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2014年2月 月次レポート(太田悠介 フランス)

ITP-EUROPA月次報告書(2月)

太田 悠介

 今月は1970年代後半から1980年代初頭にかけて繰り広げられた国家論をめぐる議論について執筆した。バリバールはこの時期に『史的唯物論研究』(1974)、『プロレタリア独裁とは何か』(1976)、そしてA・トーゼルおよびC・リュポリーニとの共著『マルクスと政治の批判』(1979)と、三冊の著作を立て続けに刊行している。これらの著作は、当時のフランス共産党内における国家の理論的な位置づけをめぐる議論を直接の題材としているが、1980年代以降のバリバールの展開との関連を考えるならば、バリバールの思想において国家の定義がこの時期に変わり、国家論がそうした展開を説明するひとつの鍵となることが分かる。そこで、現在執筆している箇所では、バリバールの国家論が『国家・権力・社会主義』(1978)に代表されるニコス・プーランツァスの国家論と近いのではないかという観点から考察を進めている。これによって、バリバールとアルチュセールの分岐点のひとつについても、あわせて明示することが可能となる。マルクスのフランス三部作(『フランスにおける階級闘争』(1850)、『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(1852)、『フランスの内乱』(1871))、『何をなすべきか』(1902)や『国家と革命』(1917)といったレーニンの著作などマルクス主義の国家論に関する代表作についての言及もできる限り盛り込むようにし、本文の執筆を続けている。

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