国際日本学

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教員インタビュー

村尾 誠一 MURAO Seiichi

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 教授
研究分野/
Field
日本古典文学(中世和歌文学)

【English Page】

今に残る一流、それが古典写本や板本にも触れてほしい

 私自身の研究課題は中世における和歌文学です。それ以前の古典世界を新たな世界として再創造するという中世和歌の知的な文学のあり方に関心があり、それをめぐる当時の人々の動きなども含め、史的な視野から把握することを目標としています。

 古典が今に残っているのは、やはり一流のものだからだと思うんです。それをできるだけ厳密に読み解いていくためにも、授業では活字に印刷されたものだけではなく、オリジナルに近い本文を使います。日本文学に限らず、日本語に関わりのある研究では、それが近代を対象としていても、写本や板本を知っておく必要があるからです。古典時代には、どのような紙に、どのような文字で書かれ、どのような書物の形であったかは絶対に心得ておいてほしいのです。普段は見る機会のない本物に触れるために、ゼミでは年に2回ほど古典籍の展示会にも出向いています。

 大学院の前期課程では、共通科目の「日本文学文化研究」と「比較文学文化研究」を担当します。「国際日本専攻」と謳っているからには、海外出身者など古典に全く触れずにきた学生にも、高校で習った古典を忘れてしまった日本人学生にも、古典(再)入門としてぜひ作品を読んでもらいたいですね。さらに、すらすらと読めるレベルにはならないまでも、古典籍に触れたという経験は、各自の専門において、比較・対比などの新たな視点を得ることにつながるでしょう。

 古典に関連する分野は幅広く、私個人も中世だけにこだわってはいません。ここ一年は専ら正岡子規の歌集の注釈に携わっていますし、学生の研究テーマもさまざまです。本学で古典を教えるようになって30年近くが経ちますが、卒業生が自国で精力的に研究しているのを見聞きするのはうれしいですね。今指導している留学生には、そうした卒業生の教え子(いわゆる孫弟子)もいます。さまざまな文化背景を持った国内外の学生がともに日本古典文学を学び、それぞれの強みを活かした研究に取り組む、それが本学の国際日本専攻ならではの特徴だと思います。

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