ルッカコミックスに行った話。
2021.11.08 イタリア,イタリア語,ペルージャ外国人大学,派遣留学
チャオ。
こんにちは。
現在僕はイタリアのペルージャにある、ペルージャ外国人大学にて10月からの派遣留学プログラムに参加しています。半年間の滞在予定です。
先日10月31日日曜日に、僕は大学でイタリア語を一緒に勉強しているクラスメイトと一緒にルッカを訪れました。
目的はヨーロッパ最大規模のサブカルイベントの一つ、ルッカコミックスに参加するためです。日帰り観光のつもりでしたが、現地の熱気に当てられ気持ちが高まり、留学日記に残そうと思うに至りました。
個人ブログというものを持っていないので、ここに書いています。ルッカコミックスに興味がある人にも読んでいただけたら嬉しいです。
読んでいて少し長く感じるかもしれません。
専攻語の予習が終わっていない方や、翌日の一限に主専がある就寝前の方は時間があるときに読んでください。
秋学期に落とす主専は、そこそこの痛手です。
出発前の話。
ルッカコミックス。正式名称はルッカコミックス&ゲームズ。
ゼミの先輩にも行ったことがある方がいて、その存在はうっすらと認識していましたが、一ヶ月前の僕はルッカコミックスのオンラインチケットがすでに完売したという情報を受け、打ちひしがれていました。
チケットが無いのにいく意味があるのか?ダメ元で行って、入場できなさそうだったら近隣のピサやリヴォルノを観光して帰ってくるか?そんなことを出発の数日前まで考えていました。
イベント開催の3、4日前に、追加でオンラインチケットが販売されたと聞きましたが、即完売だったようです。
ルッカコミックスは自分の卒論の参考になると期待していただけに、目の前は真っ暗です。
しかし、チケットを入手できなくてもルッカに向かう、という人々が一定数いることも耳にしました。
以前からルッカコミックスに行くかも、と伝えていたクラスメイトのリビア人のウマル君からも「ルッカに一緒に行ってもいいかい?」とメッセージが届いたこともあり、入場できないかもしれないリスクを互いに覚悟した上で、週末ルッカに行くことが決まりました。
結論から言うと、ルッカには入れました。詳しい内容はもう少し後で。
ルッカに着くまでのエピソード。
僕らが乗る電車は9時52分のフィレンツェ・サンタマリア・ノヴェッラ駅行きの列車でしたが、列車は30分以上遅れてペルージャ駅に到着し、結果的にフィレンツェにもさらに十数分遅れての到着となりました。
(ペルージャ駅のホームで列車を待つ人々。手前の高校生たちはくたびれて座り込んでしまった。)
到着した時には12時半。ルッカ行きの電車には間に合いそうでしたが、乗り換えまでの時間で昼食を済ませる予定は詰まってしまいました。駅構内のバールでクロワッサンなどを食べることもできましたが、観光地のフィレンツェだから駅周辺にも軽食が取れる店くらいあるだろうと、僕らはルッカ行きの切符を買った後でフィレンツェ市内へと繰り出しました。
これはあまりに楽観的すぎる行為でした。
フィレンツェはポルケッタ(子豚の丸焼き)のパニーニを売るお店がたくさんあります。美味しそうですね。
しかしウマルはイスラム教徒です。僕は彼を横目に豚肉を食べるほど薄情者ではないため、二人でピッツェリア(ピッツァ屋)を目指します。マルゲリータやキノコのピッツァなら彼も満足するはずだからです。
道中、見事な教会や聖堂が歩くたびに現れます。
ウマルは今回が初めてのフィレンツェだったため、写真を撮ることに夢中です。
無理もありません。
僕らは最も有名な赤いドームを有する大聖堂まで来たところで、観光客でごった返した広場を後にし、駅まで戻ることにしました。流石に戻らないと電車に乗り遅れてしまう時間が迫っていましたし、どのピッツェリアもお昼時で席が空いているようには見えませんでした。
(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)
こうして、早歩きの30分フィレンツェ観光は、昼食を犠牲に終わりました。
フィレンツェS.Mノヴェッラ駅は15本くらいプラットホームのある立派なターミナル駅なので、出発はほぼ時間通りです。
到着は時間通りではありませんでしたが。
1時間半くらい電車に揺られてルッカに到着しました。
車内で、ウマルは持っていたチョコパイ的なお菓子を分けてくれました。優しい。
ルッカという小都市。
フィレンツェから見て、ルッカは「ピサの斜塔」で有名なピサより少し手前に位置しています。
日本人にとって観光地としてはあまりメジャーではないかもしれませんが、ルッカは周囲およそ4キロメートルに渡る城壁の内側が主な観光地です。
インターネットで検索すればすぐに見つかると思いますが、本当に城壁に囲まれています。城壁は遊歩道にもなっているため、歩いていて秋風が心地よかったです。
さて、この日ルッカの駅に降り立った人々は、誰もが観光の中心地でもある城壁に向かって歩みを進めます。
(ルッカの城壁に向かう人々。城壁の遊歩道は並木道になっている。)
ルッカコミックスの会場も、この城壁の中にありました。
人の流れについていきながら、城壁に等間隔で配置された市内につながるやや狭い歩道を通ります。
城壁だからですね、防衛力が高い。日本のお城だったら堀もあっただろうなと想像してしまいます。
城壁の遊歩道に出た瞬間、バスターソードを携えたクラウドとセフィロスが目の前にいました。個人的にスマブラで相手にしたくないキャラクターたちです。
当然ながら、彼らはコスプレイヤーでした。
ルッカコミックス。
遊歩道には、ルッカに来た観光客と、ゲームやアニメがモチーフのご自慢のサブカルTシャツを着た人間と、ハロウィンの仮装を楽しむ人々と、先ほどの彼らのようなコスプレイヤーのざっくり四種類の人間で溢れかえっていました。
(遊歩道にて。)
原作をあげ出したらキリがありませんが、日本でも大人気のアニメ・マンガのキャラクターから、アメコミ系、ゲームのキャラクター、ホラー映画のシリアルキラーまで幅広いジャンルの仮装をした人々とすれ違います。
スチームパンク系は西洋らしいといいますか、あまり日本では見かけない分、新鮮でした。
(たくさんのコスプレイヤーが集まっていた広場。)
(ポーズしてくれた。)
ウマルはここでも写真を撮りまくっていました。魅力的な被写体が、ベルトコンベアーに乗っているが如く頻繁に現れるので仕方のないことです。
スマホで写真を撮ったウマルはレイヤーさんに気の利いた挨拶をして、その場を後にします。
僕は傍観しながら、そのフランクなやり取りに感心していました。
というのも、日本のコスプレ事情は詳しくありませんが、コスプレイヤーとカメコ(撮影者)はまあまあ分断された関係性だと、思い込んでいる節が自分の中にあったからです。それは断片的な視点に過ぎないことも承知しています。しかし気軽に撮影し、時にはセルフィーも一緒に撮るコスプレイヤーと撮影者(ウマルを含めた他の参加者)の関係性は、日本のそれとは違って見えました。単にウマルが自撮り大好きな性格という要因もありそうですが。
まとまりのない話を広げていましましたが、ほぼ大規模仮装イベント会場といっても差し支えないルッカ市内の雰囲気は、とても居心地の良いものでした。
年齢、性別、体格、クオリティの垣根を超えて、みんなコスプレと作品の世界観を楽しんでいる、そんな印象を強く受けました。
また、ここ最近人気のアニメやゲームのキャラクターのコスプレは、ある程度クオリティを維持した既製品があるらしく(それこそ「鬼滅柄」の羽織のような)、コスプレのハードルは思ったより低くなっているのかもしれません。
ウィッグ(かつら)や小道具を揃えたりと、追求するコスプレの完成形は人それぞれですが、国境を超えたファン同士、ルッカでコスプレを楽しむのもアリだと感じました。
どうしてコスプレの話がこんなに多いのかというと、僕らがチケットを持っていないことに帰結します。
チケットが無い場合、城壁内に設けられた企業ブースや企画展示、トークショーなど「真のルッカコミックス」に参加することはできませんでした。僕らはコンサートのチケットが無いけれどライブ会場の近くまで来た様なものだったのです。
ルッカ市内に観光に来てみたら、コスプレイヤーが驚くほどたくさんいた、と考えてもだいぶ納得できるので、そこまで気分は下がりませんでした。
ウマルも、ルッカのお祭り気分をめちゃくちゃエンジョイしていたので問題なさそうです。
(正面の金色のモザイクが特徴的な、サン・フレディアーノ聖堂。)
ルッカでのあれこれ。
開催期間中、日替わりで色が変わるリストバンドがチケットの代わりのようです。
アニメやゲームのキャラクターが印刷された大きな紙袋をホクホクとした表情で持つ人々は、おそらく企業ブースを回って来たのでしょう。こうした光景は日本でも既視感がありました。ただし、SNSで見かけたことがあるような絵柄や、果たして公式や版権が関係しているのか謎のその紙袋の実態については、ここではあまり踏み込まないでおきます。
ルッカ市内のイベント会場付近は人通りも多く、近隣のレストランやバールは軽食を販売したりと賑わっていました。しかし、どうやら一般的なパニーニでさえも5ユーロと強気の値段設定です。腹が減っては戦ができないのはわかりますが、少し人混みを離れたところであれば、妥当な価格に出会えるかもしれないですね。(5ユーロのパニーニを食べた。)
ルッカを歩いていて、その平坦な土地に僕とウマルは口々に賞賛の言葉を述べました。「逆に、ペルージャの坂道は多すぎる!」普段から傾斜だらけのペルージャを徒歩で生活している不満も思わず溢れました。ルッカはだいぶ歩きやすいです。たとえコスプレをしていても歩きやすさに変わりはないでしょう。
(芝生でくつろぐこともできる。)
フィレンツェに戻る際も電車は30分以上遅れて到着しました。切符販売機まで走り、遅れないようプラットホームに慌ててたどり着いたのがアホらしくなりました。この時間帯のホームは、ルッカコミックス帰りの人々で溢れていました。
ルッカコミックスが目的で観光に来ても、宿はフィレンツェにしておくのが無難だろうな、と電車を待ちながら考えていました。純粋に電車の遅延もありますが、フィレンツェの方が色々と他の観光地へのアクセスが良さそうだからです。あと、フィレンツェ発の列車が遅れることもあまりないでしょう。
この日は、片田舎の駅は列車の遅延が当たり前、という経験を十分に味わいました。
帰路。
日帰り旅行で電車が遅れるとどうなるか?
もう気づいてるんじゃないの?
(僕らの場合)食事の時間が減るんだよ。
フィレンツェにも予定より遅れて到着した結果、僕らの夕食の時間は1時間、いや40分もありませんでした。
限界旅行にしたくないと思いながらも、この有様。
電車の乗り継ぎ時間を軸にした完璧な旅行スケジュールは、時間通りに運行していない電車を考慮していなかったために、限界旅程になっていました。
そもそも、日帰りルッカが限界のそれでした。出発時間も決して早くはなかったですし。
僕らはペルージャ行きの切符を買ってから、フィレンツェ市内へと繰り出します。
この流れは見覚えがありますね。
しかし、夕食だけは、ここで食べようと決めていた場所がありました。
「フィレンツェ中央市場」、僕はフィレンツェの「ひろめ市場」だと見なしています。建物の2階に大型のフードコートがあり、必ず食べたいものが見つかる、フィレンツェのグルメを一箇所に集めた素晴らしいところです。
週末で観光客も多く、席を確保するのに一苦労でしたが、美味しいピッツァマルゲリータにありつくことができました。
やはり旅の醍醐味は食事ですよね。
なお、食後は駅まで全力疾走しました。
マルゲリータも、もっとゆっくり味わいたかったです。
ペルージャ行きの帰りの列車も、時間通りにつくことはありませんでした。ここまで来ると慣れてきたもんです。
途中の駅で停車したまま數十分動き出す気配のない車内で、どうしたんだろうねと、他の乗客と顔を見合わせる光景も珍しくありません。
ペルージャに戻って来たのは23時を過ぎた頃でした。
まだペルージャ中心街行きのバスが残っていて良かったねとウマルと言葉を交わします。この状況で一人だった場合、眠気と疲労感を覚えながらぼんやりするだけだったでしょうが、話し相手がいると待ち時間も気が紛れます。
文句を言うこともなく、限界旅行に付き合ってくれたウマルには感謝しかありません。
サンキュー、ウマル。
(夜のペルージャ駅前のバス停。)
バスには、見たところハロウィンパーティーの帰りの、仮装をした若者たちも乗っていました。
帰りの電車でもそういえば仮装している若者がいた気がします。
非日常感の強かったこの日も、夜更けとともに日常に戻りつつあるように思えました。
なぜなら明日は月曜日だから。
僕らの11月の授業開始は火曜日から。
優越感を抱きながら眠りにつきました。
そんなわけで、ルッカコミックスに行った話はここまでです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。