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2013年2月 月次レポート(佐藤貴之 ロシア)

活動報告(2月)

執筆者:佐藤貴之
派遣先:ロシア国立人文大学

 今月は先月と同様に論文の執筆に集中した。以下、詳細。
 執筆者の所属する日露演劇会議はもうまもなく東洋書店から『ブルガーコフ戯曲全集』の刊行を開始するが、それに伴い拙論を提出する必要があった。本来であれば2012年末に提出する予定であったが、そのほかの執筆物に追われてなかなか作業に集中することが出来なかった。そのため、今月はまずこの拙論執筆に集中した。辛抱強く待っていただいた関係者の皆様には深くお詫び申し上げたい。
 拙論では、ブルガーコフの戯曲『至福』(1934年)の解説と分析を行っている。この戯曲はアンチ・ユートピア文学の特徴が顕著であると同時に、極めて風刺性が強く、ソ連時代は上演されたことは一度もない作品である。分析に際しては、戯曲の執筆過程を記述するとともに、戯曲にみられるロシア文学の伝統(ドストエフスキー、ザミャーチン、ピリニャーク、アレクセイ・トルストイなど)を詳細に取り上げた。また、背景知識がない方でも読めるよう、丁寧に注釈を加えたつもりである。
 余談ながら、この戯曲は2009年に上智大学のロシア語劇団「チアトラル」が上演し、執筆者はその演出に微力ながら貢献しており、思い入れの深い作品である。小さな舞台で輝かしい演技を見せた学生諸君が懐かしいところである。
 そのほか、3月末にひかえる全ロシア・ゴーリキー学会(カザニ大学主催)で報告する論文「現代日本における『どん底』の受容」の準備に従事した。今回の報告は世界文学研究所の研究員O.シュガン(Ph.D.)との共同研究報告になる。シュガンは単著『ゴーリキーと東洋』を執筆中で、ゴーリキーの創作における東洋的モチーフを中心的に分析している。執筆者は、岸田國士や鈴木忠といった日本の演劇界を代表する演出家らがどのように『どん底』を解釈したかを分析している。まだ原稿は完成していないため、引き続き作業を継続したい。

以上

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