連載ノンフィクションエッセイ 第6回

ある日のこと、私はいつものように夜ご飯を食べようと思い、三吉に電話をかけた。いつもどおりの軽快なやり取り。しかし私は、思いもかけない展開にわが耳を疑った。
「…以上の三つでお願いします」
「えっと、いま立て込んでるんで、1時間待ってもらってもいいですか」
いったいこれはどうしたことか。私は受話器を手に持ったまま呆然と立ち尽くし、ふと我に返ると切れた電話音だけが聞こえていた。

私が研究室のメンバーにそのことを伝えると、これまで幾度となく三吉で注文をしてきた研究室に困惑と、驚嘆とも言える沈黙が一瞬走った。そしてざわ・・・ざわ・・・とどこかで聞いたようなざわめきが起こった。この一時間待ちという異常な事態に、研究室のメンバーたちは湧き上がる憶測を口々に話し合った。
「アドマチック天国で三吉が紹介されたんじゃないか」
確かに、最近深大寺がその番組で特集されてから、あの付近に異常な渋滞が土日に発生したということも身近に起こったせいか、それはもっともらしい理由に聞こえた。三吉を取り囲む黒山の人だかり。押すな押すなの大混雑。

そんな光景を想像しながらも、私は得体の知れない違和感を感じずにはおれなかった。

(第7回に続く)


もどる
メインに戻る