
アベレージ
9段
全日本オープン選手権優勝
8段
全日本アマチュア選手権優勝
地区オープン入賞7段
地区アマチュア選手権優勝
全日本アマチュア選手権入賞6段
地区アマチュア選手権入賞
※ただしアベレージ0.800以上5段
30点以上
地区アマチュア選手権決勝戦出場
※ただしアベレージ0.800以上4段
26〜29点
0.750〜0.878
3段
22〜25点
0.621〜0.749
2段
18〜21点
0.493〜0.620
初段
14〜17点
0.366〜0.492
1級
10〜13点
0.241〜0.365
2級
6〜9点
0.120〜0.240
【段級位表】
持ち点
アベレージ
持ち点
アベレージ
持ち点
アベレージ
持ち点
アベレージ
5点
0.119以下
14点
0.366〜0.397
23点
0.653〜0.684
32点
0.943〜0.975
6点
0.120〜0.149
15点
0.398〜0.428
24点
0.685〜0.716
33点
0.976〜1.007
7点
0.150〜0.179
16点
0.429〜0.460
25点
0.717〜0.749
34点
1.008〜1.040
8点
0.180〜0.209
17点
0.461〜0.492
26点
0.750〜0.781
35点
1.041〜1.072
9点
0.210〜0.240
18点
0.493〜0.524
27点
0.782〜0.813
36点
1.073〜1.104
10点
0.241〜0.271
19点
0.525〜0.556
28点
0.814〜0.845
37点
1.105〜1.137
11点
0.272〜0.302
20点
0.557〜0.588
29点
0.846〜0.878
38点
1.138〜1.169
12点
0.303〜0.334
21点
0.589〜0.620
30点
0.879〜0.910
39点
1.70〜1.202
13点
0.335〜0.365
22点
0.621〜0.652
31点
0.911〜0.942
40点
1.203以上
【標準アベレージ表】
スリークッションのスコアは以下のように記す。
3
12
25
右上の数字 … ハイ・ランの点数
中央の数字 … 1ゲームでの得点
左下の数字 … 1ゲームのイニング数
もし撞き上がった場合には得点の数字を○で囲み、双方が撞き上がってドローとなった場合には得点の数字を「 」で囲む。
その他もろもろのこと 公式のルールには規定されていないが、次のような慣習があり暗黙のルールとなっている。
- ゲーム開始時には「お願いします」と、終了時には「ありがとうございました」とあいさつをする。
- チョークはレール(台の端)に置き放しにせず、撞き手の交代時に各自持って退く。
- フロック(まぐれ当たり)したら「すみません」、「失礼」などと謝る。
- ファインプレイには「ナイスショット」と言ったり、拍手したり(またはチョークでキューをコツコツ叩いたり)する。