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2014年1月 月次レポート(太田悠介 フランス)

ITP-EUROPA月次報告書(1月)

 太田 悠介

 先々月に引き続き、博士論文の草稿をたずさえ、ブロッサ名誉教授との面会に臨んだ。今回の草稿では、バリバールの処女作である『資本論を読む』(1965)を中心に1960年代から1970年代にかけての著作を論じた。フランス語の表現から草稿の全体の方向性にいたるまで、時間をかけてひとつひとつ丁寧にコメントをいただいた。1956年のフルシチョフ演説に始まるスターリン批判の潮流のなかで、バリバールはマルクスの哲学の理論的地位を問題とするという特異な立場をとっていたが、同時代をバリバールとは異なる仕方で生きてきたブロッサ教授からは、バリバールがマルクスの思想を方法論的に特化して把握していること、『資本論』以外のマルクスの著作への言及がないこと、そうしたバリバールの姿勢と当時の政治的な立場の関係など、本質にかかわる指摘をいただいたように思う。草稿に再度手を入れる際には、こうした批判を想定したうえで、論じる対象との距離をかなり意識する必要があると感じた。また、ブロッサ教授からは参照する必要のある文献についても、コメントとあわせてご教示をいただいた。3月の帰国前にもう一度草稿にコメントを求める機会をもうけていただくことになっている。

 

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