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2013年8月 月次レポート(柴田瑞枝 イタリア)

月次レポート  2013年8月

博士後期課程 柴田 瑞枝
派遣先:ボローニャ大学 (イタリア)

 月末になって、少し過ごし易い日も増えてきましたが、今月は本当に暑い日が続きました。大型スーパーやデパートなどは別にしても、8月15日の聖母被昇天の祝日を中心に、街中の店々も長い夏休みに入るところが多く、大学や市立図書館も、ほとんどが開館時間を短縮していました。街全体が夏期休業期間に入ったようでどこか異様な雰囲気でしたが、それでもニュースによれば、経済危機で、今年バカンスに出かけるイタリア人は、例年に比べてかなり少ないそうです。私は、普段通り、自宅や図書館で資料を読んだり、メモをまとめたりという作業を続けていました。
 先月のレポートで、今後はインプット作業よりも、アウトプット作業に重点をおきたいと考えている旨をご報告しました。8月から、まだ本格的な論文執筆作業とは言えないものの、小論文のようなものを書いて、イタリア語で論理的に物事を著述する訓練を始めました。実際に書いてみると、説得的に論を展開するために、具体的に何が必要かが明確になってくるので、考えをまとめるのに役立っています。
 私が博士論文で中心的に扱うのは、20世紀イタリア文学における、アルベルト・モラヴィアを始めとする男性作家の手による女性一人称作品ですが、これは飽くまで例が少なく、ジャンルとして確立しているわけではないので、これを主要なテーマにした先行研究は、容易には見つかりません。したがって、現在は、18世紀イギリスのダニエル・デフォーやリチャードソンの例を取り上げた評論を、参考までに読んでいます。論文のなかでどのように自らのテーマと関連づけるかはまだ未定ですが、新しい視点を提案してくれるので、とても興味深いです。それと並行して、先月のレポートでも触れた、いわゆる「男性らしい書き方」、「女性らしい書き方」の違いを理解するために、シビッラ・アレラーモなどの女性作家の作品をいくつか読んでいます。
 ボローニャ大への派遣期間は限られているので、焦らないといえば嘘になりますが、残された4ヶ月の時間を最大限活用して、出来るだけ早く論文を形にしたいと思っています。

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