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2013年3月 月次レポート(説田英香 ドイツ)

3月レポート
説田英香
派遣先: フライブルク大学(ドイツ)


 フライブルク大学は先月に引き続き3月も長期休暇であり、博士論文の準備に専念することができた。今月は主に、「統合政策」と「帰国促進政策」の関連性に着目しながら、史料分析及び分析結果と先行研究との擦り合わせを行った。とりわけ、バーデン=ヴュルテンベルク州における外国人政策についての研究を行う、カール=ハインツ・マイヤー=ブラウンの研究を参照した。先行研究のまとめは史料収集以前にすでに行っているものの、問題意識や問題提起の変更に合わせ、一部の先行研究については再度読み直しの必要が出てきた。史料分析は、これまでに行ってきた1970年代の外国人政策に関する議論に加え、1980年代初頭の議論に的を絞って行った。具体的には1980年3月19日(「統合政策」)、1981年11月11日(「帰国促進政策」)の内閣決議についてである。これらに加え、先月行った「帰国促進法」(„Rückkehrförderungsgesetz")の調査をもとに、1970年代半ばからの帰国促進政策に関する議論の流れのまとめを行った。取り扱った主な事象は、1975〜1976年 におけるバーデン=ヴュルテンベルク州のイニシアティブの下で連邦参議院より提出された帰国促進政策に関する法案(Gesetzentwurf zur Änderung und Ergänzung des Arbeitsförderungsgesetzes)とその議論、1976〜77年に実施された帰国促進政策に関するプロジェクトグループの調査(Projektgruppe „Rückkehrförderung" der Bundesministerien für wirtschaftliche Zusammenarbeit und für Arbeit und Sozialordnung, „Überlegungen und Vorschläge zur Förderung der Rückwanderung ausländischer Arbeitnehmer und Fachkräfte") 、1977年の外国人労働者政策に関わるコンセプト設定についてである(„Vorschläge der Bund-Länder-Kommission zur Fortentwicklung einer umfassenden Konzeption der Ausländerbeschäftigungspolitik")。失業した外国人労働者に対して資金的な「帰国援助」(„Rückkehrhilfe")を与えることで、ドイツ労働市場の負担を軽減することを目的としていた 連邦参議院の法案は、労働市場政策的そしてとりわけ財政的理由から連邦議会を通過することはなかった。1970年代においては、主に財政的な理由そしてその効果に対する懸念から、連邦政府は資金的支援を手段とする帰国促進政策については反対の姿勢を常に取り続けてきた。しかし、1981〜1982年の間に類似の法案が可決寸前の段階まで進み―1982年の政権交代により可決まで至らなかったが―、それが引き継がれた形で1983年の「帰国促進法」が可決された。このような流れを踏まえ、4月は1970年代半ばから1980年代初頭の期間における、連邦政府の帰国促進政策に対する姿勢の変化およびその要因を探って行きたい。

以上

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