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2013年4月 月次レポート(杉山香織 フランス)

4月月次レポート

ボルドー第三大学派遣  杉山香織

 4月の上旬に、博士論文の完成版とは言えないものの、ある程度完成したものを指導教官の川口裕司先生および、副指導教官の根岸雅史先生、海野多枝先生に送りました。3月のレポートにも述べた通り、最後になってたくさんの変更点が出たため4月中の完成は出来ませんでしたが、早い段階で先生方からのコメントが返ってきたため、それを基にさらに変更や追加を行っているところです。自分がこれまで疑問に思っていなかった点も指摘されており、はっとさせられるコメントも多かったです。最終版に向けて更なる修正を行っていきたいと思います。
 4月の中旬には、ボルドー第三大学で行われたcolloque estudiantinという言語学のマスターの学生が企画運営をする学会で発表を行いました。また、この学会は指導教官のLaurence Labrune先生が指揮をとっている学会でもあります。« Les différences d'utilisation des pronoms personnels entre les débutants Japonais du français et les francophones natifs - analyse comparative basée sur les corpus »(フランス語初級学習者と母語話者間に見られる人称代名詞の使用の差異−コーパスに基づく比較研究)というタイトルで、発表を行いました。日本語の人称代名詞主語の説明を行ってから、どのような人称代名詞主語が過剰使用されたり過少使用されたりするのかの分析について結果をまとめました。結果を簡単に述べますと、学習者の人称代名詞主語の使用割合は母語話者に比べて全般的に有意に多く、教科書における人称代名詞の使用割合と比較しても有意に多いことが分かりました。特に、第三人称単数形のelleと第二人称のvousが過剰使用されていました。elleについては、分析を行ったコーパスがタスクに基づくコーパスであるため、タスクの影響やエラーによって過剰使用されたということが分かりました。また、vousについて、学習者は人称代名詞主語をとる構文を好む一方、母語話者は非人称主語をとる傾向にあることが明らかになりました。過剰使用された人称代名詞主語が多かった反面、人称代名詞onは学習者によって過少使用されていました。これは、同じ機能を持つnousを過剰使用していたということに起因していました。実際に、母語話者は話し言葉ではnousよりもonを好む傾向があります。
 ITPプログラムでボルドーに派遣していただいてから4度目の発表となり、フランス語で行う発表にもだいぶ慣れてきました。また発表態度だけでなく、内容についても多くの先生方に評価していただくことができ、自信にもつながりました。

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