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フランスにおける源氏物語翻訳に関して講演

2018.02.28 掲載

2018年2月14日(水)、フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)の名誉教授である寺田澄江氏による講演会「フランスにおける源氏物語翻訳」が村尾誠一教授 (大学院国際日本学研究院、日本古典文学)のゼミ主催で行われました。
主催の村尾誠一ゼミの学生のほか、一般市民の方が参加し、約2時間にわたり、講演後の質疑応答まで熱気あふれる会となりました。
寺田氏の講演要旨は以下のとおりです。

フランスのパリにおいて、当地の古典研究者が集まり、150年の期間を必要とするという精度とペースで悠悠と行われている、『源氏物語』の共同による仏訳という、かねてから関係者が多大な関心を寄せていたプロジェクトに関する講演が行われた。寺田氏はそのまとめ役である。
現在訳出が進んでいる「夕顔」巻を例にとり、具体的な翻訳上の問題を、三つの観点から話された。第一は、紙面のレイアウトの問題で、写本や、日本の活字刊行本、シェフィール氏の仏訳の紙面などの検討から、単なる紙面形式にとどまらない、様々な翻訳上の問題、さらには、「草子地」という源氏研究上の難問題にも及ぶものであった。第二に、単語の訳出の問題(主として取り上げられたのは「むつかしげ」という言葉)。繰り返しを忌む仏語の問題も絡み、翻訳は、語と語との足し算ではない、という翻訳の根本問題に及んだ。第三は、引用の問題。主として「引歌」の処理という問題が展開した。煩雑な注で読み手の読解意欲を削がないという問題も横たわる。
こうした豊かな報告を受けて、様々な母語と文化背景を持つ参加者から、活発な質疑と討論が行われた。この講演会は、村尾誠一研究室の大学院特別講義としての性格で行われた。
(文責:村尾)

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