国際日本学

  • 東京外国語大学
  • 問い合わせ先

MENU

教員インタビュー

イゾルダ・スタンディッシュ Isolde Standish

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 元特別招へい教授
研究分野/
Field
映画論

【English Page】

●ご自身の研究内容について簡単にお教えください。
-私の研究タイトルは「スタジオ時代後の日本映画:プロダクションにおけるネオリベラル経済と作家主義の死」となります。スタジオ時代以後、映画の資金集めや政策の変化は、映画の内容に大きな変化をもたらしました。直接的な結果として以下の二つが挙げられるでしょう。現代日本映画は国際的な評価を得ることがほとんどないということ(是枝監督は逆境に耐えていますね)、それに付随することでもありますが、独立した映画製作が最小限でしか成り立たないということ。つまり、大手出版社やテレビ局が主体となり、ジャニーズ事務所が一元管理する「タレント」システムや、小説、アニメといった、似たり寄ったりの内容のものを作るようになっているということです。私の研究の基底にはテオドール・アドルノの理論と批判があります。端的に言えば、アドルノは、政治的言説のなかでこういう問いを立てるのです。――映画は「芸術」なのか、産業なのか? もし「芸術」であるならば、映画は現状への挑戦なのか? さもなくば、見るものに、現実生活の悲哀や苦悩への一時しのぎの緩和剤を与えることしかできないのか?

●東京外大では学生に対してどのような講義をされていますか。
-春学期では'Japanese Post-War Cinema and the Avant-Garde'(日本の戦後映画とアバンギャルド)という授業を行っています。この授業は二つのコースに分かれています。学部向けと大学院向けです。夏学期では、'Japanese Transnational Cinema'(日本のトランスナショナル映画)を集中講義で行うつもりです。

●国際日本専攻は、日本発信力の強化に力を入れる方針をだしています。このためには、何が必要と思われますか。
-個人的には、TUFSやTUFSのような機関の役目は、21世紀のグローバル化された世界には必要不可欠だと考えます。こうした機関は、日本を含め世界の多くの場所で起こりつつあるナショナリズムの高まりに対し、カウンターとしての役割を果たします。重要なことは、TUFSのような機関が多文化理解に集中的に取り組むことで、排外的な発言に焚き付けられるようなことが少なくなるということです。

●東京外大および学生に対してどのような印象をお持ちですか。
-TUFSの学生はとてもよく反応してくれます。また、教室には優れた多文化的な力がありますね。

●海外からみて、日本のいいところ、足りないところ
-この問いは、TUFSのような機関が21世紀で重要となる、と上で述べた答えに合致するでしょう。日本の例で言えば、私はこの30年、映画と大衆文化を研究してきましたが、日本はずいぶんと様変わりをしましたね。外国に対して開放的になったと思います。しかし、それと同時に、極端で愛国的な政治的立場をとる人が急激に増えつつあり、しかも、それがメインストリームで許容されるようになっています。こうした流れは日本特有の問題ではなく、世界的な傾向なのですが、研究者としては、歴史が教えてくれるように、責任をもって取り組むべき問題です。

一覧へ戻る